その1354
すべての子どもたちは美しい名前を持っています。
ひとりずつ、ひとつ、かけがえのない名前を。
しかし、その燃える命ともいえる名前は、
しばしば他者によってあっさりと
「まつがわれて」しまうのです。
てなわけで「名前の言いまつがい」特集。
名前にまつわるさまざまな「言いまつがい」を
たっぷり集めてお届けいたします。
どうぞ、のんびりとお楽しみくださいませー。
学生時代、モテモテの友達が、
ちょっとこれ見て! と突き出した手紙。
あきらかにラブレターなのですが、
宛名が
「恥子様」
。
彼女の名前は「聡子」さんでした。
この恋は実らなかったようです。
(ハム抜け)
私の名前は「やすこ」ですが、
台湾人の知り合いには
「くそこ」
と間違われ、
カナダ人の知り合いには
「やくそ」
と呼ばれました。
やっぱりなんだか悲しい気持ちになりますね。
(やすこ)
私のボスは「買手屋(かいてや)」さんという、
ちょっと変わった苗字です。
プライベートや社外の人と電話していて
名前で「え?」と言われることはしょっちゅう。
そして「
こいけや
さん」と
まつがわれたりしています。
が、あるとき、社内での伝票に
カタカナで「
カイディア
様」と‥‥。
どこの国の人だと思われたのでしょうか。
そんなに大きな会社じゃないんだから、
社員同士でまつがえるなんて‥‥。
(おみつ)
以前、勤めていた施設で、
「初めてのボランティア講座」
というものの講師を担当したとき
受講者の皆様の前でご挨拶をしました。
「今日、この講座を担当いたしますのは、
ワタクシ○○と、助手の今泉さんです」
と言うところを、
「助手の
水戸泉
さんです」
と言ってしまった。場内は大爆笑。
あわてて言い直したけれど、
「あれでキンチョウが取れました」と
受講者の方に言われました。
(かりゆしまや)
OL時代、部長室付きの
秘書をしていた頃の話です。
若い営業さんが商品の売り込みのため、
部長に会いに来られました。
名刺交換をしてその営業さんが一言、
「
綿野
(わたの)部長!
お忙しい中時間を割いていただいて‥‥」
凍りつく部屋の中。
部長の名前は「錦野(にしきの)」です。
「そんなにグレードを下げるな〜!
売れる商品も売れなくなるぞー」
心の中で叫んだ一瞬でした。
(ミルク)
大学を卒業する時。
4年間を共に過ごした友人と
あらためて連絡先の交換などをする
機会が多かったのですが、
そのうちのひとりに「オンダくん」がいました。
在学中、彼を目の前に何度こう呼んだことか。
しかし実際どういう字を書くのかは知らなかった私。
多分「恩田くん」だろうなあ‥‥
と勝手に想像していました。
さて‥‥そんな彼が書いてくれた名前は‥‥
「本多」
でした。
‥‥え?‥‥ホンダ?
「オンダくん」今までゴメンなさい‥‥!
(チェリー)
もう20年近く前、
とある総合病院に行った時のこと。
当時、その病院では
診療科ごとに診察券が発行され、
診療科と患者の名前が
カタカナで印字されていました。
待合室に落ちていた診察券を拾ったおじいさん。
親切にも持ち主に返そうとしたのでしょう。
診察券をじっくり見た後、大きな声で
「
ジビインコ
さ〜ん!」
笑いをこらえていたのは私だけではなかったはず。
おじいさん、それは「耳鼻咽喉科」のことよ〜!
(受付に渡せばよかったのに‥‥)
先輩の○○さん宛に、
少しドスのきいた声の主から
電話がかかってきました。
「○○おりますか?」
「あいにく席を外しております。
あとで掛けなおさせます。
失礼ですが、どちらさまですか?」
「あにだと言えばわかります」
「
あにだ様
ですね」
「‥‥いえ、あにです」
そう言えば兄貴がいるって言ってたなぁ。
(まいまい)
私の友人は、まだ小さな自分の子供を
呼ぼうとしてまつがえ、
その時一緒に出かけていた
アメリカ人の名前で呼んでしまいました。
「ジョン、ジョン、
おいでジョン!」
ジョンはただ笑っていましたが、
同行の日本人たちは一様に
「犬‥‥?」とひそかに思ったのでした。
(ジョン元気?)
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イラスト:しりあがり寿
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2007-10-30-TUE
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN