その1718
甲と乙があって、ふたりが話すとしよう。
甲は乙の話を早合点し、
乙は甲の言葉を違う意味に受け取った。
すると当然、両者の会話は成り立たないのだが、
破綻はすぐさま現れるわけではなく、
いくつかの言葉は偶然に
そのまま交わされたりもする。
それがすなわち「かみ合わない会話」である。
いったいどこでどんなふうに
会話がかみ合わなくなっていくのか。
見定めながら読むもまた一興。
最後まで、のんびりお読みくださいませ。
大型の冷蔵庫を買った時です。
店員さんが「配達はシナイですね」と言った。
私、驚いて「いえ配達してください」と。
頭の中では冷蔵庫をここから
どーやって運ぶの? と焦っていた。
私、気付きました。
「配達は市内ですね」と言ったことを。
(力持ちのみっちゃん)
兄の家はオール電化です。
ある日、夫が
「お義兄さんち、電気?」と訊くので、
私は「そうやで」と答えました。
すると、
「○子姉さんも(義姉の名前)電気?」と。
(‥‥へ?)なんで別々?
しばし答えに窮す私。するとまた
「こどもたちもみんな電気?」
(えーっ、なんのこと?)
私の頭はパニックに。
「えっ、なんのこと?
 あの家はオール電化やけど!」
どうやらそんなにひんぱんに
兄家族と会っていない夫は、
「おにいさんち、みんな元気?」
と私に訊いていたのでした。
(うちはガスストーブ)
当時、彼氏だった主人の家に遊びに行った時のこと。
彼氏のお母さんが買い物に出掛け、
彼氏がトイレに行っている間、電話が鳴りました。
よせばいいのに、用件だけでも、と電話を取った私。
「はい、○○です。」
「あ、ウラノ ヤスミツですが‥‥」
「あ、今、家の者が出掛けておりまして、
 すぐ戻ってきますので‥‥。
 失礼ですが、もう一度お名前を‥‥」
「ウラノ ヤスミツです」
「ウラノさんですね。伝えます」
「? ええと、ヤスミツですが‥‥」
「はい、ウラノヤスミツさんですよね?」
という会話が続き、
わけが判らないまま、電話を切るハメに。
お母さんがすぐ帰宅したので、
電話の内容を報告すると、大爆笑。
訳が判らず、ポカンとする私。
「ウラノさんじゃなくて、
 うちの裏の、安光さん!」と、お母さん。
そのとき、裏口を叩く人が。
安光さん、当人でした。3人で大爆笑!
長いトイレから戻った彼氏が変な顔してたっけ。
(のむ)
休憩室に柿が置いてあった。
K「へ〜! これ52糖度だって〜」
S「ええっ! あまっ!」
K「え‥‥あまい? あまいかなぁ?」
M「52糖度って‥‥」
K「うん、ご自由にどうぞ〜。
  もらっていいかなぁ」
そこにいた全員が、「52糖度」としか聞こえず、
一瞬口の中が妙に甘い感じになりました。
(超〜甘柿)
今日、母と買い物に行き、
コートを買ってもらいました。
赤いコートとグレーのコートがあり、
私は赤にひかれたのですが、
店員さんも母も「絶対グレー」と言うので
結局グレーに。
とても満足して帰り道興奮気味に母に
「店員さんも『断固グレー!』って
 感じだったよね!」
と言うと母は
「だんこぐれー?」
となんだか腑に落ちない様子。
だってホントに
「断固グレー」って感じだったのに‥‥
と不思議に思いながら
同じような問答を3回ほど続けたところで
母はやっとわかってくれました。
母は私がずっと
「ダン・小暮」
と言ってると思ってたらしく
「誰だソレ?」と思ってたみたいです。
そんなファッションアドバイザー
いそうですよね。確かに。
(あっこ)
ある日の夕方。
息子「僕、今日、版画で褒められた!」
主人「え?」
息子「今日学校で、版画で褒められたの!」
主人「え?」
息子「版画! クラスで一番上手だって
   見本にされたんだよ」
主人「‥‥ああ!
   『カンガルーに踏まれた』
   って言うから何事かと思った」
(上野駅のうえの)
どのような「まつがい」でも
私たちは幅広く受け入れる用意があるのです。
理由は「なんとなく」でもかまいません。
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『金の言いまつがい』と『銀の言いまつがい』
秋の夜長にぜひクスクスどうぞ。

イラスト:しりあがり寿


2008-10-28-TUE
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© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN