── さあ、いよいよやってまいりました!
デパ地下、食料品売り場に向かっております!

ジョージ 伊勢丹のデパ地下って、
ナショナル麻布でもないし、
紀ノ国屋でもないんだけど、
ほどよく“百”が揃っているのよね。

ただほんとは昔あった
イルサルマイヨが復活してくれると
もっとステキなんですけどね!
バビントン・ティールームもよかったなぁ。
あれがなくなったのは、もったいない。
ローマのバビントン・ティールームより
こっちの方がよかったんだもの!



伊勢丹の人 いまだにお問い合わせが入るんです。

ジョージ でしょう?!
マフィンとねえ、
ショートニングたっぷりの
ビスケットが大人気で。
クロテッドクリームていうのも
あそこで学んだし。
ジノリの器だったじゃないですか。
あの器ってね、使い込んでいくと
緑色が薄くなっていくの。
経年変化した感じがとっても素敵で、
閉店するって聞いてすぐ、
「あれがほしいの!」って電話かけて
10セット、引き取らせてもらいましたっ。

伊勢丹の人 えっ、そんなことがあったんですか。
あの器は、以前イタリア展で販売したことがあって、
1日で完売しちゃうくらい
人気があったんですよ。

ジョージ バビントン・ティールームって、
縄で編んだ座りにくい椅子だったの。
でもあそこにちょこんと座ると、
女の人はきれいに見えた!
まん中に木の棒があって、
左側は鞄を置くようにできていたのね。
女性をきれいに見せるためという意味で。
あれはほんとうに完璧!

伊勢丹の人 イルサルマイヨもセットで、
あそこで買い物をされて
新宿御苑に持って行かれる方が
よくいらっしゃいました。

ジョージ いまは、日本全体がスイーツの方に
気持ちが向かってるから、
伊勢丹さんもスイーツな感じね。
それでも、伊勢丹らしいんだろうな、と思うのよ?
銀座三越も地下をぐるーっとくまなく見たのね。
日本橋三越の食品は好き!





伊勢丹の人 ありがとうございます。

ジョージ こういう売り場って、
メインストリートがあるべきなの。
メインストリートになにが並んでるかによって
雰囲気が決まると思うのね。
で、日本橋の三越のメインストリートには
かならず江戸の味がある。
ああ、東京に誰かが来たら
ここへ連れてきて、
30分ぐるっとまわると
買いたいものが見つかるんだろうな、と思う。
新宿のタカシマヤは野菜屋さんですから
あれはあれでまたいいかな、
というふうに思いますしね。
そういうふうに考えて眺めて御覧なさい。
伊勢丹のメインストリートは何?
スイーツとパンなの!
これはこれで都会的な、
台所をよごしたくない奥様がここへ来ると
幸せな買い物ができるんだろうなと思うのよ。



ジョージ でも、スイーツのメインストリートを
つきあたったところが、
エスカレーターだまりっていうのが、
ちょっとかなしいところよね。
あそこからまたひとつ、通りが
できあがるといいんでしょうね。

── バレンタインの時期は、
すごいことになりますよね、
このフロア。

ジョージ 伊勢丹さんは、その前に上の催物場で
「サロン・デュ・ショコラ」をやるじゃない?
でもその時期はけっこう早くて、
こんなおいしい高級な生チョコ、
バレンタインまでもたないじゃないのと思ったら、
あれって、女性たちが、じぶんのために買うのね。

伊勢丹の人 そういうお客様も
おおぜいいらっしゃいますね。

ジョージ で、いざバレンタインが近くなると
地下にもう一回、特設売り場ができるの。
もうちょっと安心価格でね。

伊勢丹の人 ジョージさんもお求めになるんですか。

ジョージ ふふふ、チョコレートはお菓子じゃなくて
「愛のお薬」ですから!
でも、ボクは、
バレンタインデーに男の子に
チョコレートをプレゼントするのは
はずかしいし、しゃくなの。
だからチョコレートつながりのものを
一所懸命さがしてプレゼントしますっ。

── チョコレートつながり?

