HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

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なにかと九州
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最近のこと72
文:福田利之

春ですね。
棒読みしたいぐらいに今年は体調不良です。
もうマスクしなくていいといわれても、
花粉のせいでそうもいかないのは残念ですが、
子供に折られた前歯が1本、昨年からない状態なので、
マスクの下はお笑いコントのため
どの道はずすには勇気のいるところです。

先日まで福岡の老舗百貨店、岩田屋にある「文喫」
絵本と装画の展覧会をしました。
「文喫」はコワーキングスペースとして活用できて、
本も自由に読めて飲食も可能で
キッズスペースもあって絵本もたくさんあって、
気に入った本はすべて購入できるという、
本好きや、親子には居心地のよい場所です。
本屋さんという形態がたちゆかなくなりつつある昨今、
それでも本屋という形を残していくために、
本好きの人たちが知恵を絞って考えた
一つのお店の在り方です。

時代の波に翻弄されて、あたりまえだったことや
ものがなくなっていくというのは
今までもこれからも世の常ですが、
「文喫」のような考えの空間は、
新しい書店の一つの形として
続いてほしいなと思います。

最近はなにかと九州にご縁が多く
長崎の波佐見では花瓶を作っています。
窯元の職人さんとお話しをしていると、
波佐見焼は特徴がないというのが特徴で、
いろんな歴史をもちながら伝統には拘らないところがあり
外部からの参入をあまり拒まない風土があるそうです。

焼き物を中心コンテンツに据えつつ、
外部の知恵と伝統が合わさり、
昨今、新しいコンセプトのお店が波佐見には増え、
これまで焼き物の里にあまり見られないような
若者が多く訪れていて、老若男女、
波佐見ブランドは近年ファンも多く注目度も高いです。

でも後日談があって、
波佐見焼は特徴がないのがいいと言っていた職人さんが
少しお酒がはいってリラックスしてくると
波佐見にもこれといった柱がほしい、
ほんとうはしっかりした伝統がうらやましい、
福田さんのような作品はうちでしか作れないなど、
心に秘めたプライドと、
強い想いを語られていたのが印象的でした。

心の揺れ揺れが見えて、人間くさくてかっこよかったなー。
波佐見で仕事ができてよかったと思えた瞬間でした。
きっといいものができそうなので乞うご期待を。

2023-03-25-SAT

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