へなちょこ雑貨店。 一寸の虫の五分のたましい物語。 |
第8回 君タチを『コンサルティング』していきたい まいど、ご来店ありがとうございます。 先日、26 two-sixはまさかのお休みをしました。 まさか、ホントに? まさか、本当に「ナンタラいうバンドのコンサート」で? バンドっていうか、 コンサートの名義は個人なんですけどね、 オオタケとオガワ2人そろってのファンなもんで、 迷わず店を閉めさせていただきました。 そのミュージシャンのツアー・ファイナル、2日間。 そうです、2日間も休んでおいて、事後報告でございます。 叱られても気にしない、 笑われても気にしない、 のであります。 いや、えらい盛り上がりましてね。 武道館が揺れていましたよ。 行って良かったなあ。 それから、もうひとつ。 6月27日から7月7日は買付けに行くため、 これまたお休みをいただきます。 その間に誰かに店番を頼む予算がないもので、 お休みするしかありません。 あ、時給提示ではなくて、 「売上げの半分を持って帰ってよし」とか言って バイトを頼もうかしら。 確実に友だちをひとり失うけれども。 なぜなら、うちの売上げの半分ってのは……。 いや、これを書いて涙を誘ってはいけない。 「へなちょこ雑貨店。」は泣くコンテンツではないのです。 とにかくちょっとお休みしますが、 「ほぼ日のれん会」にも加盟させていただいたことだし、 買付け後に商品が充実したところでの 読者の皆さんのご来店をお待ちしております。 商品充実っていうか、さらに偏ったダケ、という 可能性もありますが。 さて、前回の続きです。 不動産屋さんで予想通り、 資金の高さに打ちのめされたにも関わらず、 思いのほか第三者に応援されてしまったわたしたちは、 うっかり店舗経営の道を諦めるのを 忘れてしまったのでした。 こうなったら、やはり店舗前スペースを 借りるしかないのだろうか。 つまり、ひと様が所有、もしくは貸借している店舗の一部を 借りる、という方法。 2〜3坪程度なら貸してくれる人が存在するかもしれない。 それに、この広さなら、2人で管理でき、 スペースを埋めるために商品をたくさん仕入れるという リスクをしょわなくて済むのではなかろうか。 おお、グッド・アイデア。 じゃあ、それをどう探そうかね。 そして思い出したのです。 以前に購入した『アントレ』に、 起業を考えている人向けの投稿ページがあったことを。 頼りになるなあ、アントレ。 わたしたちはいそいそと、 雑誌の後半に4分の1程度を占めている 「アントレ情報」ページを開きました。 おなじみのアルバイト情報誌と同じように、コマを分割して それぞれが求める内容を掲載してもらえるようです。 そこにある記事は、 「仕事を請負います」 「人材を募集します」 というものをはじめ、 「ビジネスパートナーを募集します」、 「ナントカ資格やらナンタラ協会への加入の手続きなら お任せください」 というサポートの申し出、さらには 「出資してくださる方ご連絡ください」 というものまであります。 ああ、これを利用するしかないでしょう! 「インターネット・アントレ」からも 登録できるということで、さっそく。 まず、見出しは「2坪ほどのスペースをお貸しください」。 「提案概要」は、 「アメリカン雑貨の店をオープンしたいと思っているので、 東京都内及び近郊の駅近くに 空きスペースをお持ちの方はご連絡ください」。 さらに次。 え、「自己紹介」? なんでまた。 われわれの人間性をアピールしろと? そういうの、うまく書けないねえ。 いろいろ考えて「わたしたちは、こんな店をめざしてます」 という内容にしてみました。 あとは名前と年齢、出身地などを入力。 よく分からないのが、 最終学歴や血液型まで示さなくてはならないこと。 既存の記事を見ると、 みなさん正直に記載されているようなので、仕方なく従う。 あとは、スペース借りを交渉するための 金額を提示しなくてはなりません。 こちらは「相談させてください」で お茶をにごすとしましょう。 連絡先はメールアドレスを入力。 ある日、『アントレ』から 1999年4月27日発売の6月号への 掲載決定のお電話が来ました。 掲載記事の中でいちばん小さいサイズを指定したので、 掲載料は無料。 そのお電話で、記載内容の確認をしていただき、 「自己紹介の欄には自己紹介を書いてほしかった」と、 やんわりご注意を受けるも、 今回に限ってこのままでけっこうです、とやさしいお言葉。 はい、ありがとうございました。 その後2週間ほどで 『インターネット・アントレ』と本誌合わせて、 全部で10件ほど問い合わせがありました。 