その1589

んん? 「まつがって」‥‥る?
いや? 「まつがって」‥‥ない?
なんともいえぬ、微妙なおかしみの境地。
「まつがって」いないんだけれども、
「まつがって」いるような、おかしなことば。
そういった曖昧な領域を楽しんでください。
名づけて、「まつがってない」特集。
日本語って、おもしろいですねー。
接客業をしていると、
いろんなお客さまに出会います。
今日うちのラーメン屋にいらした
物腰の柔らかい上品な感じのおばさま、
ゆったりと椅子に座ると、
わたしに向かって微笑みかけながら
おしょうゆラーメン
 くださいな」と。
‥‥まつがっているわけでは
ないのかもしれないけれど、
「お醤油」といわれると‥‥。
笑いをこらえながら
「しょ、しょうゆラーメンですね!」と確認しました。
(おラーメン娘)
地方の遊園地に遊びに行った時のこと。
平日だったせいか、暇そうな従業員に
「お姉ちゃんコレ乗ってかない?」
と声をかけられるほどのガラガラ具合。
お化け屋敷の前でも呼び込みされたので、
「私、怖いの苦手なんでー」
と通り過ぎようとしたら
「大丈夫、
 これ全然怖くないから!」
おっちゃん、それはダメだろう‥‥。
(絶叫マシンは大好物)
クイズ番組を見ていたら、
「『星に願いを』が主題歌の
 ディズニーアニメは?」
という問題が出たので、自信たっぷりに
「そりゃピノキオでしょ、
 だって願う話だもん、
 『早く人間になりた〜い』って!」
と言ったら、主人に、
「‥‥間違ってないけど、
 何か違う方向行ったね」と笑われた。
(おいら怪しいもんじゃないよ!)
愛犬家の方々は、飼い主さんのことを
「○○ちゃんのお母さん」などと呼びます。
(例:ブイヨンちゃんのお父さん=糸井さん)
先日、母の代打で
愛犬ブランの散歩に行ったところ、
近所の公園にたくさんのわんちゃんがいました。
その飼い主さんたちが、うちの犬を見るなり
「ブランちゃん?」と話しかけてきたので、私が
「そうです。いつもは母なんですけどね」と言うと、
飼い主さんは口々に
「あら、ブランちゃんのお嬢さん!
「まー、ブランちゃんのお嬢さんですって!」
と盛り上がってました。
(ブランちゃんのお母さんのお嬢さん)
結婚式の前、控え室で
親族どうしの挨拶がありました。
私の両親ともきょうだいが多くて、
おじおばがたくさん出席してくれたのですが、
夫の親戚はとても少なく、アンバランスでした。
夫側に続いてうちの親族の紹介が始まりました。
なかなか終わりません。時間もおしています。
全員に焦りが見えはじめました。
するとみんな、紹介されるのを待たずに
つぎつぎと一人ずつ立って、
「おじです」
「おばです」
「おじです」
「おばです」
「おじです」
「おばです」
「おじです」
「おばです」
以下略‥‥
とやりはじめました。
いや、何もまつがってないけど。
ほら、もうちょっとなんか‥‥あるでしょうよ!
(ノリピー)
たまに行く耳鼻咽喉科の、受付のおねえさん。
色白でキレイで、物腰がたおやかで
受付嬢としては申し分ない。
‥‥だが、かわいい声で
「今日はどうされました?」と尋ねたあと、
「あの、鼻水が‥‥」と答えると、必ず、
青っパナですか?
 水っパナですか?」と
ぴしゃりと質問してくる。
別にまつがったこと言ってないんでしょうけど、
もっと別の言い回しとかないんでしょうか‥‥。
(青っ洟水っ洟)
数年前、腎臓を悪くして
入院していた父に様子を尋ねたら、
とにかく退屈しているらしくて、
「こんなところにいたら
 病気になっちゃうよ」
と返事が。
その強気が今の長生きに
つながっているんでしょうね。
(父は77歳)
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イラスト:しりあがり寿


2008-06-21-SAT
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© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN