面白くて笑ってばかりだったんですけど、
伊集院光さんと糸井重里の対談があったんです。
公開対談でね、そう、
「ほぼ日の學校」の!
テーマが一応「学校」なんですけど、
関係なさそうな話がどんどん出てくるんです。
円楽師匠の話や『粗忽長屋』の話になったり、
伊集院さんの奥さんと糸井の共通点が語られたり、
謎の旅の話をしたり、窓ガラスに鳥がぶつかったり、
だいぶ下品なたとえ話が登場したり。
‥‥でもふと気づくと、いつのまにかそれが
「学校」や「学び」の話にもなっていて。
ふたりが掛け合わさると、こんなふうに話が
広がっていくんだ!という驚きのある全15回。
ま、どうぞ、ごらんください。
- 伊集院
- 僕はラジオの生放送で喋るのって、
「編集してないから正直だな」と
思ってたんです。
だけど永六輔さんが、
「もう『喋る』っていう時点で、
編集をしてるんだよ」って。
ほんとはみんながいろんな表情をしてるのに、
おおむね笑ってるからって
「みんな笑ってますね」って言った段階で、
それ以外のちょっとした違いみたいなことは
全部捨ててるわけだから。
- 糸井
- そうですね。
- 伊集院
- 永さんがすごいのは
「だから会うことに価値がある」
って話をしてて。
- 糸井
- ああ、いいですね。
- 伊集院
- 結局、文章にしようが、言葉を生で喋ろうが、
もう編集をしているんです。
そこでとりあえず、
ひとまとめで「笑ってるねぇ!」と
言ってることについて、
「そうじゃないなにかを全部切り捨てて編集してる」
という自覚がないのはよくないよって。
- 糸井
- やっぱり僕らも、
「これは言っていいのかな、どうかな」
ってときには、
「言っていいのかな、どうかな」を
言いながら喋るようにしてますから。
- 伊集院
- たしかに糸井さんはしてますね。してます。
- 糸井
- これが長い「ま、」なんですよね。
- 伊集院
- いや、そこ、ほんとに思うわ。
いまはもうAIがすごくて、
ラジオの文字起こしをしてくれて、
さらに短くまとめるところまで
やってくれるアプリがあるんです。
だけどラジオなんて「ま、」の連続じゃないですか。
「この時間だから俺思い切り言っちゃうけどさ」とか
「誤解を恐れずに言うけどさ」
みたいなこと連続を、全部切るっていう。
それ全部切った感じって、ヤバいですね。
- 糸井
- たぶんおおもとは、
「メディアに料金がついてるから」
だと思うんですよ。
つまり新聞記事だったら、
いろいろ取材したものを
「この小さなスペースに入れなきゃならない」
といった事態が生じるわけで。
言ってみれば、そこのスペースが
不動産価値を持っているわけです。
それで、
「お前長いよ、切れよ」と言われて
たった5行にするみたいなことをやるんですけど、
「じゃ何を言うの?」は限られるから、
「人が価値だと認めてること」を入れますよね。
- 伊集院
- ああ、なるほど。
- 糸井
- で、それ、5行が50行になったら
もっと入れられるわけだけど、
インターネットが出たときに、
「無限に書いていいよ」ってなったんですよね。
で、今度はそれが
「時間」の価値に置き換えられるようになって、
「すぐ読めないものはダメ」となって。
- 伊集院
- ああー。
- 糸井
- また「何を先に出さなきゃいけない」みたいなことで、
さまざまな表現が淘汰されて、
どんどんつまんなくなってく、という。
- 伊集院
- こういうAIの話で、
これは自分の反省にもなるんだけど、
とかくおじさんになってくると、
「だから新しいテクノロジーはダメ」
って話になるじゃないですか。
だけど大事なのは、
「AIなんてダメだよ、新しいのダメだよ」
じゃなくて、
新たなる「ま、」の発明だと思うんです。
そこで、両方を兼ね備えてる正しいものとして、
「ま、」は一文字足すだけで
これぐらいの豊かさがあるんだ、
っていう新しいAIを作っていかないと。
単純に「AIなんてダメだ」と
放棄してしまって、
「古いのでいいや」って世の中もイヤなんです。
- 糸井
- イヤです、イヤです。
- 伊集院
- だから、そこを上手にできて
「あ、ここがこうフォローできた上に
新しい、効率もいい」ってなったときに、
なんかすごく快感ありませんか。
「あ、面白いことできた!」っていう。
- 糸井
- やっぱりそれには、
さっきの「しゃあないやん」って部分を、
認めていくというか。
新しい技術にしても、お目こぼしがあって、
「誰が被害を受けたの?」っていうのを
上から見てよーく考えるみたいなことを
同時にやれていれば、
なるべくルールはないほうがいいと思うし。
- 伊集院
- すごく思うのは、
こういう話してると、だいたい最終的に
「AIは怖いね、そんな世の中やだね」
で終わるんです。
だけど僕は
「いや、もっともっともっと
AIが進化してくれればいい」と思うんです。
そこの大事さみたいなものも
ちゃんと学習してくれるんならよくて。
ただ、いまのままのAIが検閲を進めていくと、
毒蝮(三太夫)さんが言うところの
「ババア、ボケてんなぁ。
せっかくボケたんなら寿命忘れちゃえよ」
っていうのは、
たぶんいまのAIだと「誹謗中傷」?
- 会場
- (笑)
- 伊集院
- 構成してる単語が、ほぼ誹謗中傷だから。
でも、だからダメではなくて、
AIを考える人が、
「なるほど、日本語にはこういうパターンの
元気づけ方があるんだ」まで網羅してくれれば。
僕はどんどん行ってほしくて。
それを手前の段階で、
「いやダメダメ、機械がそんなことできるわけない」
と思うのはやっぱり違ってて。
- 糸井
- そうですね。行くでしょうね。
- 伊集院
- 昔、ラジオに初めて出てくれた糸井さんが
言ったことで、
俺ずっと覚えてる話があるんですよ。
インターネットが出てきたころ、
「インターネットは怖い」って話が
いっぱい言われてたときの話ですけど。
- 糸井
- ええ。
- 伊集院
- 「伊集院くん、仮にね、結婚式の最後に、
ウェディングケーキの上に
うんこしちゃったやつがいるとするじゃん?」
っていう。
- 会場
- (笑)
- 伊集院
- 「そうすると、みんな
途中のスピーチとか全部忘れて、
『ありゃ最悪の結婚式だったな』
って言うじゃない?」って言うのね。
「それは違ってない?」
っていう話。
今日のうずまきの話にもちょっと近い。
- 糸井
- 近いですね(笑)。
- 伊集院
- つまり、なにか衝撃的なひとつのことで、
完全に否定するのはちょっと違ってて。
「途中のことをちゃんと、
『これとこれは正しい』とかって、
拾い出しとかなきゃダメだよ」
ってことだと思うんですけど。
- 糸井
- あ、そう言いましたか(笑)。
- 伊集院
- そう言いました。
ただ面食らったのは、その、
生放送でいきなり
「ウェディングケーキの上に、
うんこしちゃったやついるとするじゃん?」
っていう架空の設定が、あまりにぶっ飛んでて、
どうしようかと思いました。
- 会場
- (笑)
- 糸井
- いや、結婚式に出てるときに思ったんですよ、
「それがあったら、おしまいだな」って。
一生「思い出のうんこ結婚式」になっちゃう。
- 伊集院
- なっちゃいますね。
「ああ、あのうんこの?」って、
みんな言うようになっちゃうから。
- 会場
- (笑)
(つづきます)
2024-02-11-SUN
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