イラストレーター・デザイナーの小田島等さん。
CDジャケットや書籍のデザインを数多く手がけながら、
漫画や音楽などの表現活動も行われています。
「ほぼ日」で以前ご紹介した、
糸井重里作詞、ムーンライダーズの名曲、
『ゆうがたフレンド』のジャケットは、
小田島さんが描かれた作品です。
そんな小田島等さんが、
1980年代のイラストレーション・シーンの魅力を
たっぷりと紹介する一冊を監修されました。
『1980年代のポップ・イラストレーション』
小田島等(監修)
アスペクト/3360円(税込)
手にとって、拝見してみたら‥‥。
まず、そこに収録されている
イラストレーター陣の豪華さにびっくり!
敬称略で、お名前を連ねさせていただければ、
湯村輝彦、スージー甘金、空山基、渡辺和博、上野よしみ、
霜田恵美子、鴨沢祐仁、太田螢一、蝦子能収、根本敬、
吾妻ひでお、山口はるみ、永井博、鈴木英人、
ペーター佐藤、日比野克彦、田代卓、ナンシー関。
という、そうそうたる顔ぶれ。
これだけの方々の作品が、美しいカラー図版で、
それぞれにたっぷり収録されています。
また、コラムやインタビューページもかなりの充実。
さらに、80年代イラストレーションに影響を受けた
クリエーターたち(現在、第一線で活躍の方々)が描く、
トリビュート作品も収録されいます。
小田島さんは、
「監修」という立場で、
なぜ、この本を世に出そうと思い立ったのでしょう?
まずは、その理由をうかがってみました。
「とある美大で、
学生さんたちの前で話をする機会があったんです。
当然イラストレーションやデザインの話になりますよね。
それで、過去の、80年代のイラストレーションの
話題をしはじめたら、なんか、こう、
生徒の食いつきが急に悪くなったんです。
急に距離ができてしまって。アレ? と思いまして。
100人くらいの教室が水を打ったようになっちゃって。
深く訊いてみると80年代のイラストレーションのこと、
みなさん知識がなかった。
で、ためしに佐藤可士和さんを知ってる人って訊いたら、
100本の手がみごとにサーッと挙がって(笑)。
いや、今をときめく佐藤可士和さんのことを
美術系の学校の生徒が知っているのはもちろんのこと、
当然なんですけど、そのギャップに驚いちゃって。
そうかあ、知らないんだぁ‥‥。
いまの20才くらいの子たちって、
ネットで情報を得ることがふつうになってますよね。
ところが80年代のイラストレーションについては、
きちっと情報がネットにスライドしてないっていうのが
あるんじゃないかと思ったんです。
それならば、本というかたちで、
動かぬ証拠をちゃんと作んなきゃと思ったのが、
ほんとにいちばん最初のきっかけでした。
だから学校にある図書館なんかにコレ、
おいてほしいんです」
なるほど。
ということはやはり、若い人に向けられた本なんですね。
タイトルに「1980年代の」とあるので、
ついつい「懐かしい!」「ああ、やっぱりいいなあ~」
という気持ちでページをめくってしまいましたが、
そういうことのためにある本ではなくて‥‥?
「いえ、懐かしく感じる方は当然いらっしゃるでしょうから
それは自然に楽しんでいただければと思います。
ただ、ぼく自身は85年に小学校卒なんですよ。
80年代というものを半分知ってて、
半分知らないという状態。
だから懐かしいという気持ちもあんまりないんです。
なんていうんでしょう‥‥
いま、絵を描いている若い人たちに、
見えていないルーツを知ってほしい、というか。
たとえば"ヘタうま"ってことばがありますよね?
ことばとして一般化してると思うんですが、
これのルーツは湯村輝彦さんなわけじゃないですか。
それを知るだけでも意味があると思うんですよ。
いま自分が、流行や時代の空気を感じながら
無意識に描いているつもりの絵には
過去からの連鎖があるんだ、という‥‥。
ですから、ある年齢から上の方には
たしかに懐かしい本なのかもしれないですが、
"懐古的な本"だけではないんです、
ということはちょっと言っておきたいなあと思います。
それから、絵に詳しい子、愛好者って、
いる場所にはもちろん数多くいるんですよ。
クイックジャパンなんかの読者だったり、
クラブなんかへ行くような子だったり。
イラストレーションに対する熱は、
そういう子たちに手渡されたような気がしています。
今は美大生、専門生が
すこし弱いような気がするんですよね。
この本では18名の作家さんの絵を紹介しましたが、
もちろん掲載したかった方はまだまだたくさんいます。
しかし今回は紙面の問題で18名が限界でした。
この本をたくさんの方が手にしてくださったら、
第2巻、3巻を出して、
今回できなかった部分を補完していけると思うので、
どうかひとつ、よろしくお願いします(笑)」
※このページに登場するイラストは、書籍の表紙以外、
すべて小田島等さんに描きおろしていただきました。
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