…ま、それも「学校」の話。伊集院光✕糸井重里 …ま、それも「学校」の話。伊集院光✕糸井重里
面白くて笑ってばかりだったんですけど、
伊集院光さんと糸井重里の対談があったんです。
公開対談でね、そう、「ほぼ日の學校」の!

テーマが一応「学校」なんですけど、
関係なさそうな話がどんどん出てくるんです。
円楽師匠の話や『粗忽長屋』の話になったり、
伊集院さんの奥さんと糸井の共通点が語られたり、
謎の旅の話をしたり、窓ガラスに鳥がぶつかったり、
だいぶ下品なたとえ話が登場したり。
‥‥でもふと気づくと、いつのまにかそれが
「学校」や「学び」の話にもなっていて。

ふたりが掛け合わさると、こんなふうに話が
広がっていくんだ!という驚きのある全15回。
ま、どうぞ、ごらんください。
12.思い出の‥‥結婚式。
写真
伊集院
僕はラジオの生放送で喋るのって、
「編集してないから正直だな」と
思ってたんです。


だけど永六輔さんが、
「もう『喋る』っていう時点で、
編集をしてるんだよ」って。


ほんとはみんながいろんな表情をしてるのに、
おおむね笑ってるからって
「みんな笑ってますね」って言った段階で、
それ以外のちょっとした違いみたいなことは
全部捨ててるわけだから。
糸井
そうですね。
伊集院
永さんがすごいのは
「だから会うことに価値がある」
って話をしてて。
糸井
ああ、いいですね。
伊集院
結局、文章にしようが、言葉を生で喋ろうが、
もう編集をしているんです。


そこでとりあえず、
ひとまとめで「笑ってるねぇ!」と
言ってることについて、
「そうじゃないなにかを全部切り捨てて編集してる」
という自覚がないのはよくないよって。
糸井
やっぱり僕らも、
「これは言っていいのかな、どうかな」
ってときには、
「言っていいのかな、どうかな」を
言いながら喋るようにしてますから。
伊集院
たしかに糸井さんはしてますね。してます。
糸井
これが長い「ま、」なんですよね。
伊集院
いや、そこ、ほんとに思うわ。


いまはもうAIがすごくて、
ラジオの文字起こしをしてくれて、
さらに短くまとめるところまで
やってくれるアプリがあるんです。


だけどラジオなんて「ま、」の連続じゃないですか。
「この時間だから俺思い切り言っちゃうけどさ」とか
「誤解を恐れずに言うけどさ」
みたいなこと連続を、全部切るっていう。


それ全部切った感じって、ヤバいですね。
写真
糸井
たぶんおおもとは、
「メディアに料金がついてるから」
だと思うんですよ。


つまり新聞記事だったら、
いろいろ取材したものを
「この小さなスペースに入れなきゃならない」
といった事態が生じるわけで。


言ってみれば、そこのスペースが
不動産価値を持っているわけです。


それで、
「お前長いよ、切れよ」と言われて
たった5行にするみたいなことをやるんですけど、
「じゃ何を言うの?」は限られるから、
「人が価値だと認めてること」を入れますよね。
伊集院
ああ、なるほど。
糸井
で、それ、5行が50行になったら
もっと入れられるわけだけど、
インターネットが出たときに、
「無限に書いていいよ」ってなったんですよね。


で、今度はそれが
「時間」の価値に置き換えられるようになって、
「すぐ読めないものはダメ」となって。
伊集院
ああー。
糸井
また「何を先に出さなきゃいけない」みたいなことで、
さまざまな表現が淘汰されて、
どんどんつまんなくなってく、という。
伊集院
こういうAIの話で、
これは自分の反省にもなるんだけど、
とかくおじさんになってくると、
「だから新しいテクノロジーはダメ」
って話になるじゃないですか。


だけど大事なのは、
「AIなんてダメだよ、新しいのダメだよ」
じゃなくて、
新たなる「ま、」の発明だと思うんです。


そこで、両方を兼ね備えてる正しいものとして、
「ま、」は一文字足すだけで
これぐらいの豊かさがあるんだ、
っていう新しいAIを作っていかないと。


単純に「AIなんてダメだ」と
放棄してしまって、
「古いのでいいや」って世の中もイヤなんです。
糸井
イヤです、イヤです。
写真
伊集院
だから、そこを上手にできて
「あ、ここがこうフォローできた上に
新しい、効率もいい」ってなったときに、
なんかすごく快感ありませんか。
「あ、面白いことできた!」っていう。
糸井
やっぱりそれには、
さっきの「しゃあないやん」って部分を、
認めていくというか。


新しい技術にしても、お目こぼしがあって、
「誰が被害を受けたの?」っていうのを
上から見てよーく考えるみたいなことを
同時にやれていれば、
なるべくルールはないほうがいいと思うし。
伊集院
すごく思うのは、
こういう話してると、だいたい最終的に
「AIは怖いね、そんな世の中やだね」
で終わるんです。


だけど僕は
「いや、もっともっともっと
AIが進化してくれればいい」と思うんです。
そこの大事さみたいなものも
ちゃんと学習してくれるんならよくて。


ただ、いまのままのAIが検閲を進めていくと、
毒蝮(三太夫)さんが言うところの
「ババア、ボケてんなぁ。
せっかくボケたんなら寿命忘れちゃえよ」
っていうのは、
たぶんいまのAIだと「誹謗中傷」?
会場
(笑)
伊集院
構成してる単語が、ほぼ誹謗中傷だから。


でも、だからダメではなくて、
AIを考える人が、
「なるほど、日本語にはこういうパターンの
元気づけ方があるんだ」まで網羅してくれれば。
僕はどんどん行ってほしくて。


それを手前の段階で、
「いやダメダメ、機械がそんなことできるわけない」
と思うのはやっぱり違ってて。
糸井
そうですね。行くでしょうね。
伊集院
昔、ラジオに初めて出てくれた糸井さんが
言ったことで、
俺ずっと覚えてる話があるんですよ。
インターネットが出てきたころ、
「インターネットは怖い」って話が
いっぱい言われてたときの話ですけど。
糸井
ええ。
伊集院
「伊集院くん、仮にね、結婚式の最後に、
ウェディングケーキの上に
うんこしちゃったやつがいるとするじゃん?」
っていう。
会場
(笑)
写真
伊集院
「そうすると、みんな
途中のスピーチとか全部忘れて、
『ありゃ最悪の結婚式だったな』
って言うじゃない?」って言うのね。


「それは違ってない?」
っていう話。
今日のうずまきの話にもちょっと近い。
糸井
近いですね(笑)。
伊集院
つまり、なにか衝撃的なひとつのことで、
完全に否定するのはちょっと違ってて。


「途中のことをちゃんと、
『これとこれは正しい』とかって、
拾い出しとかなきゃダメだよ」
ってことだと思うんですけど。
糸井
あ、そう言いましたか(笑)。
伊集院
そう言いました。


ただ面食らったのは、その、
生放送でいきなり
「ウェディングケーキの上に、
うんこしちゃったやついるとするじゃん?」
っていう架空の設定が、あまりにぶっ飛んでて、
どうしようかと思いました。
会場
(笑)
糸井
いや、結婚式に出てるときに思ったんですよ、
「それがあったら、おしまいだな」って。
一生「思い出のうんこ結婚式」になっちゃう。
伊集院
なっちゃいますね。
「ああ、あのうんこの?」って、
みんな言うようになっちゃうから。
会場
(笑)
(つづきます)
2024-02-11-SUN