『言いまつがい』装丁伝説!
あのへんな本をつくった人たち。
祖父江慎×しりあがり寿×糸井重里

第15回 祖父江慎びっくり装丁解説その2

── 続いてもしりあがりさんの本で、
『ア○ス』
 
糸井 『ア○ス』って、これ、
「アス」って読んでいいんですか?
しりあがり いちおう、「アマルス」って
いってんですけどねぇ。
祖父江 ぼくは「アス」って読んでるかな。
糸井 どーしても、ぼくは頭ん中で
「アヌス、アヌス」と(笑)。
しりあがり もう、なんでもいいです(笑)。
糸井 そうじゃないってわかってんだけど、
心の中では「アヌス」と。
── アヌスの話はいいですから、
解説をお願いします。
祖父江 タイトルが読めないってのが
すごいですね。
糸井 まず、この、表紙の穴に
呆れてしまいますけど。
祖父江 この穴の裏から、こう、
赤いのが、ホワ~ンて感じで
見えてて、いいでしょ?
 
糸井 そうそうそうそう。
祖父江 カバー裏に印刷した赤色インキが
反射して見えるんですよ。
これ、「手の平を太陽に~♪」って
歌いながらつくったんだ。
 
しりあがり え? そういう感じだったの?
── あ、手を日にかざしたときの、
微妙な赤い色だ。まぶたとかの。
祖父江 そうそうそう。
「生きてるんだ」って
自分に言いきかせながら。
で、なかのほうはね、
じつは、催眠術がしかけてあるんです!!
しりあがり え、そうなの?
祖父江 あ、知らなかった?
しりあがり 知らなかった。
── 「知らなかった」って‥‥。
祖父江 これはね、じつはね、本をこう、
パラパラパラッてめくっていくと、
だんだん目が回ってくるように
なってるんですよ。
ぶへへへへへへへ。
一同 ?????
祖父江 それはなぜかというと、
版面(※はんづら。印刷の境界部分)
の位置が、ページごとに、
ちょっとずつ回転するように
ずれているんですよ。
しりあがり えっ!?
祖父江 偶数ページ(右)は時計回り。
奇数ページ(左)は逆回り。
えへへへへへ。
一同 ええ? え?
祖父江 (なぜか裏声で)
じゃあ、まず、こちらのページを
ご覧くださぁ~い!
ハイ、右に回りまぁ~す!
 
 
一同 ああっ! ほんとだ!
祖父江 でしょう? で、対向のページは、
ちょっとずつ遅れて左に回るんですよ。
うまくめくらないと
わかんないかもしれないけど。
時間差で回ってるんです。
それで、読んでいくうちに、
クラクラとめまいがしてくるんですよぉ~。
一同 (驚愕)
糸井 ‥‥知ってた?
しりあがり ‥‥知らなかった(笑)。
なんか歪んでるなとは思ったけど、
回転してたのかー。まいった。
── しりあがりさんも
知らないっていうのは、
どういうことなんですか?
糸井 ほかに誰が知ってたの?
祖父江 んん? 知らなくても
なんだかめまいを
起こしてくれる人がいれば
‥‥いいのでは?
── すごい話だなあ。
祖父江 あと、ですね‥‥。
一同 まだあるの?!
祖父江 この本、とりあえず、各回の扉の、
この四角い部分にタイトルがあるんです。
一同 ほうほう。
祖父江 で、そのタイトルは、じつは、
四角のなかをはじから
埋めるようにして並んでるんですよ。
最初がここで終わるでしょ?
すると、つぎのタイトルはここから始まる。
 
一同 はあ、はあ、はあ。
祖父江

だんだんと後ろいきますよぉ。
あ、いま、ここまできました。
つぎは、ここにきました。
だんだん最後に行くにしたがって、
四角の最後のほうにタイトルが来ます。

 
 
糸井 そうか、ここの四角を、
文字がぜんぶ埋めているわけだね。
祖父江 そうなんですよぉ~。
そしてね、タイトルのなかに、
ところどころ太い文字があるでしょう?
一同 んんん?
祖父江 ほら、ここ。
糸井 あ、ほんとだ。
祖父江 で、このタイトルをぜんぶ四角に
重ねたとすると、じつは、太い文字が
ぐるっと、まぁるく、
並ぶようになってるんですよぉ。
しりあがり うぅううわぁぁああ!
祖父江 ぐふふへへへへ~。
糸井 ‥‥‥‥。
しりあがり それは知らなかった~。
ええっ? すごいねぇ。
── それは、あの、なんで‥‥?
祖父江 主人公の女の子が
精神的な病におかされてたから、
ぼくもそんな状態で
作業しなきゃって思って。
で、とりあえずは、安易だけど
数値の世界に身をゆだねて
考えないようにしてつくったんです。
だから、数の神さまとかに
訊いてもらわないきゃ
ぼくにだって、わかんない。
糸井 装丁したのは誰だ!
祖父江 ‥‥誰だー!!??
ふへへへへへへ~。
しりあがり 祖父江、あんまり寝てないでしょ。
祖父江 ううん。ほどほどに寝てる~。
(‥‥つ、続きます)

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2004-03-24-WED
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