へなちょこ雑貨店。 一寸の虫の五分のたましい物語。 |
第23回 「やっちまった」から分かることがある 毎度ご来店ありがとうございます。 20世紀も残すところあとわずか、 去年の「ミレニアム間近!」という騒ぎに比べたら 「さよなら20世紀! さあ21世紀の幕開けだ!!」ってな 盛り上がりが薄いと感じるのはわたしだけでしょうか? 舞い上がっているのは、 いつもは押さない年賀状の消印を、 「今年は押すぜ!」とチカラ入っている 郵政省だけのような気が。 さて、オープンしたものの、 思ったほどお客さんが来ないので 余力たっぷりでバイトを再開したわたしたち。 真冬の寒さとふところの寒さのリンクを からだ中で感じつつも自然に時は流れ、 やがて新緑の季節を迎えました。 その頃には店番中の(なっがい)空き時間を利用して わたしはすっかり「ほぼ日」の 「ほぼ毎日読者」と化しておりました。 そして5月1日付けの「ダーリンコラム」、 「どっちでもいいという本気」にえらいこと感激して メールをお送りしたのをきっかけに このような連載を持たせていただたいている次第です。 気がついたら「永久紙ぶくろ2」の販売まで させていただいちゃって、 人生ってなー、分かんないもんです。 さらに「へなちょこ雑貨店」の 連載を持たせていただいてからというもの、 インターネットならではのつながりができました。 もちろんオープンまでの限られた人脈というか 身内同然にコキ使われてくれた友だちも、 ちょっと自慢したいくらいのチームワークの良さでしたが、 チームではない、 点と点がつながる様を目の当たりにするというのは、 ちょっとエキサイティングだったもんでした。 中でも過去にショップ経営をされていた方や、 現在経営されている方からのメールというのは、 ありがたく読ませていただいています。 とくに静岡県の洋品店、 「游(ゆう)」の店主にかみさんは、 いつもネタがリアルでどきどきします。 このにかみさんは、きっぱりしていて ユーモアがあり、悲壮感がありません。 まぁ「へなちょこ雑貨店」宛のメールで 悲壮感なんか出せるかい! っていうご意見もありましょうが。 以下は前回の「お客さんが来ない!?」にいただいた メールの一部抜粋です。 ちょいとみなさまにもおすそわけでございます。 ---------------------------------------------- 私も、オープン4ヶ月後の2月には、 真剣にアルバイトを探しました。 予想を遥かに超える売上の悪さに、毎日毎日、 貯金通帳を見てはタメ息、見てはタメ息。はぁ〜。 冷蔵庫の中身と、貯金通帳だけは、 何度見直しても増えることはないんですよねぇ。 アルバイトをしなくては‥‥‥ そうは思ったものの、私の場合、ひとりでやってる為、 必然的に、深夜あるいは早朝の時間帯に 限られてしまいます。 そうなると「お水」系か、「配達」系か。 本業のほうのお客さまと顔を合わせるのは、 なんとなくイヤだったので、そんなことも考えながら。 「あの店、もう危ないんじゃない???」 なんて噂は、田舎ではマッハ2ぐらいのスピードで 駆け巡りますから。 そんな不安な2月の半ば頃。 どうしても店に商品を置きたくて、 でも、オープン当初は置かせて頂けなかった取引先から、 商品が届き、しかも!! 近隣の顧客リストまで頂くことが出来ました。 神様って、ホントに、いるのかも‥‥‥ そう思ったのは、言うまでもありません。 売上は最悪だったものの、気分的には、 ちょっと晴れ間ものぞいたりしたので、 なんとか、その月を乗り越えることが出来たんですよねぇ。 そんなドタバタ洋品店でも、 3年目を無事(かな?)に迎えることが出来ました。 ---------------------------------------------- こういうメールを頂戴すると、 「やっちまったこと」をより一層楽しめます。 こういった貴重な経験談を聞けるというあたり、 インターネットってやつぁ、 どうもなかなかやるようでございます。 ちなみににかみさんの経営されている「游」も、 ほぼ日のれん会の加盟店です。 あら、たのしい。 どうも「ほぼ日」ってやつぁ、 かなりやるようでございます。 突然ですが、わたしは、あるいはわたしとオオタケは あほなのかもしれません。 あほなばっかりに、世間の難しい構造が分からない。 だからやってみないと分からない。 それだけ。 こうしてオトナたちが言い続ける「不況」のまっただ中、 じぶんたちで店を持つということが 今の時代らしいとかなんとか、やたら言われるけれども、 じつは本人たちはぜんぜん分かっていない。 でもなんだかやってみたら 意外におもしろいことが出てきた。 そういうもんか、と。 商売というものを勉強したり、 巧妙な手段を考えたりした方が 失敗は少ないんだろうということは わたしたちなりに、ぼんやりと分かります。 ぼんやり。 でも、どちらかというと、わたしたちのバヤイ、 失敗してもべつにいいかなー、くらいの クチあけっぱな感じなのです。 可能性としては、 わたしたちこそ商いをやることに「向いていない」 ということも十分にありえます。 向き、不向きというだけでなく、 じぶんたちが面白がれなくなる可能性だってある。 それが分かるのは数年後のことかもしれない。 その時はその時だと思っています。 すっぱり足を洗って その時に次の方法を考えようと思っているだけです。 なにしろ難しく考えるのが苦手だし、 経験してみないと分からないもんで。 なにもこの連載を通じて 「さあ、皆さんも新しいことを始めましょう!」 ってなことを申し上げるつもりはございませんが、 わたしたちがやっていることは、 さほど特別なことではないのではないか、 ということは感じ続けています。 あるいは、じぶんで決めて、始めて、ひょっとしたら 成功するかもしれないし、失敗をするかもしれない、 でも、「どれもじぶんで処理できる」。 わたしたちは、商売の拡大そのものよりも ひょっとしたら、ここにこそ、 魅力を感じているのかもしれません。 前出のにかみさんのメールにあったひとことです。 ---------------------------------------------- もし、何か、将来的に重要なファクターがあるとすれば、 「独立して成功した」ことではなくて、 「独立したことがある」ってことのような気がします。 ---------------------------------------------- かの井上陽水氏はテレビで、 現在売れまくりのPUFFYのお2人に向けて 以下のようなことをおっしゃっていました。 「‥‥でも、あの2人が、 急にうたをうたうことを辞める、 と言い出したとしても、 それはそれでとってもすてきなことだと思うのねぇ」 (つづく)
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2000-11-10-FRI
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