その1277
すべての子どもたちは美しい名前を持っています。
ひとりずつ、ひとつ、かけがえのない名前を。
ああ、しかし、なんということでしょう。
その、燃える命ともいえる名前は、
しばしば、他者によって、あまりにもあっさりと
「まつがわれて」しまうのです。
お届けしましょう、「名前の言いまつがい」特集。
どんな名前がどんなふうに?
それは読んでのお楽しみ。
国定(くにさだ)さんという先輩がいます。
部の出席ノートに友達が大きな字で
「固定さん」と書いていました。
こていさん‥‥。
(か)
私の娘は「杏子」といいます。
彼女の祖父母(私の両親)が、
「享子」と書いてきたのは
まあ許しましょう。
もう一人の祖母(夫の母親)が
「呆子」と書きまつがってきたのは、
さすがにちょっと‥‥。
パーツはあっているんですけどね。
(賢い子を産んだと思っている母)
友人のお母様のお話です。
親戚の双子の兄弟の名前は、
「ひろき」くんと「もとき」くん。
しかし、彼女は自信を持って
もときとふゆき
 はやくおいで〜!」
と叫んだそうです。
(きのこ)
私の友人は「叶さん」ですが、
封筒に「汁」「叫」
よく書かれていたそうです。
じるさん、きょうさんって
一体何人!? という気分です。
(綾小路)
私の名前は「辻岡」といいますが、
うちの郵便受けには、
「述岡」「迷岡」
「途岡」などの
書きまつがいが届きます。
なかでも衝撃的だったのが、
「逃岡」でした。
(辻岡)
銀行に勤めていた先輩から聞きました。
「左井さん」という上司がいたそうです。
彼をたずねて来客が、
「シカさん、
 いらっしゃますか?」
受付嬢はすかさず笑顔で、
「サイならおりますが?」。
きっとお客様は、
「動物の名前」と覚えていたのでしょう。
受付嬢の瞬発力、さすがです。
(もも)
今から15年くらい前は
携帯電話が普及していませんでした。
当然、彼女に電話するのも家の電話です。
友人「井伊くん」が電話をかけたところ、
運悪くお父さんが出たそうです。
「どちら様?」と尋ねられたので、
「井伊です」と答えると
「名前も名乗れんヤツの電話は
 取り次ぐことはできん!」

と切られてしまったそうです。
(たっきー)
仕事で松村さん宛てにメモを書いた。
しばらくして、帰ってきた松村さんが叫んだ。
「また間違ってる〜!!」
すいませ〜んと謝りながらみると、そこには
「村村さん」と書いてあった。
またということは以前にもまつがえたのかな?
と思いながら聞くと、おもむろに
机の引出しからごっそりとメモを‥‥。
そこには多数の「村村さん」に混じって
「松松さん」も‥‥。
おもしろいものはコレクションしているらしい。
恐るべし松村さん‥‥。
(まるお)
元彼の名前は「たかあき」。
新彼の名前は「たかゆき」。
で、普通に名前を呼ぶ時に、
「たかあき〜」と、
名前をいいまつがってしまい
落ち込んでいる新彼に向かって、
もうまつがってはいけないと意識しながら、
謝ろうとして、
「ごめん。たかあき」
くっきりはっきり言ってしまいました。
(二度と名前では呼びません)
私は以前、外国のクライアントを持つ
法律事務所で勤務していました。
ある日、ジェームス・ハリスンさん
という方から弁護士宛に国際電話が入り、
英語があまり話せない私はかなり取り乱して、
ジョージ・ハリスン様
 からお電話です」
とつなぎ、キョトンとされてしまいました。
(天国からの電話)
以前実家で飼っていた柴犬のゴン太くん。
毎年、春に保健所から
予防接種のお知らせのハガキが届きます。
宛名には明朝体で
「ゴンター」って‥‥。
どこでどう間違えて「ター」って
伸びちゃったのか、未だに謎のままです。
(イタ)
どのような「言いまつがい」であろうとも
受け入れる私たちがいるということを
どうぞ思い出してください。
投稿のやり方などご説明いたしましょう。
まずは下の「投稿する」ボタンをクリック。
そこにメールのウインドーが立ち上がったなら、
ことのあらましを簡潔につづり、
できあがったところで送信ボタンを押してください。
なんと、それだけで、OKです!
『金の言いまつがい』と『銀の言いまつがい』
どうぞよろしくお願いします。

イラスト:しりあがり寿


2007-08-14-TUE
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© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN