テレビのバラエティ番組を手がけたのち、
ドラマ『時効警察』、さらには映画『イン・ザ・プール』、
『亀は意外と速く泳ぐ』、『図鑑に載ってない虫』などの
監督を手がけた三木聡さん。
その最新作である『インスタント沼』が
5月23日土曜日から、テアトル新宿、渋谷HUMAXシネマほか
全国で公開となります。
主演は『時効警察』でお馴染み麻生久美子さん。
さらに風間杜夫さん、加瀬亮さんなど
個性豊かな面々が脇を固めます。
麻生さんのキュートさはもちろんのこと、
風間さん、加瀬さんが演じる役が、これまたスゴイんです。
(C)2009「インスタント沼」フィルムパートナーズ
脚本・監督:三木聡
出演:麻生久美子 風間杜夫 加瀬亮 松坂慶子
相田翔子 笹野高史 ふせえり 白石美帆
仕事も恋愛もうまくいかなくなった
麻生さん演じるジリ貧OLの沈丁花ハナメが
不思議な沼を通じて、幸せになっていく
とっても奇妙でとってもおかしな映画です。
「え? 沼?」とお思いでしょうが、
物語のカギを握るのは間違いなく「沼」なんです。
三木さん、こんな不思議な映画のアイデアは
いったいどこから出てきたんですか?
「いまはもう移転しちゃったんですが、
昔、テレビ朝日って材木町という場所にあったんです。
その近くにニッカ池と呼ばれる池がありまして、
バラエティ番組でその池を移動する、
という企画を考えたんですね。
『池を乾かして泥にしたのち、
運んでまた水を入れる』方法でいけるんじゃないかと。
そのアイデアが根底にありましたね」。
‥‥すごいところから企画が始まったんですね。
そんな内容をすごくすばらしいキャストの面々が
演じられていますよね。
「今回の現場は、
あらかじめイメージを固めてきて、そのとおりに演じる、
というわけじゃなく、その場で起こったことに
いちいち反応しながら演じるような
フレキシブルさが求められたんです。
そういうことをキチンとやりきれる女優さんって
そんなにいっぱいはいらっしゃらない。
そして、ある程度の年齢、ならびに演技力の高さも必要。
そういういろいろな要素を考えると
主演は麻生くん以外考えられなくて。
ラッシュ(荒い編集を施した状態)を見終わったときに
『あぁ、やっぱり沈丁花ハナメは
麻生くんにしかできないな』って思いました。
役者だって人間だから、表現欲が前面に
ググッと現れることだってあるんでしょうけど、
表現してないような顔で演じることが必要なときもある。
まさに、そのときというのが、
こういうよくわからない喜劇を演じるときで、
芝居に対して無責任になれる無欲さが必要なんです。
彼女はそれをやってくれたんですね。
すごく大変だったと思いますよ。
加瀬さんは、あれだけフラットな立ちかたを
無防備な状態でできる役者さんも希有ですよね。
ハナメのハイテンションな感情に対して
何も考えていないような顔をして、
客観的な位置に居続けるという立場なんです。
もともとはなんのハナメと関係のない人物ですからね。
あんなすごいパンクスの格好をしている人物が、
たまたま、居ちゃっただけですから。
でもね、『俺、ただ居るだけじゃないか』っていうことに
フラストレーションを感じる役者さんもいるんです。
僕はただ居ることに徹せられるのも
役者の技術とセンスが大きく関わってくると思ってて、
その点で、加瀬さんはバツグンでした。
ぜんぜん、平気なんですよ。
それこそビックリするくらい平気でしたね。
それとみなさんが衝撃的だと感じられる
ハナメの実の父親かもしれない男
「電球」役の風間杜夫さん。
基本的に、この映画は、
電球の意味のない高めのテンションにハナメが
変な高揚感を覚えていくっていう映画なんですけど、
無理矢理なテンションからの高揚感を表現できるのって
多分、日本ではこの人しかいないと思ってます。
つかこうへいさんの『蒲田行進曲』のときから
そういう高いテンションのイメージはあったんですね。
で、風間さんのいまのお芝居ってどんな感じ? と思って
まずは舞台を観させていただいたんです。
やっぱりね、体のキレと
セリフのテンションがバツグンなんですよ。
それでぜひお願いしたいと思いました。
スゴイ髪型もこのために剃っていただきました。
名誉のために言っておきますが、
風間さん、ちゃんと髪の毛ありますからね(笑)。
そういう役者のみなさんのお芝居のおもしろさ、
並びに最後の仕掛けのバカバカしさを
存分に楽しんでいただいて、
見終わって映画館を出るときに
『まぁ、とりあえず大抵のことはなんとかなるな』
というようなことを思っていただければ本望ですね。
今の世の中、いろいろなことを
深刻に考えすぎなんじゃないかって思うんです。
不況だとか、仕事がないとかっていう話をしてるけど、
仕事がないほうがいいこともあるわけです。
社会の構造というか仕組みが
何か物を買わなくちゃいけないという
システムによって成り立っているから
どうしてもそういうことを言いがちですが、
人生ってそれだけではないと思うんですよね」。
三木さん、楽しいお話をありがとうございました。
果たして最後のバカバカしい仕掛けとは何なのか?
それはぜひ、映画館に足を運んで、
あなたの目で確認してみてくださいね。
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