へなちょこ雑貨店。 一寸の虫の五分のたましい物語。 |
第15回 内装その2―開店まであと1ヶ月半 毎度ご来店ありがとうございます。 この連載で何度か名前を出させていただいたご縁で 起業家向け情報誌「アントレ」にも ちょっとした記事が掲載になりました。 1ページの半分をわたしたちが占拠しております。 写真入り! しかし2人ともあっさりガラの悪さが出てしまいました。 そしてアントレに載ってまで「へなちょこ」の文字。 この連載を知らない人が見たらなにごとかと思うこと必至。 発売中の10月号でございます。 (偶然にも、うしろの方には 「例の話」を早くも「成功」させたN氏が‥‥!! ああ、びっくりした。) さて、前回に引き続き「26的・内装工事」のお話です。 じつはこのあたり、わたしは毎日のように 舞い上がっておりまして、いつも緊張状態にありました。 どきどきしてたし、おなか痛かったです、さすがに。 記憶も分断しているという始末。 なんとか憶えていることをお話しましょう。 当時もバイトを続けておりましたので、 ジャンクヤードの契約を済ませたものの、 あまりちょくちょく現地に向かうことができませんでした。 週に1度が限度。 オオタケが夕方からの仕事で土日関係なし、 わたしは派遣社員だったので OLのようにウイークデーの夕方まで自由ではなく、 2人が揃うことは難しかったのです。 なおかつジャンクヤードは数件が軒を並べる長屋ですので、 おおもとの鍵を閉める時間というのが8時です。 鍵を借り、夜を徹して作業することも できないことはないのですが、翌朝、鍵を開けるために 早く行かなければならなくなるので、 やはりバイトがあるからにはそれもできませんでした。 こんなわけでなかなかコトは進みません。 そこでわたしたちはとにかく「開店の日」を決めてしまう、 という暴挙に出ました。 ケツ決めてその日までに「なんとかしよう」という 「作戦」です。 「その日」はあっさり決まりました。 2000年1月21日。 わが経営者オオタケの27回目のバースデーでございます。 ああ、あと1ヶ月半しかありません。 わたしたちはまず、材木問屋の娘という人脈を活用して 「材木」を発注しました。 送り先はわたしの実家。 塗料のにおいを狭い空間に 充満させるわけにはいかないだろうということで 「色塗り」をすませたものを 原宿に持ち込むことにしたのです。 と同時に材木だけでは店はできないので、 そのほかの金具や工具、棚を付けるための支柱などを 購入しなくてはなりません。 行き先はごくふつうのホームセンター。 バイトの派遣先に了解をもらい 平日の昼間にレンタカーを借りて向かいました。 ドライバーはふたたび登場のゴチョウ。 彼は当時まだ会社員で平日休みの人であったため、 オオタケともども休みを合わせての決行でした。 あらかじめ購入すべきものを書き出していたものの、 実際に見るとイメージと違ったり、 思いのほか高価であったりするため、 その場で変更も出ました。 その最たるものが「壁材」でした。 当初、「ガレージふうな内装」などと言っていたので、 波打つトタンを一面に貼ろうと思っていたのです。 チープに見えるがそれがかえっていいんじゃないか、と。 しかし、実物は想像以上にチープでした。 ガレージふうというよりはバラックふう。 開店早々つぶれそうな雰囲気をかもしだすには抜群ですが、 さすがにそんな演出は求めてはおりませんでした。 よって棚と同様の材木を追加発注することになりました。 壁用の材木に関してはびみょうに凝った発注をしました。 幅30cmの材木を貼り込むのですが、 それらの「厚さ」を2種類にしたのです。 およそ3mmほど厚さにばらつきをもたせました。 狙った効果は「それっぽい」。 そして支柱と棚受け。 棚受けはうっかりすると「右側」だけ30個という 買い方をしてしまいます。 きちんと左右で同じ数量買いました。 それから「床材」。 わたしたちの間では「例のやつ」として 名前が分からないままに決まっていたアレを買わなくては。 鉄板に滑り止めと思われる突起が施されているアレ。 こちらは思い描いていたとおりのブツを 発見することができました。 これって、なんて言うんでしょうね。 しかしサイズが決まっているらしい。 ならば、またしても「計算」をして うまいことハメこんでいかなくてはなりません。 ところがどうサイズを組み合わせても きっちりと埋まらないのです。 思うとおりのサイズにカットすることは不可能とのこと。 それで結局わたしたちは 「床材がないところがあってもいいじゃん」 という結論を出すに至りました。 やってみたらなんとかなるかもしれないし。 すべてのイメージを決めてしまうかもしれない塗料は ここでは見つからず、後日わたしの一存で購入しました。 オオタケ社長の指示は「あったかくなりすぎない色」。 またそういうザツな言い方をする。 果たしてその色は存在しました。 「あったかくなりすぎない」壁 その時思いつく限りのすべての買い物を済ませて ジャンクヤードへ。 おそらくこの時ほかのお店のみなさんは 「いつまでも工事が始まらないと思ったら、 急に鉄板を持ってきた。 しかも今日も業者は見あたらないぞ」 と不審に思ったことでしょう。 そして鉄板を敷き詰めると、とっととシャッターを閉めて 去るわたしたち。 ほら、すきまがあいてますよね。 「なにしに来たんだ、いったい」 そんな周囲の目をさけるように そそくさとトラックに乗り込みました。 なぜならレンタカーの約束の時間を とうに過ぎていたからです。 超過料金のことを考えると とたんに動悸が激しくなるわたしたちなのでした。 (つづく)
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2000-09-03-SUN
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