へなちょこ雑貨店。 一寸の虫の五分のたましい物語。 |
第1回 なんで会社を辞めたのか―オガワの場合 へなちょこ雑貨店こと、26 two-six です。 ご来店ありがとうございます。 さて、突然ですが、 ヒトが会社を辞める理由ってなんでしょう。 1.人間関係がうまくいかない 2.仕事がきつい 3.給料が少ない など? あ、 4.俺はこんなところで くすぶっているわけにはいかねえんだ。 も、ありますね。 オオタケも、わたしオガワも今までに それぞれ2回ずつ会社を辞めています。 たしかに、上記1〜3も日々、感じていました。 わたしたちが初めて会社に入った5〜6年前というのは、 ちょうどバブルがはじけた直後でした。 今思えば、 まだ好景気だと信じていたい、バブリーな諸先輩方と、 突然の就職難を体験してしまったわたしたちとは、 微妙な温度差があったように思います。 わたしがはじめて就職したのは、 雑誌の編集と企業のPR業務を請負う、 社員ひとけたの小さなプロダクションでした。 おんな社長を筆頭に、 みなさんのキャラクターの濃かったこと。 ん〜、言っちゃってもいいですかねえ? ほぼ全員が「反面教師」。 おお、第1回めからこんな調子でいいのかなあ。 どうもバブルってやつは、 あいさつや電話の応対などで、相手によって態度を変えても 仕事に支障をきたさない時代だったようなんですよ。 大手広告代理店さんや 同じく大手の印刷会社さんからの電話だとすぐ出るのに、 いろいろなわがままを聞いてくれる、いわゆる、 「こまわりのきく」印刷会社の営業さんからの電話は 「待たせて当たり前」でした。なぜ? それから、ムダの多い時代でもあったようです。 今でこそ、企業でインターネットつなぎっぱなしというのは 当たり前のようになっていますが、 当時はまだ、そういうことのハシリの段階でした。 設定環境など十分でない中で、 3日かけてダウンロードした資料を、 企画の的からはずれていることに(やっと)気づいて、 まるまるポイした、なんていうのは日常茶飯事でしたね。 あとは、“取締役”のタバコの銘柄を、 Light と Super Light を買い間違えて 来客の前で怒鳴られたり、 同取締役に 「お前は本当に足が太いねえ」と言われたと思うと、 その舌の根がかわかないうちに 「“俺の”秘書にならないか?」(どういう意味?) とか言われたり、 女の先輩のゴキゲンに振り回されたりもしましたっけ。 でも。 ここまで書いておきながら、それらが決定打かというと わたしの場合、ちょっと違うんです。 冒頭の会社を辞める理由1の 「人間関係がうまくいかない」に入るのかもしれませんが、 「関係」というところまでいっていない 「ことば」ってありませんか。 「このことばで、わたし、 傷ついちゃって、傷ついちゃって、 もう、耐えらんない!」 っていうのとも、違うんですけど。 あえて言うなら、そのことばによってもたらされた症状は、 『脱力』。 そのことばは、既述のプロダクションの おんな社長から発せられました。 おんな社長「オガワちゃんは、芸能人だれが好きなの?」 オガワ「(名字にちゃんづけはやめてくれまいか) 芸能人ですか、 えっと、ダウンタウンの松本さんです」 なんでまた、社長に “好きな芸能人”を聞かれるハメになったのか、 考えないようにして正直に答えました。 そしたら言われましたよ、大きな声で。 「ダカラッ アナタハッ、軽イノヨッ!」 そんな質問した自分は棚に上げて、なぜ急に半ギレなのか? しかも、ダカラってことは、ずっとわたしのことを そう思っていたということか。 ああ(こころの中でガクッと肩を落とし)、 今までの我慢できていた小さな出来事が ざあっと音を立ててまいもどって来ました。 そして、思っちゃったんです。 だめだ、この人の下で働くことはできない……。 社員ひとけたの小さな会社と言えども、 まがりなりにもマスコミの社長が、 お笑いを「軽い」などと言って否定してはならない。 わたし迷わず、その一件から1ヶ月後に速攻退社。 ああ、若いってすばらしいですなあ。 その後2年間の派遣事務員生活を経て、 25才のとき再就職しました。 会社を選ぶときには前回の失敗をふまえて、 人数の多い会社にしました。 前回はきっと、人数が少なかったから、 その分ひとりひとりと関わる時間が長くなってしまい、 必要以上にいらいらとしてしまったんではないか、と 思ったんです。 今度の会社は社員数200人ほど。 本来控えめなワタクシとしては、 この人数の中に埋もれていれば、 日々を平穏に過ごすことができそうだと踏んだんです。 しかも、仕事の内容も 職人的な要素を多く含むものだったので、 作業さえふつうにこなしていれば、 目立たずにいけるんではないかと思ったのです。 これは、すばらしい考察に思えました。 でも、そうは問屋が卸さないもので、 ちゃんと別の問題が用意されていました。 職人的な要素、の部分ですが、 つまり、仕事のはやい・遅いに差が生じるんですね。 当然のことながら、仕事を効率よく、というか ふつうにこなす人間は定時に、 場合によっては定時前に帰れます。 これ、空前の不況による仕事量の減少が原因です。 仕事がないので、 終わった人間は帰るしかありませんでした。 逆に、強烈に仕事ができないやつは、 いつまでも会社に残ることになる、 でも残業すれば「残業手当」がでるもんで、 遅いやつばかり、より金を稼ぐということになる。 そして、ここからがよく分からないんですが、 定時前に帰った分、タイムカードの関係で? 基本給から給料をマイナスされちゃったんです。 給料日に「基本給」より少ない額が書かれている 明細書を見たらあほらしくなっちゃったんですねえ。 なんか怒りというより、これもまた、脱力でした。 抗議もしましたよ、一応。 話を聞いてくださった部長もいました。 でも会社としても息が上がっちゃってる状態で、 解決はしませんでした。 それで、この状況はなんだかなーと思ってたところに、 オオタケの悪魔のささやき、 「もう、辞めちゃえよ、いいよ、もう」が。 (つづく) ※文中、太字部分は、編集部へなちょこ番によって、 施されたものです。
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2000-06-07-WED
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