ジョージ ね、こうして上から順番に見てくると、
ことしの傾向がわかるでしょう?
まず、靴はエスパドリーユが再流行。
そして、薄手の大判ストール
メンズでも人気が出てきている。

伊勢丹の人 ストールは、ネクタイのかわりに
首まわりに使われるかたが多いんですよ。

── なるほど。すっかり定番のアイテムなんですね。
そしてきれいな色が多いですよね。

ジョージ 見て、ブルーよ、ブルー!
ことしはきれいなブルー。
こうして見渡すと、
流行を牽引しているブランドには
きれーいな、青色のアイテムがかならずあるの。
しかも表情のある、きれいなブルー。
差し色みたいにしてお店に置かれてる。
きれいねえ。

── といいつつ、いまいるところは
ハイファッションのフロアです。
いろんなブランドがならんでますね。
ところでジョージさん、
このあたりは写真が撮れないところも多いんです。
できるだけ口で説明してください。



ジョージ まかせなさい!
ほら、ディオール・オム(Dior homme)よ。
クリス・ヴァン・アッシュが
デザイナーよね、今。

── 老舗のメゾンが、平気で若いデザイナーを
ぽんと雇っちゃう
感じってすごいですよね。

ジョージ ディオールは、アレよね、そもそも、
ディオール亡きあと21歳のイブ・サンローランが
就任してたんだものね。
そのあともジャンフランコ・フェレ、
そのあとがたしかジョン・ガリアーノよ。
そのジョン・ガリアーノが退任して、
そのあとがラフ・シモンズよ。
オムは、エディ・スリマンのあとで
クリス・ヴァン・アッシュが来た。
もうなにがなんだか。

── それだけ有名デザイナーがかかわって
ディオールらしさみたいなのが
失われないっていうのは
すごいことですよね。
遺伝子が継承されているというか。
継承問題は、こうして目に見えて
すぐにお客様がジャッジする世界では
そうとう神経をつかう仕事でしょうね。
ディオール、きれいですね。

ジョージ ボクは、サイズ、入らないけどねっ!

── あ‥‥、こちら、プラダ(PRADA)ですよ。

ジョージ プラダ‥‥。
ボクの香港の友達がプラダを着るの。
いっぱいあるからあげるよ、
着てみなよ、って言われるんだけど、
‥‥やっぱりサイズが入らないの!

── あ‥‥。

ジョージ プラダ着れるようになりたーい!
でも、痩せるとモテなくなるーっ!
だから痩せたくないしー!
どうしたらいいんだろう?

── 痩せても、おモテになると思いますよ。

ジョージ そうじゃないの!
そうじゃないのよーっ!

── その話はちょっと置きまして、
こちら、トム・フォードですよ。

ジョージ トム・フォードがグッチの前にある。
トムはグッチのレディスのデザイナーとして
デビューしたのよ。
そして今のグッチがあるのも彼のおかげ。
ほら、ドレスシューズ!
オペラパンプスよ?
でも、かかとがあるからまだ略式。
正式なやつはかかともなくって、
スリッパみたいなの。
私は土の上を歩いて
ここには来ておりません!
‥‥っていうお靴なの。
さすがトム!

── いま、あちらでお買い物をなさっている
お客さまは、中国のかたのようですね。
なんていうんでしょう、
ものすごく洗練されています。
日本に買い物に来ている中国のかたって、
最初は女性が急激にキレイになって、
それは若い子もマダムも同様で、
そのあとを追うように
若い男子がかっこよくなりましたよね。

ジョージ 鍛えた体、ぴったりしたシャツ、
ぷりっと上がったお尻!
騎馬民族って感じよねえ。
もう、スタートが違う。
それを全身、ハイファッションでかためて、
時計もバッグも靴もカメラも一流品。
そして、流暢に英語を話す。
おそらくほかの外国語も堪能よ?
きっと教養もあり学歴もたしかで
ビジネスで成功している若者よね。
お顔だって、ほら、自信にあふれてて。
こういう子たちが、ヨーロッパやアメリカで
世界と対等に渡り合う仕事をしているの。
見るからにわかるでしょう?
ほっんと、日本、負けてるのよっ!
フガッ!

── いやはや‥‥。
こちら、アレキサンダー・マックイーン
(Alexander McQUEEN)
ですよ。

ジョージ マックイーン。
ほんとにとってもかわいいデザイナーだったのに
亡くなってしまって残念だった。

── デザイナー本人がかわいい、
という意味ですね。

ジョージ そうよん。でも、彼が亡きあと
サラ・バートンになってから、
女子の評判はよくなったのよね。
皮肉だわ。

こっちはドルチェ&ガッバーナ
(DOLCE & GABBANA)
よ。
ドルガバはいい意味で
ずぅーっと、ドルガバよね。

── 漁師の網みたいな
チョコレート色のズボンがあります。
これ、どうやって穿くんでしょう?
ぜんぶ、すけちゃいますよ。

ジョージ そんなの決まってるじゃない!
そのまま穿くのよ。
それか、あの素材と同じ色の
肌の子に着せるかよ。
ぼくがものすんごいお金持ちだったら
そういう子をよんできて着せて愛でるわ。
そうでもしないと
お金を使えないひと
だって
いっぱいいるでしょ。

それにしてもやっぱり路面店と違うわね。
ぎゅーっとなってる!
しかもそれが新宿っぽいの。
銀座ではない感じがするの。
そして、下に降りましょう、
2階は、うーんと、東京なのよ。
東京が凝縮されている感じ。
表参道の伊勢丹的解釈がメンズ館の2階、
と言ってもいいかもしれないわね。
ほら、ロイヤルオーダー(ROYALORDER)
ビルウォールレザー(BILL WALL LEATHER)
入ってる。
このごろはクロムハーツ(CHROME HEARTS)より
このあたりのほうが好きかもしんない。





── あ、ここにもブルーがありますね。
すごいですね、レザーでシャツ仕立てでブルー。
すごく目立ちそうです。



ジョージ こういう、1シーズンに1回くらいしか着られない、
っていうものも、ファッション。
ボクもエルメスのオレンジの
ダッフルコート、もってるのね。
それもワンシーズンに1回だけ着るの。
2回きて歩くと「また着てる」っていわれる。
あ、ほら、コム デ ギャルソンあるわよ。

── わあ‥‥。すごすぎて着られないものも
たくさんあるんですけど、
やっぱり面白いですよねえ。

ジョージ フリルがいっぱいついた男子のシャツ
このフロアは自分のために買う洋服よね。
これを着て誰がどう思うだろうか?
ってことは一切関係ない。
こういう洋服が昔はなかったのよ。
男の子は「かくあるべし」な服を着るべきであって
フリルのついたシャツは
着ちゃいけなかったんだもん!



 








■エスパドリーユ
石田純一でなくても素足で楽しむコトができる夏のオシャレ。麻縄を編んだ靴底に、布切れをまいて紐でとめるって単純な構造で、あれっ? これって、わらじと足袋を一体化したモノなの?って‥‥、そんなコトは言いっ子なしヨ(笑)。遠出には適さない。おしゃれな場所でコレを履いてるってことはつまり、ご近所さんよってメッセージ。伊勢丹にエスパドリーユを履いていこっ!
■男のストール
歳をとるとね、どんどん首筋がさみしくなっちゃう。万有引力の法則は、加齢の法則でもあるのよねぇ‥‥、胸のお肉が下に向かって落ちてくの‥‥。薄着になる夏の季節ほど深刻で、だからストール。胸元にボリューム感がほしぃとき、Tシャツの上に上等な麻のストールなんていいわよネ!


















■ディオール
フワフワしてるの。ヒラヒラしてて、スベスベで、薔薇のはなびらを集めてお洋服にしたらクリスチャン・ディオールのドレスになるんじゃないかと思う。フェミニンなのね‥‥。ディオールの香水も口紅もバッグもすべて、女性を女性らしく見せるためにあるんだって思う。万が一、ウェディングドレスを作るとしたら絶対クリスチャン・ディオールに発注してやるって思うボク(笑)。
■老舗のメゾンが
 若いデザイナーを使う
憧れは永遠でなくちゃいけないの。夢は覚めずにずっと続かなくちゃいけないの。モードもファッションも、そしてメゾンも永遠でなくちゃいけないのね。そのためには絶えず若々しくなくちゃいけない。若い人にチャンスをあげなくちゃ、永遠の命なんて手に入らない。日本の経済界や政治家さんも、心がけていただきたいわ!


















■痩せたい、
 痩せたくないの気持ち
ボクはボクの体が大好き。こんなボクを大好きって言ってくれる人も沢山。なのに、ボクが好きなお洋服はボクを好きって言ってくれない‥‥。なんて哀しい。モードって残酷なモノだわぁ。だって、ジャンフランコ・フェレだって自分が着れるお洋服を作れなかったんだもの。








■オペラパンプス
スベスベとした皮の靴底を、エナメルの袋でくるんでリボンで留めた、つまりピカピカしたエスパドリーユみたいなお靴。実用的では一切ない、オトコの履物とはまるで思えぬ滑稽で華奢なコレに足をスルンと滑りこませると、腹が据わるの。これから自分はいつもの自分じゃなくなるんだ‥‥、って。戦にでるとき褌をしめてかかるように、オペラに行くときはオペラパンプスを履いてかかるの。つまりオペラパンプスは褌なのよ!
■きれいな中国女子、中国男子
特に北方系ネ。だって小麦粉と肉とミルクをもう何世紀も食べ続けてる。椅子の生活。お馬さんに乗って背筋鍛え続けてきたんだもの。東洋に住む西洋人だと思えばいいの。香港だとか台湾にいくと、ホっと心がおだかやになる‥‥、ボクのかつてのダーリンも台湾出身、米が作った体でざんした。













■アレキサンダー・マックイーン
フレンチブルドッグをコンパニオンにして、上等な服をちょっと着崩す。ほがらかさんなのかなぁ‥‥、って思っていたら、彼氏とあっさり結婚式を挙げちゃった。かっこ良かったなぁ‥‥。オカマの鏡。彼の作品がステキなんじゃなく、彼そのものがステキな作品だったんだ‥‥、って思ってた。でもネ。死んで花実が咲くものか!
■ドルチェ&ガッバーナ
バブル時代が終わって生まれた、若いブランドによるバブル時代のオマージュ。それがドルチェ&ガッバーナ!














