重松 | 俺、器用な方じゃないから、 ピーラーでどれだけ楽になったか! 料理のハードルが下がったよ。 野菜の皮むきがさ、これで済むんだもん。 |
飯島 | そうですよね。ニンジンの皮、 私は結構、包丁でむくんですけど、 アシスタントの子とかは ピーラーなんですよ。 |
重松 | そう。 |
飯島 | 包丁でもむけますよ? |
重松 | ううん、もう俺、 ピーラーなかったら何もできない。 |
── | ピーラー、速いですし。 |
重松 | 速いしね、 ハードルを低くするところは低くしてもらって、 尚かつ、深みに行くと幾らでも深い世界が 待ってるよっていうのが いちばんいいんじゃないかな。 |
飯島 | いいですね。私、さっきプレゼントに 千切りにできるピーラーを入れたんですけど、 普通の千切りにできるものは ちょっと刃が切れ味悪くて 押しつぶすみたいなのが多いんですよ。 いまいち、刃がちゃんとしてない。 私が買ったのは、直角に刃が付いてるピーラーで、 それでほんとにやるとニンジンとかが きれいな千切り、 包丁で切ったみたいな千切りになるんです。 だから味噌汁なんかに根菜を入れるとか、 いいですよ。 |
重松 | 昔に比べてやっぱりよくなったんじゃない、 いろんなものの段取りとかもさ。楽になってる。 楽しんで料理やると。 |
飯島 | はい。楽しんで料理やる。 |
重松 | すごい楽しいね。忙しいときはね、 俺は大抵電子レンジクッキングなわけよ。 でも、初めて趣味ができたんだ。 |
飯島 | はい。 |
重松 | 46年生きて初めての趣味なんだよ。 |
飯島 | 素晴らしいです。 |
重松 | 麻婆豆腐とかさ、作るわけじゃない。 いろんなスパイス足して。 でも、S&Bに負けてる(笑)。 |
── | 麻婆豆腐、いずれ『LIFE』でやりますんで 楽しみにしててください。 |
重松 | クックドゥとかに、 なにかプラスすればいいのかなとかさ。 |
飯島 | クックドゥは、かなり完成度高いですもんね。 |
重松 | 完成度高いよね。 鶏の唐揚げだってさ、 唐揚げ粉の持ってる完成度の高さって 大したもんだよなあ。 |
飯島 | 自分ではちょっと何か 物足りないものになったりするとき、 ありますもんね。 |
重松 | ひとわたりやってみたわけよ、 いろんな料理をね。 で、和食は諦めたの。 でも中華ならさ、わりと勢いで 持って行けるじゃない。 ところがどうも、せっかく作ったから 熱いうちに食ってほしいわけ、俺としては。 で、かみさんや娘にさ、 「さあ食え、さあ食え、何やってんだ、 早く食えよ」って言ったらね、 すごい嫌われてさ‥‥。 |
一同 | (笑)。 |
重松 | でね、ちょっとね。 |
飯島 | 分かります、その気持ちは。 |
重松 | 中華がアウトになってね、 最近はサラダというですね、 また1つの可能性を。 |
飯島 | ああ、女性も好きですし。 |
重松 | 俺の体にもいいし。 でね、今ね、アガーってあるじゃない、 ゼラチンみたいなの。 あれでね、ドレッシングを ゼリー寄せにして 食べたりとかしてるの。 |
飯島 | へえ、すごーい!! |
── | お洒落! |
重松 | いろいろとね。 |
飯島 | それは喜ばれてます? |
重松 | うん、わりとオッケー。 |
飯島 | よかった(笑)。 |
重松 | 鰹出汁を固めてみたりね。 |
── | 結構オリジナルですね。 |
重松 | そうだよ。 |
一同 | すごい、すごい。 |
重松 | こういうオヤジの悪いところはさ、 しばらくきっちりした 基本からやりゃいいのに、 途中から我流が入って来るところだ(笑)。 このまま謙虚に、謙虚に、 まさにレシピ通りにね、 謙虚にやってればいいのに、 途中でだいたいこんなもんだと、 足しちゃうんだ、余計なことを。 でも楽しいよ。 |
── | もし失敗しても、 次、またやればいいんですし。 |
飯島 | そうですよ。 |
重松 | 今日はね、トマトジュースをアガーで、 ぷるんとさせたのをつくってきたの。 もうそれだけで十分美味しいんだよ。 |
飯島 | おいしそう! |
重松 | とにかくね、俺ね、思った、 かっぱ橋って、来たらね、 興味がどんな方向に行っちゃうのかで、 その人のことが分かる気がしてきたよ。 |
飯島 | ああ。 |
重松 | だって、今、俺、しみじみね、 何で俺、「ひとり鍋」っていうものに こんなに激しく反応したんだろうと思うと、 もしかしたらね、心理的にさ、 いろんなものが分かるかもしんないじゃない? 看板とかね、あのサンプルに 興味が行ってしまう人もいるわけじゃない? なーんか「合羽橋占い」って できそうな気がするよ。 |
飯島 | ねえ、いいですね。 |
重松 | うん。 |
── | 興味の先、僕は包丁でした。 刃物、特に和の刃物。 あの世界、ちょっと知りたいなと。 |
重松 | 刃物に行っちゃうのはさ、 欲求不満があるんじゃないか? |
飯島 | ああ、ありそう。 |
── | そんな、言わないでください。 |
重松 | いや、でもほんとね、かっぱ橋は、 東京に出て来て28年で初めて歩いた、 楽しい魔界だね。 入り出すとね、ちょっと3日ぐらい、 居続けそうな気がする。 ほんとに。ありがとうございました。 |
飯島 | こちらこそ、ありがとうございました。 |
── | また何かご一緒させてください。 |
飯島 | ぜひー。 |
重松 | すごい楽しかったです。 |
一同 | ありがとうございました! (重松清さんと飯島奈美さんと歩く かっぱ橋道具街、これでおしまいです。 ちなみに、重松さんが「結婚した担当編集者に」と 買っていったのは、新幹線のかたちをした お子様ランチのプレートでしたよー) |
‥‥と『ほぼ日』にレポートしてもらいましたが、 新幹線のお子さまランチプレート、買ってはみたものの 「早く子どもをつくれ、という セクハラ発言になってしまうのではないか」と気づき、 思いなやんだすえに、お子さんが生まれたばかりの 担当編集者にプレゼントしました。 よって、新婚編集者へのプレゼントはまだ。 近々、また合羽橋に行ってきます。 自分のための一人用の鍋も、もちろん、狙います。 (重松清) |
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