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俺と言いまつがい

『言いまつがい』の本では、
みなさまから寄せられたネタを
47のジャンルに分けて掲載しています。
このコーナーでは、
いち早く『言いまつがい』に目を通し
ひとしきり笑い転げた「ほぼ日」乗組員が、
各自おすすめのジャンルについて
勝手に熱心に語っていきます。



本日の担当:永田
我が愛しの「逆転現象」

栄えある第1回目を
担当させていただきます、永田です。
あまたの傑作がそろう『言いまつがい』のなかで、
とりわけ僕が好むのは
「逆転現象」と呼ばれるジャンルです。
そこを読むたび、ついつい吹き出してしまいます。
百聞は一見に如かず。
具体的にいうと、そこにはこういうネタが並んでいます。

旅行の打ち合わせをしていたとき、友達が
「モライヤーどってく?」
急に口走りました。
(ノリン)

いいなあ、これ。味わい深いなあ。
野暮を承知で解説いたしますと、
その友達は「ドライヤーもってく?」と
言いたかったわけです。
ところが「ドライヤー」の「ド」と
「もってく」の「も」が入れ替わってしまったわけです。
否、入れ替えてしまったというべきでしょう。

僕がこれをひどく好むのは、
発言のなかに「脳内の自分勝手な補完」
垣間見ることができるからです。

だって、「モライヤー」の時点で
すでに発言は間違えていて、
それはもう、取り返しがつかないのです。
ところが発言者は、
まるでその誤りを補正するかのように「どってく」と続け、
単純なミスをワンランク上の
複雑かつ上級なミスに仕上げているのです。
失われし「ド」を「も」と入れ替えることによって、
混乱する世界の帳尻を合わせようとしているのです。
恥の上塗りとはこのことです。
つまりこれは、たんに口が滑ったような、
単純な構造からなる「言いまつがい」ではなく、
「知性ある言いまつがい」と呼ぶことが可能です。

同じ意味で、「パツとシャンツ」にも、
「ヨールデンごうが劇場」にも知性を感じます。
そういった「言いまつがい」がずらりと並んでいる
「逆転現象」というジャンルが、
僕はとても好きなのです。
本を手にする機会がありましたら、
ぜひ126ページあたりを読んでみてください。

以上を持ちまして、
僕の個人的なお薦めとさせていただきます。
ごりがとうあざいました。
されでは、そようなら。


2004-02-03-TUE
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