ジョージ カカオのにおいのするものであるとか
カカオ色のものであるとか。
天然ゴムのベルトって
チョコレートのにおいがするのよ。
ブルガリ(BVLGARI)に、
ゴムベルトの腕時計がありますけど
あれはにおいをかぐとチョコレートなのね。
汗がつくと、よりチョコレートの
においになる。
だからそれをプレゼントしたこともある。
「チョコレートだよ!
 食べられないけどね、ごめんねー」
って。

あるいは、エルメスのキッドカーフの
82番っていう番手の革が
チョコレートの色つやなのね。
これはエルメスそのものが
もう、チョコレート色にしちゃおうということで。
それのお財布であったりをつくるの。
そういうのをさがしてくるのが、
すっごくたのしい!
香水もカカオのにおいがするんですよね。
ジバンシィ(GEVENCHY)が出している
アンサンセ(INSENSE)の
ウルトラマリンの中には
カカオのにおいがあるんですよ。
ただこれは、つけて
1時間目ぐらいからしかしない
においなんですけど。
そういうのをていねいにさがしていくと
チョコレートと一緒になることによって
初めて本来の魅力を発揮するものが
見つかってくるので。
チョコレートで高いものを
買うのもよいけれど、
チョコレートをきっかけにして
ほんとうに贈りたいものを贈るような
プレゼントの仕方ができると
バレンタインもすごくたのしいと思う!
そういう買い物の仕方っていうのは
お菓子屋さんではできなくて、
百貨店でしかできないので。
売り場を買いまわって
「わたしのカカオ」を見つけよう、
とかっていうのは
すごくたのしいと思う!

── へー!

ジョージ そして、お酒売り場にきました。
ワイン売り場もいいけれど、
こっちも楽しいのよ。
産地別になっていて。





伊勢丹の人 奥で吉兆さんのおつまみを食べながら
飲めるカウンターがあるんです。
7月31日まで、休止中なんですけれど。

ジョージ 吉兆さんのお弁当、好き!

── ときどき、ここでイベントやりますよね。
お酒の福光屋さんが、
ドミニク・ブシェさんを呼んで、
彼の料理を食べさせるコーナーに
御本人が立っていたのを見ました。

ジョージ あなどれない!
ひとりで来たいわあ。
そんなに混んでないしね。

── そしてこちらが和菓子ですね。
日本中の和菓子が集まってる‥‥。

ジョージ でも高いものばっかりじゃないのよ。
曜日によっては、
原宿瑞穂さんの大福が買えたり、
麻布十番豆源さんの特製品があったり、
いろいろ楽しいのよ。
ほら、こういう葛湯なんか
人にさしあげると、
もらうほうも気がねなくていいから、
ときどき買ったりするのよ。
 











■ ナショナル麻布と紀ノ国屋
どちらも青山的な食の世界をささえている店。スーパーな食品マーケットでございましょうネ。ナショナル麻布で大きなカートを転がしながら歩いていると、ホームパーティーをしたくなる。紀ノ国屋をブラブラしてると、大切な家族と過ごす週末の夜の食卓が見えてくるような気がするのよね。パーティーができるような大きなリビングルームもなければ、家族もいない今のワタクシ。どちらも切なく、遠い存在。でもいいの‥‥、ボクにはどんな人にもやさしい伊勢丹の地下があるからたのしいの。

■ イルサルマイヨ
ミラノのモンテナポレオーネにある上等なレストランで、そこの料理や食材が買えるお店が伊勢丹の地下にあったのよね。そこだけ床がちょっとあがっててまるでステージみたいな特別。床もショーケースも緑色した大理石張り。豪奢なお店に負けず劣らず、そこに置かれた食品のうつくしくって、おいしかったこと。お店の横にカウンターがあって、そこで試食感覚の食事もできた。百貨店の中にミラノがあるなんて、なんてステキで贅沢なんだろう‥‥、って。やってた会社の不幸な都合で、撤退したとき。ボクの中で料理バブルが終わったのね‥‥、ってシンミリ思った、そんな店。

