へなちょこ雑貨店。
一寸の虫の五分のたましい物語。

第28回 ブックカバー量産篇うらばなし2

あけましておめでとうございます。
旧年中はたいへんお世話になりました。
「へなちょこ雑貨店」こと26 two-sixは、
「出来ることダケ、ちまちまと」を
スローガンにしたりしなかったりして
今世紀も営業してまいります。
どうぞご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

さて、お話は2000年の10月ごろに戻ります。
来年の話をしたら鬼が笑うそうですが、
旧年中の話をしたら鬼はどうするんでしょう。
ご存知の方はメールください。
いらんトンチはお断りします。



ブックカバーの量産を目論み、
これはイケるぞと踏んだわたしたちは
「MEGAMOUTH」というカタログを制作しました。
それにはブックカバーの
量産篇のご案内を掲載しているので、
量産のめどが立ってからの送付が
スジであろうと思っていたところで、
iMacがフリーズしてしまったのでした。

たたいても、さすっても、ウンともスンとも言いません。
へなちょこ番のハリさんに
ノートン持って来ていただいたり、
デザイナーKにアンチウイルスの
ナンだかをナニやらしてもらったり、
あろうことか紛失したらしい「起動ディスク」を
ゴチョウがiMacユーザーの友だちに借りてきてくれたり、
パソコン音痴のシカちゃんが祈りを捧げてくれたりと、
思いつく限りの手を施しましたが、まったくダメです。

わたしの自宅にもMacはあるので、
これからの作業を進めることはできるのですが、
なにしろ、せっかく読者の皆さんに教えていただいた
「MEGAMOUTH」先発分の送付先はiMacの中です。
わたしの方がフリーズしてしまいたい衝動に駆られました。

そうこうしているうちに、
A社とB店からブックカバーの見積もりが
あがってきました。
じつは見積もりを見る前の時点では
デニムに詳しいB店にいろいろと親切にしてもらっており、
多少の差額であれば、A社よりも高くとも、
B店にお願いするつもりでいました。

しかしその日あがってきた見積もりにより、
なんとB店の50ヶの金額でA社は100ヶつくれる、
ということが判明してしまったのです。
もちろん、わたしたちのリスクを少なくするために、
最小ロット50ヶという数に対応してくれたのは
B店の心意気以外のなにものでもありませんでした。
それが分かっているだけに、
この決断にはかなりの葛藤があったもんです。

こころはB店にあり、ふところはA社にある。
まる3日ほど苦悩し、結局はふところ具合と相談して、
安い方のA社に決めました。
B店に断りの電話をするのがつらくて、
今でも思い出すと嫌な汗が出てきます。
電話で恐縮するわたしに、B店の方は、
「おたがい商売なんですから、
 安い所がみつかったなら、
 それで良かったじゃないですか」
という優しい言葉をくださったのでした。

こころの底にじわんと後悔を感じつつも、
それを振り切るようにして、
A社に発注をかけることにしました。
もちろん、こういうときはいくら弱小雑貨店とはいえ、
「書面」を起こすことは忘れません。
あとでトラブルを起こさないためにはこれくらいしないと。

やがて、A社からサンプルがあがってきました。
その日のわたしの日記にはこうあります。

「10月12日
 肝心のポケットの26刺繍は入っておらず。
 現在コンピュータミシンを手配中とのこと。
 不安が残る。」

正直言って、26の刺繍が入っていない状態のものが
果たしてサンプルといえるのか?という
小さな憤りを感じましたが、
一日も早く納品してもらいたいという気持ちが強く、
わたしは口頭で
「刺繍は大丈夫なんですよね? 出来るんですよね?」と
確認するにとどめてしまいました。
この日もA社の社長自らが
サンプルを持参して来店しており、
「工場ではこのためにコンピュータミシンを導入して
 ヤル気を出しているから問題はない」
と繰り返します。
それならばとにかく出来るだけ早く
100ヶを納品してくれるようお願いしました。

こうしてブックカバー量産のめどは立ちました。
ということは同時に、
いよいよ「MEGAMOUTH」先発分の住所が
必要になったということを示しています。
それはどこかと尋ねたら、睡眠中のiMacの中〜。

ある日曜日、
満を持してオオタケの知人であるエンジニア氏が
さっそうと店に現れました。
わたしはその時同席していなかったのですが、
彼は小一時間ほどで「さくさくさく」と
iMacの眠りを覚ましてくれたのです。
しかも驚いたことにデータも無傷!
いやぁ、やっと26に光が見えてきたねぇ。

ところがどっこいぃぃぃ。

iMacの復帰から1週間後、A社から電話がありました。
「工場が姿を消した」。

へ? ああん?
今なんつったぁ??

「ブックカバーをつくる予定だった(海外の)工場が、
 引っ越ししてしまい、
 連絡先が分からなくなってしまった」

で?
それでナンだと言うんでしょう。
御社にお願いすることに決めたので、
当然、他に見積もりをお願いしていたところには
既にお断りしているわけです。
ですから、御社にお願いするしかないわけですが、
言っていること分かりますよね?

すると、A社社長、あろうことか逆ギレ。
「うちだって、
 こんなことになるとは思っていなかったんだ!」

むうう。きいい。
これはいかん、
このオッサンと同じレベルで熱くなってはイケナイ。
めずらしく冷静だったわたしは、
1週間待つからその工場、
あるいは代わりの工場を探してくれるよう頼みました。

そして1週間後、A社あっさりとギブアップ宣言。
ほおう、そうかいそうかい、
会社ってのは「書面」を起こそうが起こすまいが、
「出来ないもーん。すいませーん」の一言で
済まされるもんだとは
27年間生きてきたが知らなかったさ。
じゃなに、この「発注書」はどうするのさ?
え? 破棄してくれと? 
むむむむ。

文句は山ほどありましたが、やめました。
無駄にオトナと喧嘩するのには、
あたしゃ、あきあきなのさ。
それが嫌で会社員を辞めたのだから、
これ以上「出来ない」と言うばかりの人と
話をするのはやめましょう、
感情を抑えに抑えて、そう判断し、
「とにかくこっちのサンプル(ゴチョウ製)は
 絶対になにがあっても早急に返却してくれ」
とお願いして電話を切りました。

わたしは、1週間前の時点で、
A社はダメかもしれない、と思っていたので、
ギブアップ宣言までの間にネット検索を始めていました。
その顛末が第24回に掲載しました
Angel Featherさんとの出会いです。
Angel Featherさんには忙しい納期設定に
対応していただき、感謝しています。

こうして一難去って、また一難であった、
ブックカバー量産篇は完成したのでした。
はらはらドキドキの3ヶ月でしたが、
終わってみればいろいろ勉強できて良かったなぁ、
という気持ちです。いや本当に。
開店から1年足らずで、
これだけの経験ができているのですから。

ブックカバー初披露から長い間お待ちいただいた皆さん、
本当にありがとうございました。
店頭ではブックカバー量産篇、絶賛販売中でございます。
どうぞよろしくお願いしますね。


(つづく)

「SpaceVoyagers」

とうとう来ましたね。
夢の21世紀。
ロボットが
家事を全部やるとか、
動物と話せる
翻訳機ができるとか、
いろんな事を幼いころから
吹き込まれてきましたが、
新世紀幕開けには、
これくらい現実的なドリームを。
あー、宇宙行っみてえー。

2001-01-02-TUE

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