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ええと、ここに、
祖父江さんがデザインした最近の本を
いくつか持ってきたんですけど、
やっぱりそれぞれに特長があって。
ちょっとご本人に
解説していただこうかなと。
まず、宮藤官九郎さんの
『私のワインは体から出て来るの』。 |
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祖父江 |
これ、ちょっと失敗しちゃったんですよ。 |
糸井 |
それは? |
祖父江 |
この背表紙の窓のところに
ワインが見えてるんですけど‥‥。 |
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祖父江 |
ほんとうは、本をこう開くと、
「かんぱ~い! ちゅっ!」って、
なる予定だったんですよ。 |
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しりあがり |
はっはっはっは。 |
祖父江 |
ところが、
表紙スジ押しがうまくいってないのと
背ノリの硬さがうまくいってなくて
失敗しちゃった(笑)。
これから第2弾『おぬしの体から
ワインが出て来るが良かろう』
をつくるんで
そっちでは必ず成功させます。 |
糸井 |
ところで、この絵は、もしかしたら? |
祖父江 |
ええ、しりあがりさんの絵でございます。 |
糸井 |
これ、妙に似てるね~(笑)。 |
しりあがり |
たしか2案ほど描いたんだよね。 |
祖父江 |
うん。クセの強い絵のほうで
いっちゃいました。
第2弾では「文豪でいこう」
ってことになってます。 |
しりあがり |
あ、文豪か。へぇ~。 |
祖父江 |
そのうち依頼します(笑)。 |
── |
続きましては、しりあがりさんの本で、
『瀕死のエッセイスト』。 |
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糸井 |
あ、これは、ある意味、
正統的に見えます。 |
祖父江 |
正統です。うん。
ぼくはいつだって正統ですもの。 |
糸井 |
そ、そうですよね。 |
祖父江 |
うん、そうです‥‥よ?
‥‥ね? |
一同 |
(笑) |
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解説していただけますか。 |
祖父江 |
はい、では透明のカバーをはずしま~す。
そしてそして~。
本体の、この白い部分が包帯なのね。 |
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このスタンプはどうやって? |
祖父江 |
これ、面倒だったらしいんです。
おばさまがたが、手押しでやってるの。
すごいでしょ。 |
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手押し?! ぜんぶ? |
祖父江 |
うん。ピタン! ピタン! って、
製本のあとで押してもらった。
それで、スタンプ押したあとに、
1冊ずつ骸骨の絵を空押しして。 |
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しりあがり |
あー、そっかそっか。 |
祖父江 |
で、この透明のカバーをかけると、
あら不思議!
空押しの骸骨と、
カバーに印刷された人物が
重なってるじゃあ、あ~りませんか!
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しりあがり |
ぬははははは。 |
糸井 |
ププッ。 |
祖父江 |
あとね、主人公はね、
体がボロボロなんですよ。
過去の体とか想いとかを
引きずっている人なんです。
だからね、ほら、これ。
わかります!? |
糸井 |
んん? ページの端が上に? |
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祖父江 |
これね、まえのページの最後の部分が、
つぎのページの頭に少し出てるんです。
つまり、過去を引きずってるんですよ~。 |
しりあがり |
あははははは‥‥。 |
糸井 |
あはははは‥‥。 |
祖父江 |
ぶへへへへへへへ。 |
── |
あ、ぜんぶのページがそうなってる。 |
祖父江 |
そう。全ページ過去を
引きずりながら進むんです。 |
糸井 |
引きずってるねぇ‥‥。
知らなかったわ、これ。 |
しりあがり |
「乱丁じゃありません!」
って言ってたよね(笑)。 |
祖父江 |
えへへへへへへ。
それでね、まだあるんですよ~。 |
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まだあるんですか。 |
祖父江 |
最後に田口ランディさんの
解説があるんですけど、
その部分はこうなってるんです! |
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祖父江 |
これ、過去じゃないんです。
‥‥未来! が見えてるんですよね~。 |
しりあがり |
ああ! そこまでは知らなかった(笑)! |
祖父江 |
ぶへへへへへへへ。
でも、説明しちゃうと、
なんとなくね、恥ずかしいね。 |
しりあがり |
いえいえいえいえ。
でも、あ~、なるほどねぇ。 |
祖父江 |
過去を引きずる本文と、
未来が見える解説!! |
糸井 |
変わってるわぁ‥‥。 |
しりあがり |
なんでそんなつぎからつぎへと
アイデアが出てくんのかねぇ? |
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つぎの本の解説をお願いします。 |
祖父江 |
え~? もういいよー。 |