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「ほぼ日」はじめてのスエット・パーカが、
こんなにかっこいい、着心地のいいものになって、
すごくうれしいです! |
金子 |
それはよかった。かたちについては、
「正統派」というリクエストをいただいたので、
厚い生地や長いリブなど、
クラシックなスエット・パーカをベースに、
トール型といって、着丈をやや長く、
裾のしぼりを甘くして、
現代的なテイストを加えています。
リラックスして着られる、という点が、
重視されたかたちですね。 |
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そういえば、はじめて試着したとき、
すごく動きやすくて、感動しました! |
金子 |
それは、今回つくったパターン(型紙)が、
一般的なスエットのものではなく、
布帛(ふはく=綿その他の織物)などでつくる、
ブルゾン寄りだからなんです。 |
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パターンがブルゾン寄り? |
金子 |
布帛の洋服、ブルゾンなどでは、
生地がのびないので、
からだの動きをさまたげないよう、
パターンを設計してやらないといけないんです。
いっぽうスエットやTシャツっていうのは、
生地がのびるから、いいだろうってことで、
パターンがとても単純化されているんです。
そのほうが量産できますしね。
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―― |
具体的には、どのへんが、
ふつうのスエットとちがうんでしょう? |
金子 |
まずは、型紙に「前後差」をつけています。
前と後ろで、大きさがちがうんです。 |
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というと??? |
金子 |
人間の動きは、腕でもなんでも、
前に動かすことが多いですよね。
つまり、背中側がのびる動きになるんです。
だから、型紙の背中側をやや大きく、
前側をそれより小さくしています。
ふつうのスエットは、こんなことしません。 |
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ははあ! なるほど! |
金子 |
ほかの部分でいうと、
この2つのパーカをくらべてみてください。
わきの部分のちがいがわかりますか?
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ユラールのパーカ |
別の既成のパーカ |
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えーっと、「ユラールのパーカ」は、
わきに、たるみがありますね。 |
金子 |
そうなんです。ここに運動量をもたせて、
手が動かしやすいようにしています。
厳密には、「たるみ」ではないんです。
決して、だぶつくわけじゃなくて、
着ると、からだの線に沿うようになっています。 |
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なあるほど、そっかそっか! |
金子 |
それから、ひろげて見てみると、
「ユラールのパーカ」は、わきの下がまるく、
オレンジのは、Vの字になっています。
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そでと身ごろの
つけ根が
まるくなっている |
つけ根はVの字。
平面的なパターン |
まるいほうが、着たときに立体的になって、
動きやすいんです。
これも、ブルゾンのパターンの応用です。 |
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わあ、ほんとだ。
ぜんぜん気がつかなかった!
金子さん、これ、すごいじゃないですか!
なんでいままで、だまってたんですか? |
金子 |
(目をふせて)
いや‥‥それほどのことではないので‥‥。 |
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でも、ほかではあまりやってないんでしょう? |
金子 |
ええ、それはそうですね。
ほかにも、ポケット裏の布が
二重になっているところなども、
ブルゾン的な複雑なつくりになっています。
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いやあ、よくわかんないけど、なんかもう、
スエットの皮をかぶった、
本格ブルゾンって感じですねえ! |
金子 |
そうですね。
ふつうのスエットより、
ずっと工程が多いものになっています。
工程が多いだけでなく、
「そでぐちポケット」などは、
ポケットをのばしながら縫わないといけないので、
結構むずかしい作業をすることになります。
Tシャツやスエットをつくる
いわゆるカットソー屋さんでは、
あんまりやりたがらないことを
してますね。 |
―― |
うは! 「ユラールのパーカ」には、
そんなに手がかかってたんですね!
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―― |
ロンTのほうでは、何か苦労したところとか、
ありましたか? |
金子 |
折り返すための裏地をつけるので、
そでの太さや、形は、試行錯誤しましたね。
あんまりそでが細いと、
そで裏のマドラスチェック生地は伸びないので、
まくりにくくなっちゃうし、
太すぎると、着物みたいになっちゃうし。
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―― |
サンプルで、
そでの形がキレイにできてきたとき、
さすが! って思いました。 |
金子 |
ありがとうございます。
実は、そでに関しては他にも、
裏地を折り返したときに、きれいになるように
考えてあるんですよ。 |
―― |
へえ! それは初耳です。
どのへんが、でしょう? |
金子 |
そでの太さは、そで口に近くなるほど、
だんだんと細くなっていくものですけど、
このロンTの場合は、
そで口に近くなったところで、
太さが一定になるようにしています。
「ユラールのロンT」(上)と別の既成のロンT(下)
「ユラールのロンT」は、先のほうの太さが一定です。 |
―― |
ふーむ、それは、なぜ? |
金子 |
そでを折り返したときに、そのほうが、
きれいな形で折り曲げられるんですよ。 |
―― |
あっ、そうか、太さが一定のほうが、
へんなシワが出ないんですね。
「ユラールのロンT」は、
そでを折ってもスッキリ。(上)
もうひとつのロンTは、折り返した部分の下側が、
すこしよれています。(下) |
金子 |
そうなんです。
それから、そでを縫い合わせてから、
裏地をつける、なんていうこともしています。 |
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えっ、なぜそんな面倒なことを? |
金子 |
Tシャツ生地を縫い合わせている
ミシン目が出ちゃうと、裏地を折り返したときに、
ミシン目が見えて、きたないですよね。
だから、ちょっと手間になるけど、
あとから裏地をつけているんです。
赤い矢印は、Tシャツ生地の縫い目。
黄色い矢印は、裏地の縫い目。
裏地の縫い目は、ほとんど見えません。 |
―― |
がーーーん。
知らないあいだに、そんな配慮まで
してくださっていたんですか!
なんでいままで言わなかったんですか!? |
金子 |
(目をふせて)
いや‥‥それほどのことじゃないから‥‥。
ちなみに、こういう処理もやっぱり、
ふつうのカットソー屋さんは、
やりたがらないですね。 |
―― |
あのう、パーカもロンTも、
「カットソー屋さんがやりたがらないこと」
っていうのが、でてきたんですが、
実際に生産するのは、中国ですよね?
いざできてみたらダメだった、
なんてこと、ないんでしょうか? |
金子 |
(キラリと目が光って)
そのへんは、ぼくがコントロールしますんで、
安心してください! |
―― |
おお! なんと心強い!
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