ハブの棒使い。 やればできるか、晴耕雨読。 |
その3 いとしいアマミノクロウサギ 日本で最初に特別天然記念物に指定された 貴重な生き物が奄美にいます。 アマミノクロウサギです。 現存するウサギ類のうち 最も原始的なウサギといわれます。 「ウサギってどんな動物?」と小学生にでも訊けば、 「耳が長くてぴょんぴょん跳ねる白い動物」 という答えが返ってきそうです。 耳が短く、跳ねるのが得意でないアマミノクロウサギは、 たしかにウサギの一般的なイメージからはずれています。 おまけに黒いんですから、絶望的です。 原始的とさげすまれてもいたしかたないのかもしれません。 とはいえ、実際に見てみるとすっごく可愛いんです。 夜の林道でたまたま出くわすと、 臆病な彼らは一生懸命逃げようとします。 しかし、後ろ足が短いので、普通のウサギにように、 ピョーンピョーンと身軽に逃げきることができません。 ピョコタンピョコタンと、それでも必死に逃げていく、 その不器用な様がいかにもいとしい。 そんな逃げっぷりでは外敵にやられてしまいます。 親ウサギですらそんな具合ですから、 子ウサギはますます無防備です。 マングースや野良ネコの格好の餌食です。 だから子育て中の親ウサギは地面の巣穴を留守にする間、 前足でペタペタと、子ウサギを生き埋めにします。 その無茶苦茶な作戦がいかにもいとしい。 さらにいとしいのは「ノ」の存在です。 アマミノクロウサギの4番目の文字、ノ。 野ウサギの「野」ではありません。 連体修飾語を作る格助詞の「の」です。 「奄美に棲んでいる黒い兎」という意味です、もちろん。 それはそうなのですが、意表をついた名前です。 イリオモテヤマネコだって、 ヤンバルクイナだって、 トウキョウサンショウウオだって、 出身地を名前に冠していますが、 ノなんて、余分なつなぎはありません。 アマミヤマシギだって、 アマミアオガエルだっているんですから、 奄美の地方ルールという訳でもありません。 だから、なぜ間にノをはさんだのかわかりません。 でも、アマミクロウサギとアマミノクロウサギ。 どっちが愛嬌がありますか? 絶対後者ですよね。 この和名をつけた人のセンスのよさを感じます。 もっとも、因幡の白兎から思いついただけかもしれません。 |
2000-05-23-TUE
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