「イべんとう」開催の日がやってきました。
社員みんなで大丸東京店地下1階に行き、お弁当を買う。
それが主なるミッションです。
前回の糸井の宣言どおり、
1000円+ふんぱつ分1000円=2000円のお弁当費が
全員に配布されるところから、スタートいたします。
本日6月6日、「ほぼ日」は11周年を迎えます。
みなさま、これまでほんとうにありがとうございます。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

では、写真と文章で、
「買いに行ってから食べるまで」を追いかけます。
スタート時間は午前9時すぎ。
かなり長いですが、ザーッと一気にまいりますよ。





「じゃ、約束どおり配るからね。
 えー、こほん、お弁当代の1000円です。
 1000円ずつ渡すからな!
 1000円分、自由に買っていいぞ」

「いえーい」

「いや、待て、11周年のお祝いだから、
 特別に、もう1000円プラス! 予算は2000円だ!」

鳴りやまぬ拍手。

「ワー」
ほんとに鳴りやまない。

「ふむ、たしかに2000円」
受け取ったものを、そそくさとしまい込まず、
中をきちんと確認する。
これは社会人の常識。

今日は全員、いつもより1時間早い出社です。
山口は完全な寝起きフェイスになっており、
みんなから「大丈夫?」と声をかけられています。

ギリギリまで電話の応対などをしまして。

めざすは、東京駅、大丸です。
行ってきまーす。
「みんな、12時に事務所で再集合だよ!」

地下鉄の中で、あらかじめ配られていた
お弁当売り場のパンフレットを取り出し、予習します。
「おれ、中華が好きだから中華弁当にしよう」
「じゃ、おれも」
というように、軽い同盟が結ばれたりしています。

売り場のパンフレットひとつで
こんなにたのしいなんて不思議です。
しかし、まだまだ。本番はこれからです。

壁際に並んで10時の開店を待ちます。

田中(写真右)は
「期待に胸ふくらませています」
と言っております。
デパートのオープンをドキドキして待つのは、はじめての経験。

そして。キュルキュルキュルと幕があがります。

社長である糸井重里、
先陣を切ってシャッターをくぐりました。

「お客さま、申しわけないです、いましばらく‥‥」

ははは、
気持ちがね、急いてるんです。

「いらっしゃいませ」という声を合図に、開店でございます。
みんな、気持ちが高まっていますが、
40数名で一気におしかけるわけですからね、
落ち着いて、落ち着いて。
もちろん事前に大丸さんにはご協力をお願いしていました。
今回お世話になった、大丸東京・広報ご担当の田中晶子さんと、
東京地区担当・弁当総菜バイヤーの荒木学さんです。

田中さん「ようこそいらっしゃいませ」
荒木さん「ごゆっくりお選びください」

売り場にずらりと並ぶお弁当が我々を迎えます。
「いらっしゃーい」

「いらっしゃーい」

「いらっしゃーい」

「いらっしゃーい」

「やるぞー」雄叫びをあげる者あり。

いちもくさんに肉売り場に駆けつけ、ほほえむ者あり。

角煮のウィンドウにくぎづけになる者あり。

「あー、わけわからん、どうしよう」

最初にみんながむらがったのは、今回のいちばん人気ではないかと
予想されていたお店「えぼし」です。
茅ケ崎に本店を持ち、平塚や築地の港から水揚げされた
新鮮な魚をメインにいろんなお料理を揃えるお店です。
むかし茅ケ崎に住んでいた乗組員の武井が
「地元の人気店だったよ」とみんなに教えていたのです。

前回、糸井が
「掘っても掘っても食べ物が出てくる」と驚いていたのも、
ここ「えぼし」のお弁当のことでした。

カメラ係の山下は、一生懸命
「えぼし」のお弁当を撮影しています。

山下が撮っていた写真はこちら。海鮮ビビンバ丼です。

ここで山下は
「売り場のうまそうなものをただたんに撮る」モードに
入ってしまいました。照焼き。

イカ。

銀むつ。

さば塩焼き。
‥‥魚介ばかりですね。
「いやぁ、ほんとにうまそうだなぁ」
素直なため息をこぼしています。
この分ですと、山下はほぼ、お魚のお弁当で決まりでしょう。

お金と市場に強いと言われる
この乗組員たちは、真剣なまなざしです。

「最初にどうしてもすしに! すしに食らいついてしまいます!」
と経理総務の一団。
「えぼし」に次ぐ二番人気店は、すしの「知床鮨」でしょうか?
「知床鮨」は、北海で獲れた新鮮な蟹や鮭、イクラなどを使った
ちらしずしを中心に展開するお店です。

オリジナリティあふれるおすしが評判の「タキモト」も人気です。
特に、魚介が何層にも重なる
この魅惑のお弁当が、人びとを強烈に吸引。

これも「タキモト」のおすし。
すごいね、弁当に見えないですね。

縦横無尽にフロアを歩き回る乗組員たちを見て、
大丸さんのおふたりが、よろこんでくださっています。
荒木さん「こんなに楽しんでいただけるとは(笑)」
田中さん「ほんとに(笑)。みなさんの姿を見ていると
     私たちも食品に対して
     初心にかえらなくては、と思いますよ」

糸井がフロア歩くと、「弁松」の店員さんから
「いつもありがとうございます」と声がかかりました。
どんだけいつも「弁松」に通っているか、が
心の底からわかるひとコマです。

入店から10分、みんなまだまだ
ようすうかがいだね、と思いきや。

あらら、茂木は、もう買っちゃったの?
せっかちにもほどがあります。

みんな、まだあのように
試食とかしてのんびりしてるよ?

ねぇ? あのように。
茂木「いいの、平次弁当を買うってこと、
   前もって決めちゃってたんだもん」

平次‥‥? 銭形平次?
茂木「あとは、千疋屋で
   茂木びわゼリーを買っておしまい」
それは、名前のシャレ?

茂木、58円のおつりをもって
買い物終了。ゴール。はやい。

社長などは、また入口のお店に戻って
目を泳がせてるというのに。

おお。ここでもう1名、購入者を発見しました。
年長者・小木曽です。何を買ったのでしょうか。
え? 水なす?‥‥あのね、お弁当ですよ?
今日買うのは、お・べ・ん・と・う!
「とーりあえず、買っちゃったんだよ」

「水なすっつったらさ、知ってる? おいしいんだよぅ?
 この姿見たらさ、買わずにはいられないでしょう。
 弱ったなぁ」
そう言って小木曽が、デレー、としています。
水なすは、関西地方で栽培がさかんな漬物にぴったりのなす。
(小木曽が買ったのは水なすの漬物です)
小木曽は、以前の職場で
関西に単身赴任していたことがありますので、
そのころの思い出が甦ってきたのでしょうか。

いっぽう、もうひとりの年長者・笠井は
まだまだ手ぶらでございます。早足で市場調査中です。

こちらもどちらかといえば年長組。
自らの欲望を隠すことはもはやしない、
食&色の狙い撃ち、播口石川ペアです。

播口&石川のおおまかな行動パターンは判明しています。
悩みに悩んで理屈をこねまわしたあげく、

結局は欲望が頭をもたげ「NAKED」狙いとなり、
ゆくゆくは生ものの極み、すなわち
すしに行くであろうと予言します。

ほらほら、やっぱり。

せっかち派閥の一員・鳥井は、案の定もう決断。
「ジャケ買いですよ」
しかも一品のみ?

菅野もせっかち派閥。
「決めた! ピーナッツバターサンドを軸にします」
お弁当がピーナッツバターなの? ‥‥軸?

これだね、ピーナッツバター。

早足年長・笠井の買い物袋のなかみはまだ空っぽ。
ええ、まだ序盤ですからね、ゆっくりいきましょう。

早々に買い物を終えた茂木は、どうも暇らしい。
元木は、まきこまれてないで早く売り場をまわるべし。

こちらは、デザートを先に選ぶ面々です。
女性陣は、こういうパターンもありうるんですね。

播口が「見えた!」と叫んだ瞬間です。
何が見えたのでしょうか。
「ぷりぷりが見えた!」
やはり「NAKED」狙いでしょう。

おしゃべりプレゼンター山口は
店員さんとすっかりなかよしになってます。

山口は売り場で練りものを試食後、
「ヤッター。絶対買います」と確約。
そのお店の前を通るたびに「待ってますよ」と声をかけられ
うれしそうにしています。
しかし、同行している西田(左)にはそれがプレッシャー。
「ぐっさん、買うなら早く買いましょうよ」
「でなきゃ買うまであの店の前を通るのやめましょうよ」

