HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

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気仙沼さん
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最近のこと26
文:福田利之

令和ですね。
元号が変わったからといって、
過去を振り返ったりはしないのですが、
そういうところが、お前のダメなところであるという
お叱りのお言葉、ありがとうございます。
平成という時代、ちっとも平には成らざるで、
俺、いろいろありましたよ、そりゃ。
どちらかいうと漢字的には激動(自分調べ)。
平成ほんとにすみませんでした。

自分の反省は遥か彼方にさておき、
平成という時代、大きな出来事がたくさんありました。
特に大阪と東京で経験した、ふたつの大きな地震は
今でも簡単に、気軽に書いたり話したりするのは
少しはばかりますが、そんな中でひとつ、
東日本大震災がおこるまでは縁もゆかりもなかった
気仙沼という場所でたずさわった、
一生忘れない大事な仕事があります。

震災直後、多くの人と同じく、ずっと不安な気持ちのまま、
自分になにかできることはと考え、右往左往していたとき、
絵の力で、気仙沼で被災されたアンカーコーヒーさんの
応援をしないかと、声をかけてくださったのが、
ほぼ日さんです。

打ち合わせの翌日には気仙沼に行き、
帰ってきてから軽い興奮でほとんど眠れず、
ただただ夢中でパッケージ用の絵を、3点仕上げました。
何か新しいことをやりたい、生まれ変わりたいという
震災後の不安定な気分を見透かされていたのか、
糸井さんのご提案で、ほとんど初めて試みる、
マスキングテープを使った技法で、
技術も確立していない中、試行錯誤し、制作。
打ち合わせから納品まで、1週間ほどの出来事でした。
今思い出しても、自分の持ってる力以上のものが出せた、
静かな熱量が低温で燃え盛るような、
余計にかかる負荷が心地いいような、
そのときの不思議な感覚は今でもおぼえています。

そのあと少しずつ復興もすすみ、
仮設から、実店舗のマザーポート店をオープンされた頃、
別のパッケージのお仕事を正規のお仕事として、
アンカーコーヒーさんからご依頼いただけたときは、
気仙沼の地で、自分の仕事が根付いている、
継続しているという、格別な喜びがありました。
時間を経て、気がついたらこちらが応援されているという
この仕事で得た満足感、経験値は、
その後の自分の生き方、他の仕事に対する取り組み方など、
いろんなことに役立っています。

下手な文章で、とても薄っぺらく聞こえてしまいますが、
そんな仕事を、新しい時代でも、これからも
一つでも多くできますように。
ちょっときれいにまとめすぎたけど、たのむで令和。

※パッケージデザインを気仙沼に届けたときの
レポートはこちらでお読みいただけます。

2019-05-25-SAT

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