へなちょこ雑貨店。
一寸の虫の五分のたましい物語。

第21回 「いつのまにか」を装って開店

毎度ご来店ありがとうございます(喜)。

どうも日本各地でMacが壊れるのがはやっているようです。
うちの店のiMacも早めの冬眠生活に入ってしまいました。
そんなにスグ壊れる気だったんなら、
FDくらいつけやがれー!!
ぎゃあぎゃあ(怒)。

でもそれもこれもバックアップをとってなかった
わたしのせい。
つらい、かなしい、せつない(哀)。

さてと。
気を取り直してお知らせでございます。
当店でアノ「ほぼ永久紙ぶくろパート2」の
販売をさせていただくことになりました!(楽)

(くわしくはこちらでどうぞ)
通販で買い損なってしまった方はモチロン、
じぶんの分だけ購入して
お友だちを5〜6人なくした方も、
こぞってお買い求めくださいまし。
「darlingのお写真パート2」も
自慢げにお見せいたしますとも。

では、へなちょこなお話をさせてただきましょう。
2000年1月21日金曜日。
この日のわたしの手帳には
『26−OPEN/オオタケB.D./
ゴチョウ OFF/J-WAVE<14:00〜>/
M−ステーション<20:00〜>』と、
すべて同じサイズの文字で記してあります。
じぶんの店のオープンの日であろうと
奥田民生さんのラジオ、テレビ出演を
逃すまいとしていた証拠であります。
ちょうど「マシマロ」の発売直後で、
あの詞がまたこころに響いちゃったもんでした。

当日の早朝まで陳列作業をしていましたので、
いったん解散し、少しダケでも眠ることにしました。
ふとんの中でまどろみ、数時間が過ぎたようです。
眠れたような、眠れないような。
でもこれ以上ふとんにくるまっていても眠れそうにないので
「いつもの格好」に着替えて出かけます。
ジーンズとトレーナー。
「門出」の日にいつもの格好をしたのは
「もうスーツで通勤する生活(=会社員)に
戻る気はねぇぜ」という
ささやかな決意表明だったりします。

店に着き、平静を装って店内を掃除していると、
宅配便のおじさんが「two-sixさんはここ?」と
聞いています。
あ。そういえばそんな名前にした気がする。
結婚して姓が変わった女性ってこんな気持ちかしら、
などと思いつつ受け取ると、果たしてそれは
開店祝いの花束でした。
差出人はわたしの高校時代の友だちと、
ほんの短い期間バイトで一緒だった友だちでした。

年賀状代わりに簡単なダイレクト・メールを
送っておいただけでしたので、
まさかこんな贈り物をしてもらえるとは思っておらず、
フイをつかれて目汁を解放しそうになりました。
うーれしかったなぁ。
この後も小さなブーケなどがいくつか届き、
それらを店頭に並べてみてあることに気づきました。
どれもよく似た花束なのです。
オオタケの友だちからのも、わたしの友だちからのも、
そして2人の共通の友だちからのも関係なく、
黄色やオレンジ系のガーベラやチューリップなどの
シンプルな花束ばかりでした。

余談ですが、結婚式に呼ばれるとご祝儀を包みますよね。
「いくらにしたー?」などと友だち同士で談合したりして、
ちょいとヤーな空気が流れます。
でも花束っていうのは、そういうことをとっぱらった
見事なシロモノです。
贈る相手をちゃんとイメージして贈っているのが
しっかり伝わる。
受け取った方はそれらを並べてみて、
じぶんがヒトに与えている印象を確認できる。
たのしかったのは、オオタケの父上が贈ってくださった
花束だけが、たいへんに女性らしく、
しとやかな仕上がりであったことです。
パステルカラーのひらひらした花びらのお花たち。
スイートピーっていうのかなぁ。
あれは、ほんとかわいかったなぁ。
お父さま、娘御は立派なケツの穴大将に
成長しておりますのよ。
そして花束に添えられたカードには
「開店おめでとう。頑張って下さい。父」のひとこと。
ええ話やないですか。



そうそう当店は「本日オープン!」という
華々しい感じにはしないことにしていました。
あくまでも「いつもの一日」という雰囲気を
「装いたかった」のです。
なぜって、そういう性格だから。
ジャンクヤードの持っているイメージも手伝って、
地味に開店する方がいいように思っていました。
唯一「ひょっとして最近開店したのかな?」と
お客さまに「疑念」を抱かせるアイテムは
先ほど届いた花束。
でもあまりにイメージの似通った花々だったので、
ディスプレイに見えなくもなかったようです。
んなこたないですか。

なんとなく開店し、陳列マネージャー・カジさんが
プライスカードを書き始めてくれました。
そうです。
陳列までしか終了していない状態での
「なんとなくオープン」。
国内仕入れの商品もそのころやっと届いて、
この日も手伝いに来てくれたシカちゃんと
プライスシール貼りなどもちまちまと続けます。

やがて、お客さま第1号がみえました。
40代前半の男性。
原宿では少数派のタイプです。
たしか2000年モデルの石鹸を
お買い上げになったように記憶しています。

売・れ・たー!

みんなでこっそり目配せして喜びを分かち合いました。
お客さま第1号が
「原宿では少数派なタイプ」だったというのは、
のちの当店のなんたるかを
暗示してしたのかもしれませんが、
この時は知る由もありませんでした。

その後は、金曜日という事で、仕事を終えた友だちが
夕方になると次々と来てくれました。
その日の売上げの「友人割引率」の
高かったこと、高かったこと。
あんな乱暴なダイレクト・メール1枚で
駆けつけてくれたみんな、本当にありがとう。

会社員であることに「脱力」しておよそ2年。
行き当たりばったりと言ってしまえば、
それまでのやり方で、この日を迎えました。
今思えばあの時の「脱力」は、じぶんたちが思っていたより
ダメージが大きかったようで、
気がつけば他人と話すことを避けていたフシがあります。
この店を立ちあげるまでの間は、
じぶんたちの間口をせばめ、
角度も狭くして限られたメンバーだけでやってきました。
わたしという人間は、相当なめんどくさがりなので、
ヒトサマに誤解されてもそれを
解くことがかったるいのです。
だからじぶんたちの店を持つときは
そういう心配のないヒトとしか
関わりたくありませんでした。
必死で弁明するのがイヤだという
「ええかっこしい」とも言えます。
と、こう書くことも相当のゴカイを産みそうで
めんどくさいのですが、
まぁ、たまにはいいではないですか。

そんなええかっこしいのわたしたちが立ちあげたこの店に、
「ええとこだけ」を見に来てくれた友だちが
じつはたくさん居たというのは、ちょっとした驚きでした。
そうか、「やっちまう」ってことも、
あながち間違いではないのかもしれないなぁと、
思ったり思わなかったりしたものです。

でも、そんなことを言っていられるのも
「開店することがゴール」なバヤイのみ、ということも
じつはちょっと知っているのでした。
がんくびなりにですがね。
この時点では見えてもいないし、
どんなことなのかを想像できていないだけで、
やっていくうちにその都度「問題」ってやつが
じくじくと出てくるであろうことくらいは、
ちゃんと想像できておりましたとも。

(とりあえず第一幕終了)


「Disposable
 Earplugs」


29デシベルほど、
音をカットするという、
使いすて耳セン。
付属のケースに入れて
持ち歩けば、
いつでも聞く耳持たずに、
一人になれます。

2000-10-12-THU

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