■そうでもしないと
 お金を使えないひと
日本に来るために、安いチケットを手に入れたいからって旅行代理店を買ってしまうという、本末転倒を平気で起こす。そんなダーリンが昔、いた。最近、どうよ‥‥、って電話で聞いたら、おいしいお店を見つけたから買っちゃったんだよって。へぇーっ、家の近所のお店なの? っていう質問に、台湾中に20軒くらいあるかなぁ‥‥、って。ふんっ、バカじゃないかしらっ。
■路面店
お店の隅から隅までそのブランドの価値観、世界観で作りこまれた「王国」‥‥、それが路面店。なんでもある。なんでもあると思いながらお買い物をたのしんでいる間はボクらはそこの王様。けれど、そのブランドのものしかココにはないんだなぁ‥‥、って思った途端にここの本当の王様は、ボクじゃなくってデザイナーさんなんだなぁ‥‥って、思ってしまうの。それが百貨店との違うとこ。
■表参道
若々しいアイディアがフツフツと湧き上がる原宿という街。そのアイディアが洗練されて、完成形を迎えて落ち着く場所が青山。その両方をつなぐ表参道という一本の道。ファッションショーのランウェイみたいなところかもネ。時代という舞台を颯爽と駆け上がっていくモードを眺めて、たのしく勉強させてもらえる‥‥、それが「表参道的」ってことかもしれない。好きだわぁ‥‥。
■ロイヤルオーダー
端正な顔立ちなのに存在感がある。育ちがいいのに、ちょっと影のある不良っぽさをもった「オトコに好かれるオトコの中のオトコ」って感じのシルバーアクセサリー‥‥、よね。でもって、そんな感じの大人の指にピッタリなリング類がかなりの人気で集めてた。なんだけど、太った指には似合わないのよ‥‥。指に埋まったゴッドリングをみた友人が、「まるで指貫みたいだね」っていってやめたわ。だってその通りだったんだもの‥‥。
■ビルウォールレザー
エリザベス一世時代の海賊船の、お宝の中にあってもおかしくないクラシカル。華奢なクサリのように見えて、でもクサリのひとつひとつが薔薇の形や頭蓋骨だったりという、ゴシックでバロックな感じがステキ。ドラキュラ伯爵の首にぶら下がっているアクセサリーは絶対、ビルウォールだわ‥‥、っていつも思ってる。特に日本の女性の手首にフィットするのは、ビルウォール。ココのレザー小物も使い勝手がよくてお薦め‥‥、艶っぽい。
■クロムハーツ
ロックンローラーのエルメス‥‥、っていう人もいるわネ。確かにレザーのクオリティーの高さであったり、手仕事に対する異常なほどの執着心とか、商品作りの姿勢がエルメスに似てはいる。でも重いのよねぇ‥‥、レザーもシルバーアクセサリーも。実は一着、クロムハーツのレザージャケットを持っていて、ずっしり重たくしかも硬くてしばらく着てると疲れてしまう。ロックンロールの人生って、肩がこるモノなんだなぁ‥‥、ってそのとき思った。ワタシは優雅にフレンチ・ポップスでまいりましょ。
■レザーの服
痩せ我慢の象徴よ。体に馴染むまでに時間がかかり、重たく、決して暖かくはない。にもかかわらず、レザーの服が愛されるのは「もう一つの皮膚をまとう」という官能性に、抗うことができぬように人の奥底がプログラムされているからでしょう。ちなみにエルメスのレザーのドライバーズジャケット。ひとたび、袖に腕を通すと二度と脱ぎたくなくなる逸品。そのとっておきを着るために、あと何キロ痩せなきゃいけないんだろう‥‥、そういう意味でため息モノでござります。
■フリルのついたシャツ
フリフリの袖。フリフリの胸元。フリルのついたシャツを着て、奇術師でもなくフラメンコダンサーでもなく、純粋なお洒落さんにみえるようになったら立派なお洒落さん。体やココロの中にほんの少しでも「いんちきな部分」があると、フリルのシャツが暴いてしまう。本当に裕福で、本当のオシャレをしった人をみわけるリトマス紙。ワタシはまだまだ、似合わない‥‥、かな?



「今」の空気がたっぷりで、
しかもいろんなものがいちどに見られて面白い!
ジョージさんは「ボクのサイズがない」と
おなげきでしたけどね。
次回はメンズ館の地下にまいりまーす。
靴と、男性下着でっす。ドキドキ。
2012-07-30-MON