■ バビントン・ティールーム
ローマから来た「紅茶のおいしいぃ、喫茶店♪」。リチャードジノリの緑のお皿やティーカップ。銀のポットに熱い差し湯が入ってて、カップとお揃いの陶器のポットに注ぎ足しつつユックリお茶をたのしむスタイル。すわり心地の悪い椅子は、背筋を伸ばしてお茶を優雅にたのしむための工夫なのよ‥‥、とか、いろんなコトを教わった。要するに、エレガントな空気がただよう小宇宙。ローマにはじめていったとき、ここの本店を探していってみたのだけれど、伊勢丹の店の方がずっとステキだったのを思い出す。イルサルマイヨと同じ理由で、なくなっちゃった‥‥、あぁ、さみしい。

■ ジノリ
日本のバブルの象徴は「イタリアムード」だったと思うの。それまでは男の贅沢はイギリスにあり、女のオシャレはフランスにあった。それが一転、すべてがイタリアに集約されて、ベルサーチやジョルジオアルマーニを男も女も羽織ってた。食べ物だってイタリア料理。食器も当然、イタリアモノで特にジノリの金箔の縁取りのある極彩色のディナーウェアは、大人気。高級料理の象徴だった。今ではそんなギラギララインはなくなっちゃって、リチャード・ジノリと言えば白いぽってりした生活陶器‥‥、でも上等って感じになってしまったけれど、ボクの家にはいくつか当時のギラギラジノリがあるのよねぇ‥‥。今でもそれをたまに使う。あぁ、ジノリのお皿の箔押しってスーツにおける肩パッドみたいなモノ? って思う。なんだかシンミリしちゃうのよ。

■ 新宿御苑
オカマ見のメッカ。お花見じゃないの‥‥、オカマ見。桜の季節、もしかしたら東京中からほがらかさんが集まってきたのじゃないかしら‥‥、って心配になるほどそこかしこでワーキャー黄色い声を上げてお花なんかそっちのけでカワイコちゃんがいないかしらって大騒ぎする。つまり、オカマ見。そのとき、持っていくお弁当の最高峰は手作り弁当。それに続いて伊勢丹地下で調達をしたお惣菜やお弁当。集合時間に遅れそうだからって、近所のコンビニやスーパーでとりあえず何かを買って行きましょう‥‥、なんて、そんなコトはできぬ相談。それが、ほがらか的なる新宿御苑でございます。

■ スイーツ
食べられる夢‥‥、それがスイーツ。夢は大切に扱ってほしいものよね。夢は夢のある場所でキラキラしていてほしいモノ。だからコンビニに転がっているお菓子は、それがどんなに甘くておいしくってもスイーツじゃないってボクは思うの。ちょっと迷って選んだモノを、キレイに包んでもらっておまたせしましたって丁寧にお辞儀しながらてわたされる。それが食べられる夢のあるべき姿。でも夢はいつかは覚めちゃうモノで、覚める場所が体重計の上だったりしたらもう大変。夢は見続けるもの‥‥、って肝に銘じて、今日もスイーツいただきます!

■ 銀座三越と日本橋三越
銀座という街。老舗もありはするけれど、常に新しいモノが生まれる実験的な街でもあるのね。一方、日本橋という街は「伝統的」が似合う街。その街の性格がそのままふたつの三越に反映されてるような気がする。なんといっても銀座三越にはマクドナルドの日本一号店があったぐらいだもの。好奇心を満足させるモノがたくさん。日本橋の方は安心感に満ち溢れてる。地下鉄たった3駅で、こんなに違う三越があるっていう東京って街はスゴイよね。

■ パン
ちょっと昔まで、「パンにしようか、ご飯にしようか」ってそれが主食の選択肢。それが今。伊勢丹に来ると、「ご飯じゃなくてパンなんだけど、どこのパンにしましょうか?」って迷うコトができるのよね。なんてステキなコトなんでしょう。贅沢なモノがある世の中が豊かな世の中じゃないのよね。いろんなモノの中から自由に選べる、選択肢の多い世の中が、豊かな世の中。「パンがなければ、ヴィエノワズリーを召し上がれ」って、そんな言葉をいわずともすむ‥‥、マリーアントワネットも羨む日本の豊かをかみしめませう。

■ サロン・デュ・ショコラ
パリではじまったチョコのお祭り。世界中で開かれている。なんでチョコだけ? サロン・デュ・エクレア。サロン・デュ・マカロン。サロン・デュ・羊羹‥‥、ないものネ。それだけチョコはスペシャルなのよ。人の肌ですら、チョコレート色に色づくコトでいつもと違ったスペシャルな存在感を発揮したりする。チョコのお祭りは、いつもと違った自分に出会うお祭りかもね‥‥、って思ったりする、だから好き。




















■ ブルガリ
ローマの本店に行ったとき、あまりの贅沢とあまりの豪華に腰が抜けそうになったのネ。首が折れてしまいそうな程のネックレスや、耳たぶがちぎれてしまいそうなほどのイアリング。キラキラしてて、でもギラギラにはなっていかない、もうギリギリの高級感。ソフィア・ローレンみたいな存在。そこが男性用の時計を作ったとき。宝飾品としての時計じゃなくてスポーツウォッチを充実させたっていうのにビックリ。確かにブルガリが得意なピンクゴールドのブレスレットは、日焼けした肌に似合うからスポーツ好きな男性につけて欲しいってことだったのかもしれないわ。ボクは多分似合わない。でも、ブルガリの時計が似合う殿方には、ちょっとココロときめいちゃうかも‥‥。

























■ ワインと日本酒
歳をとっていくことを恐れぬばかりか、むしろ正しく歳をとることを愛でる文化。それがワインという文化。それに比べて、若々しくあるというコトに至上の価値を見出す日本の文化が作った清酒を飲むと、なんだかずっと物足りなかった。シワのない真っ白な肌もキレイだけれど、深いシワが刻まれてなお、ハリをなくさぬ日焼けした肌。シミさえ豊かな人生の刻印のごとき肌を誇ってニッコリ笑う。良いワインのような歳のとり方をしたいってずっと思っていたのだけれど、ここでいろんな種類の清酒を飲むと、あら、若々しいってステキじゃない!若い中にも深みがあって、個性すらある‥‥、若いと未熟は別のコトって、そんなコトを再発見。新たなコトを発見できる、年取ることはステキなコトネと思いましょ!








■ 吉兆
数ある料亭の中でも文句なしに最高峰は吉兆さんでありましょう。ただ「吉兆」と呼び捨てにするコトがはばかられ、「吉兆さん」と敬称付きで呼びたくなる。それほど特別。料亭で吉兆さんらしいもてなしを受けようと思ったら、お昼でも3万円、夜なら10万円は覚悟しなくちゃいけないのでしょう。その吉兆さんの料理のエッセンスが、ほどよき値段で味わえる。例えば「吹き寄せ」ってお弁当。季節、季節のお料理がギッシリ詰まって見目麗しく、味わいキレイで口の中でもうつくしい。いつか吉兆さんの料理を味わう、その本番の予習をしていると思って食べると、なお、うまし。

■ 和菓子
実は今、和菓子を勉強しているの‥‥。先日、思いつくままに洋菓子と和菓子の名前を書きだしてみた。マカロンだとかフィナンシェだとか、洋菓子の名前は次々思い浮かんでやってくるのに、和菓子の名前を知らないコトにちょっとビックリ。伊勢丹の和菓子の売り場で、ショーケースの中のお菓子を見つめていたら、どれもステキにチャーミング。しかも季節季節で売り場がガラッと変わるじゃないの。その色鮮やかとうつくしきこと。日本人として誇らしくあり、けれど同時にそれをあまりに知らないコトに恥ずかしくなり、それで勉強。ついでに茶道もやり直し!





デパ地下、しゃべるしゃべる。
次回もデパ地下の続きを
おとどけしまーす。
2012-07-11-WED