店員さんに話しかけるタイプの者が
ここにもおりました。松本(右)です。

「これはどういったお味なんですか?」
「揚げてから酢でしめて、ふむふむ」
「はぁー、バランスがみごとですね」
「なるほど、創業は大正12年」
とにかく松本はしつこく店員さんを質問攻め。

そして、尋常でない集中力。

武井(右)は松本のしつこい売り場質問攻撃に
聞き入っている‥‥ように見えたのですが、
いえいえ、自分の弁当のことで頭がいっぱい。
説明を聞くふりして、
ぜんぜん別のところをキョロキョロしています。
聞き込みと張り込み、まるで食品街ポリスのふたり。

ポリス武井&松本、
お肉の「日山」にたどり着きます。

実は「日山」も常時にぎわっていたスポット。

お肉を量り売りして、その場で焼いたものを
ご飯+つけ合わせのセットとともに
詰めてくれるといううれしいシステム。

「お好みのお肉をお焼きしてお弁当に致します」
すべて「お」がつくおもてなしぶり。
うーん、おなかが鳴る。
大丸のおふたりに訊ねてみました。
ここのお肉のお弁当、人気があるのでは?

田中さん「そうですね、ご好評をいただいています」
荒木さん「とくに週末は、お肉とか揚げ物とが人気ですね。
     で、月曜日になると、
     あっさり系が好まれる傾向があるんです」
へえええ〜、そういうものなんですか。

糸井が「見ておれ」とばかりに英断を下しております。
おお、おこわですか、そう来ましたか。

ものを買ったあとというのは、
人間の頬はニンマリと緩むものであります。

あら、小木曽もおこわです。
赤飯が気になるようす。
水ナスに、どう組み合わせるのか?

笠井はひきつづき手ぶらでウィンドウとにらめっこ。

菅野は携帯電話を取り出し、
電卓をパチパチはじめています。

元木はあちこちに出没し
あやしい動きをしています。
でもやはり「えぼし」狙いか?

碁盤前で腕組みするように
サラダ前で熟考する佐藤。がんばれ。

これは何かとみんなの心をうばった
西洋肉まん。フォアグラ入り。294円。

最初にすしに食らいついていた経理総務一団、
流れ流れて「えぼし」に漂着しました。
「なにこれなにこれ」
「うわー、すしも食べたいけど『えぼし』とも関わりたい!」
関わりたいってなんだ、どういう心境だ。

秘書小池は、仕事も早いが決断も早い。
すしを軸に据えたメニューでスパッと終了。

山口は売り場をうろつくあまり、
腹ぺこ具合が極まったか、中華に傾き中。
試食のお店への義理は、いかに‥‥?

こちら、我が社の事業計画担当、篠田です。
めあてのものの価格を調査し、自らの昼食事業計画中。

うむむむ。お金の入った封筒裏に値段のリスト。

突如、篠田がベンチに引っ込みました。
「目移りしないとこで、メモを相手に作戦を練ろうと思って。
 あ、電話かかってきちゃった」
どうぞどうぞ、出てください。

こちら永田でございます。
「悩みに悩んで白飯を買うのだ」
なんなのだ。

白飯‥‥ほんとだ。

永田は白飯からスタートしてバラ買い派。
レシートの数もいまのところ最多?

「むふふふふ」冨田がほほ笑みながら近づいてきます。
「えぼし」でお弁当を買ったんですね。

「買っちゃったよ。だけどまだ千円以上お金があるよ。
 いい買い物したんじゃないのォ?
 どんだけデザート買えるんだろう! きゃは」
しあわせを味わい中でした。
そっとしておきましょう。
‥‥いやはや、いまさらこんなことをいうのもあれですが、
おいしそうなお店がこんなにたくさん。
ここにあるお店は、どうやって選ばれたんでしょうね?
またもや、大丸さんのふたりに質問してみました。


田中さん「あ、それについてはバイヤーの荒木から」
荒木さん「やっぱり、食べて探すしかないんですよ。
     そとをまわって、とにかく食べる。
     こういう体型になっちゃうわけです(笑)」


お肉の「日山」に戻ると、
やっぱり人が吸い寄せられていました。
笠井が小脇にかかえたバッグはまだぺったんこ。

笠井はぜんぜん買わないで歩きまわる、
もうそういう人になってますね。

ギンガムチェックの服を着た中林は、
いいかげん「日山」を動け!
いっぽう、背中リボンの服を着た木下は、
「肉はひやかし、わたしはお魚まっしぐらです」
と猫のように言い残して去っていきました。

