石川くん。
枡野浩一による啄木の「マスノ短歌」化。

一度でも我に頭を下げさせし
人みな死ねと
いのりてしこと
 (石川啄木『一握の砂』より)


第7回 石川くんのプライド



石川くん、私がまちがってました。ごめん……。
   *
ほめ言葉より、けなし言葉のほうが、一個多いよ!?
って、
第5回の原稿の中で怒ってしまった私だけれど、
あとで冷静になってゆっくり数えてみたら、
あれれ、同じ数じゃん。
 1 まことにおとなしい,
 2 人のよい,
 3 やさしい,
 4 思いやりのふかい男
……が「ほめ言葉」。
 1 シットぶかい,
 2 弱い,
 3 小さなうぬぼれのある,
 4 めめしい男
……が「けなし言葉」。
やっぱり同じ数だ。すみません……。
そうだよね、石川くんは、
借金した相手の名前と金額を
いちいちノートに記録しておくような男だものね。
うっかり忘れてて借金を返さないんじゃなくて、
確信犯で返さないだけだもの。
ほめ言葉と、けなし言葉の数も、
きっちり同じ数にしておくような男だよね。
まことにしっかりした、頭のよい、
かわいい、神経のこまかい男だとともに、
執念ぶかい、ずるい、大きなうぬぼれのある、
やらしい男だよ。
ほんとうに失敬。心からおわびします。
   *
それにしても、
どうしてこんな単純なミスしたのかなあ、私。
『啄木 ローマ字日記』(桑原武夫編訳/岩波文庫)、
もういちど読み返してみようかな。
P.132あたり。
〈一方,キンダイチ君がシットぶかい,
弱い人のことは また争われない.
人の性格に二面あるのは 疑うべからざる事実だ.
友は一面に まことにおとなしい,人のよい,
やさしい,思いやりのふかい男だとともに,
一面,シットぶかい,弱い,小さなうぬぼれのある,
めめしい男だ.〉
…………。
石川くん、
よく読んだら、
「シットぶかい」「弱い」がリフレインしてるよ!?
謝って損した。
おわびを返せ。
借金も返せ! 金田一くんに!!
   *
それにしても石川くんて、なんかプライド高いよね。
ちょっとくらい「超可愛い顔」だからってさ。
俺みたいな天才のために凡人が犠牲になるのは当然、
とか思ってるんでしょ。
何様のつもり?
神様なんか信じてないくせに、
他人の不幸を祈ってみたり……。
そんな君の「俺様」な感じが伝わるように、
歌いなおしてみた俺だ。
きょうはこのへんで、ゆるしといてやるぜ、石川。
じゃあ、また、あしたな!

枡野浩一

http://talk.to/mass-no

2000-05-26-SAT

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