その内容は、意外なことにいろいろでした。 わたしたちは「スペースを貸してください」という記事を 掲載していただいた、と、 ここで今一度確認しつつ、ご紹介します。 その壱。 「独立・起業を考えている方が “集まるスペース”をご用意しました」 その「スペース」は探しておりませんけども。 その弐。 「起業を考えている女性の方と 語り合う場を提供しています!!」 なにゆえ、女性だけで集うのか、 皆目検討がつきませんけども。 その参。 「自分もいつか起業をしたいと思っています。 その思いを語り合いませんか?」 ……いや。 どういうわけか、「仲間募集」が多くて辟易しました。 起業するということが、 人生の一大イベントだからなんでしょうか。 本当に申し訳ないとは思うのですが、 そういう発想がすでにわたしたちとは違うわけで、 問合せをいただいたことへのお礼のみ メールさせていただいて、削除。 その四。 「君タチを『コンサルティング』していきたい」。 このタイプの方がいちばん多かったです。 残念ながら、コンサルティングしていただくための 資金も気持ちもございません。 こちらも削除。 うまくいかないもんだ、とあきらめかけていた頃、 ある男性が次のようなメールをくださいました。 「たいへん興味を持ちました。連絡してください」 お、シンプル。 メールには店舗をお持ちであることが記載されています。 これは、返事を出してみる価値があるかもしれません。 さっそくお返事を出し、数回のメールのやりとりの後、 いよいよわたしたちの「事業計画書」を 送ることになりました。 『アントレ』や「経営者になるには」ブックを読みつつ、 とにかくスペースを貸してほしい一心で計画書を制作し、 送信しました。 商品展開やターゲット、予想収益などを、 わたしたちなりに考えて。 すると即日返事が来ました。 返事というか、これが「添削」。 わたしたちの事業計画書は、 変わり果てた姿で返って来たのです。 その内容には異様なエネルギーを感じました。 わたしたちの計画書を読んで、 「だめだ、こんな、甘い考えのやつに 自分のスペースを貸すわけにいかない」と 判断されたのなら、それはそれでかまわなかったんです。 かまわない、と言うより、仕方のないことです。 でも、その人の言っていることは、ちょっと違いました。 「自分と『組む』には、ココとココとココを 『考え直して』もらわないとならない」 (『』は、わたしがつけました) もちろん、その方のスペースですから、 その方の意向に合わないものは拒否する権利は その方にあります。 当然です。 よく分かります。 そして、残念ながら、わたしたちにはその方に合わせて 『考え直す』つもりがなかったので、 お断りのメールを送りました。 せっかく問い合わせてくれただけでなく、 何度かメールのやりとりをしましたので、 失礼のないように ほかの方以上に注意を払ったつもりでした。 しかし。 またしても即日返事が来まして、 ものすごい怒られてしまったのです。 「せっかくこっちが君たちの足りない部分を 指摘してやってるのに、なぜ分からないんだ!」と。 あ。 つまり、この人も「コンサルタント」だったのです。 スペースを貸してやるし、 経営についても指導してやるつもりなのに、 どうして気持ちを改めないんだ、こっちから願い下げだ、 くらいのお怒りでございました。 ああああ。 それはそれは、すぐに察することができませんで、 お手間をとらせてしまいました。 で、結局ふりだしに戻りました。 いや、違う。 もうひとり、いました。 かなり早い時期から問い合わせてくれていた男性が。 それは、はるかニューヨークからのメール。 「当方、ニューヨークで店を経営しています。 この度は、日本での事業展開を計画中で、 お2人と協力関係を結べたらと思います。 つきましては、一度お話させていただきたく、ウンヌン」 お。 今までのコンサルタント氏とは違うかもしれない。 しかも、ニューヨークからの便りということは、 輸入の手はずなんかもお世話になれるかもしれない、と、 わたしたちはコーフンしました。 やっと、やっと、 わたしたちにも明るい光が見えてきた、のか? (つづく) ※文中、太字部分は、編集部へなちょこ番によって、 施されたものです。
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2000-06-29-THU
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