山根は「日山」のお弁当に決めたようです。

肉の焼き方をいきいきと指定する山根。

量り売り1496円の肉+504円のごはんとつけあわせで
焼肉弁当は2000円ピッタリのお会計。
さすが経理担当、おみごと。

この山根のようすを柱の影から
目を光らせて見ていた者がおりました。計画女篠田です。
フィニッシュにサラダを買うもよう。

「そのかけらをもうひとつ入れりゃ行くんじゃない?
 なになに、100グラム単位399円?
 それじゃ割り切れない。ちょうど2000円にならないよ」
相手にとってわけのわからんことを口走る篠田。

計画女篠田、1円のおつりの無念。

ここに来て聞き込みポリス松本と別れた
張り込みポリス武井が動きました!
「一回メニューが完成したんだけど、
 値段がオーバーしちゃったから、戻してもらってるところ」
篠田のような計画性は、食のポリスには皆無。

囲碁腕組みの佐藤は「知床鮨」で決!

山川も、すし派のようです。

「ねぇねぇ何買った?」
篠田はグラム数バトルの敗北を乗り越え、
肉女中林と戦利品を見せあいっこ。

趙もいいお買い物ができたようです。

「なだ万」というあこがれの名前にくらりときたアルバイトの北條。
みそ汁でその願いを叶えます。

田口は、地下鉄同盟のとおり、
素直に中華のお弁当にしたそうです。

いっぽう、同盟相手の奥野は何を‥‥?

「えぼし」と関わりたい一団、「えぼし」接近中。
どうやらメインは欲求を貫き、すし!
そして、「えぼし」との関わり部分はデザート分野に絞ったようです。

「なぜなら『えぼし』はデザートも名物だから!」

「関わり中、関わり中!」
‥‥そっとしておきましょう。

ここからカメラ係の西本、南郷、山下の3名が
買い物タイムに入ります。
12時までに会社に戻るルールですので
制限時間を確認し、若干焦っております。
これまでファインダーごしに観察した、
さまざまな潮流を読むのだ、いざ!

あらゆることを下調べして挑む男、西本が
ええい! と購入したのは「タキモト」の鯖の一本巻。
そうなの? ひとりでそれ食べるの?
すごい。ようかんみたい。

南郷は「えぼし」にしたのかな?


笠井! まだ! まだ買ってない!

‥‥あれ?

「見つかっちゃいました?」
山根はさきほど2000円ピッタリで焼肉弁当を買っていたはず‥‥。
「自腹です、自腹ジュース」

山根が自腹ジュースを飲むので。

みんな、買う買う。

おおい、そろそろ帰るぞ!

播口が、本日体調を崩し「イべんとう」に
参加できなかった乗組員・佐藤音也のために
お弁当を選んでいます。
ん? サンドイッチでサラダとメインとデザート?
フルコースを構成しようとしている‥‥?

最後の最後に、山下が
自分で写真を撮りながら買ったのは、これ。
山下「なんだかんだいって最後の最後に
   好物のマカロニサラダに走ってしまいました」

もういちど集合して、会社へ戻ります。
大丸さんのおふたりにも、ごあいさつ。
ありがとうございました!
たいへん、お騒がせしました!

田中さん「こちらこそ、ありがとうございました。
     みなさんの楽しそうな様子は、
     社内報で紹介させていただきたいです」
荒木さん「あんなに楽しそうな顔で選んでいただけると、
     ほんとうにうれしいですね。
     あの楽しそうな顔に応えるのが、
     われわれの仕事なんだと思います。
     ぜひまた、いらしてください」

ただいま。

それぞれのお弁当の写真を撮って。

宿題のPOPを書きます。
「お店屋さんごっこみたい〜」
「POPって、むずかしいね」

席に落ち着いたら、
隣近所のお弁当をチェック。
「蛸めしなんてあったの? やばい、なにそれ!」

自分弁当を睨めまわし。

「食うぜ!」
「いただきます!」

「おいしい!」

ニッコリ!

わ?! この人、すごい弁当だ。

「いける!」

早々に食べ終わった笠井は
お得意の「手ぶら」で見回り!

好きなものを目の前にしているせいか、
みんな、笑顔笑顔、いい笑顔。
それぞれがどんなお弁当を選んだのかは、
明日からのこのページでくわしくお伝えします。
おたのしみに。



2009-06-06-SAT



(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN