その1256
ふいに耳から入ってきたそのことばは、
どう考えてもつじつまが合わなかった。
私は思わず、耳をうたがった。
うたがって、よかった。
だってそれは「聞きまつがい」だったのだ。
というわけで、行ってみましょう、
「聞きまつがい」特集。
あんなことばをそんなふうに、
こんなことばがあんな感じに、
じつに見事に変換されています。
どうぞ最後までごゆっくりお楽しみください。
先日、お客様に
「
『にんべんの、うに』
ありますか?」
と聞かれ、食品のマネージャーに
聞きに行ったところ、
もう一度詳しく聞いてきてと言われ、
再度聞いたら「任天堂のWii」でした。
「残念ながら売り切れです」と即答でした。
(おとぼけパート)
東西線の三鷹行きで。
席でウトウトしていたところ、どこかの駅に到着。
聞こえて来たアナウンスは、
「ポーツマス、ポーツマス」
おどろいて起きてみると、
そこは「大手町」でした。
(d)
友人との電話で。
「あした、
ワニ
が来るの」
「え、ワニ来るの?」
「兄」
‥‥そりゃそうだ。
(go)
夕方のニュースで、
富岡製糸場と絹産業遺産群が
「なんてことないリスト」
に入った、と言っていました。
ん? なんじゃそのリストは? と思ったら
世界文化遺産の「暫定国内リスト」でした。
(歳のせいじゃない)
会社で電話をとった時のことです。
よく電話のやり取りをしている
取引先方からの電話だったので、
「お世話になります」と言いながら、
○○さんか××さん宛かなと
思っていたら、相手が
「
妹様
お願いします」
いもうと? しかも、様??
一体どういうことかと
頭の中で色々考えてしまいましたが、
すぐに「山本様」宛だと気がつきました。
(妹さんとなら呼ばれたことのある次女)
ファーストフード店で
朝ごはんを食べていた時のこと。
隣に座っていたおじさんのところへ
注文の品を持ってきて、店員さんがひとこと。
「ご覧のとおりでございます」
確かに見りゃわかるんだろうけど
あまりにも不親切な‥‥
と思いつつチラッと隣を見たら、どうやら
「ブレンドコーヒーでございます」
と店員さんは言っていたようでした。
(ボソボソっと言うとちょっと似てるんですってば!)
何気なくテレビをつけると、
NHKの『趣味の園芸』を放送していました。
シチュー
がどうとか言っています。
久しぶりに雪の降った寒い日だったので、
「家庭菜園で作った野菜を
シチューに入れるんかあ。
あったかくていいなあ」
と思ったら、細い棒が映されました。
「支柱」でした‥‥。
(今夜はシチューにしよっと)
レポートに追い詰められて先輩に泣きつくと、
「そんなの、
リズム
で書けばいいじゃない」
と言われ、頭のいい人は言うことが違うと思い、
「ノリが大切なんですね!」
と言ったらきょとんとされました。
「理詰め」の聞きまつがいでした。
「まぁ、それも大切かもね」
って苦笑混じりにフォローされて
余計恥ずかしかったです。
(ゆら)
お肉屋さんから10メートルくらい離れた路上で、
「このへんの
お肉屋さん
を知りませんか?」
と尋ねられた。
「すぐそこにありますよ。
○△って名前で、そこに看板が見えるでしょ」
と、にこやかに教えてあげました。
しかし相手の人は、ぜんぜんわからない様子。
直線で、そこに見えてるのに‥‥と
何回かやり取りして、やっと、
「お肉屋さん」じゃなくて、
「お風呂屋さん」を探していることが判明。
(にくや)
映画『ブラックレイン』を見ながら、ぼくが
「この『渋さ』がたまんないよな」
と言うと、彼女が呆れた顔で
「なんで松田優作に
乳房
があるんよ?」
と言った。
なんじゃ、そりゃあ!?
(やぶきた)
テレビを見るともなしに見ていたら突然、
「悲しいおフランス」
という言葉が聞こえてきました。
いったい何? と思って
画面を見ましたが、わかりません。
夫に訊ねたら「魂をふるわす」だったとのこと。
(ぴよぴよ)
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イラスト:しりあがり寿
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2007-07-24-TUE
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN