HARUOMI HOSONO DREAM DIARY
タヌキの神様
夢を見た・・・

不穏な空気が充満する
カイロのような都市~しかしここは渋谷だ。
とうとうアイアン・ホースに乗った。

原宿警察が不穏な事件に対処するために動きだし、
ぼくは巻き込まれたようだ。
警官の操る妙な蒸気式乗り物に乗せられ、
助手席で圧搾空気を送るような
ポンプを引くことになったのだ。
鈍く黒光りするその乗り物が、
多分例のアイアン・ホースなんだと思う。
助手の仕事は忙しい。
曖昧ながらも頭上にあることは確かなポンプから、
何の意味も無く垂れ下がっている鉄のワイアを、
上下に動かし続けなければならないからだ。
そうしないとアイアン・ホースは前に進まない。
その乗り物の動きというのも妙に怪しい。
空中に浮いてるに違いない。
それもバウンドしながら次第に速度を上げ、
どんどん上昇してゆく。
鉄の釜のようなシャーシーの中にすっぽり入っていると、
速度と高度を上げるにつれて釜自体が後方に傾く。
つまり足を前に出して横になる状態だ。
足をつっぱってポンプを動かし続けるが、
とうとう力尽きて手許が狂い、
ポンピングがとぎれてまった。
しかし左手にいる、まるで馬車の御者のように
ホースを操る制服の警官は、
「もういい」とだけ言う。

(2001/03/26)曇り

イラストレーション:佐竹奈々
解説
この夢の蒸気で動く鉄の馬は凄いパワーだ。
20世紀ヴァイタリティの象徴だった蒸気機関と、
19世紀の「馬力」が融合してるんだ。
最後に「もういい・・」と言った御者警官の、
呆れて白けた言葉が残ったまま目が覚めた。

このごろのハローミ
子供の頃に乗った蒸気機関車が忘れ難く、
去年久しぶりに大井川鉄道の汽車に乗ってみた。
でも昔の印象と何かが違う。
煤煙がないし、機関車の「シュッポッポ」という音も、
心なしか静かすぎる気がして落ち着かない。
後になって「鉄チャン」(鉄道オタクの総称)から、
「ああ、それは
 無煙炭を使ってるからですよ」
と指摘され、ナールホドネ、と思った。
最近では沿線の民家に煤煙は迷惑だし、
乗客でさえ汚れるのを
嫌がるんだろうねえ。

2006-10-19-THU
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