hawaii
ほんとうにほんとのハワイ。

■Vol.46 ハワイの宗教
ホオマナマナの廃止


西洋人がポリネシアにやって来たころ、
この南の島々の人々にとって
宗教はもっとも力のあるものでした。
そこへ西洋の文化が入り込んでも
カフナやカフナがやっている宗教を
潰すことは到底無理という状況でした。

西洋人たちは、ハワイ人と宗教の
強い結びつきを壊さないかぎり、
この小さな国をコントロールすることはできないと考え、
そのためにまず、当時の女王カアフマヌを
利用しようと考えました。
1820年、ハワイに来た伝道師たちの目には、
肌を露出し自然とともに生きるポリネシア人は、
野蛮人のように映りました。
伝道師たちは、ポリネシア人のことを
西洋の科学が証明する何百年も前から、
地球が丸いことを解くような文化を持つ
民族だったとはつゆほども知らなかったのです。

私は、不思議に思うのです。
人生に必要なものは世界の調和だと信じるポリネシア人。
野蛮なポリネシア人が文化的な生活をするには
実力を行使してもキリスト教が必要だとした西洋の伝道師。
一体どっちの考えがより“野蛮”なのでしょうか。
もちろん伝道師ばかりを責めるつもりはありません。
なぜならハワイの宗教が廃止されるには、
ハワイ人の権力者の助けも
そこには当然あったからです。

伝道師がきたとき、ハワイには
資本主義の考え方も同時に入ってきました。
それまでハワイは物々交換で
経済が成り立っていたのですが、
お金という新たな価値観が入り込みました。
また、同時にお酒やギャンブルなど
それまでハワイになかったものも入ってきました。
いままで知らなかった楽しみに心を奪われ、
ハワイ人はだんだん堕落していったのも事実です。

カアフマヌ女王は、王族のなかでは
キリスト教に改宗した最初のひとりでした。
伝道師はどんな宗教よりも
キリスト教がもっとも優れていると
皆に説いてまわりました。
宗教の廃止を手伝ったもうひとりの権力者は、
私の先祖にあたるヘヴァヘヴァです。
彼はかねてからカプが厳しすぎるという
考えを持っていました。
この連載の最初の頃にも書きましたが、
彼は白人がハワイにやって来たとき、
昔のハワイのシステムがすべて壊れるという
お告げを受けたといわれています。
その啓示を信じ、ついにはハワイの宗教を
捨てる決意をしたわけですが、
しかし、彼は最後までキリスト教徒にはなりませんでした。

ハワイの宗教ホオマナマナは廃止され、
ほとんどのカフナは、
ほかのハワイ古来の文化を続ける人たちと同様、
地下に潜りひそかにその伝統を守る道を
余儀なくされました。
いま、昔のハワイの宗教を続けている人が
どのくらいいるか、それはまったくわかりません。
なぜなら、ほとんどのカフナは身を隠し、
人に知られないような存在になってしまったから。
またあるいは、多くのカフナは伝えることもあきらめ、
本当に絶えてしまったからです。
そうして何百年もの間受け継がれてきた
神秘の術の数々の話も、いまでは知る人さえ
ほとんどいなくなってしまいました。

2000-11-17-FRI

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