ハブの棒使い。 やればできるか、晴耕雨読。 |
その14 こだわりのわが家拝見 水生の節足動物の代表は甲殻類。 甲殻類と聞いて、普通の人が思い浮かべるのはエビとカニ でしょう。でも、忘れないで欲しいんです、ヤドカリ類。 エビもカニも食べられるけど、ヤドカリは食べられない? だから存在感が薄いって? いやいや、そんなことはありません。 北海の美味タラバガニやハナサキガニも、 南島の珍味ヤシガニもれっきとしたヤドカリの仲間です。 奄美の海岸には天然記念物のムラサキオカヤドカリが たくさんいます。 体長15cmくらいになる陸生のヤドカリで、 昼間はアダンの根元で休んでおり、夜になると這い回る。 落ちたアダンの実から打ち上がった魚までなんでも食べる 浜の掃除屋さんです。 龍郷町のとあるキャンプ場で、そこのご主人が、 たらいにスイカの皮を入れて放置していました。 なんだろうと思うと、オカヤドカリの餌付けなのです。 決まった時間にカサコソやってきたかと思うと、 たらふく食べたら一斉に四方八方に散っていく。 重そうな殻を背負って一生懸命な様子がとってもけなげ。 加計呂麻島の徳浜という海岸でキャンプをしたときのこと。 ここは「男はつらいよ」の最終作、第48話「寅次郎紅の花」 のロケ地。渥美清氏が亡くなる前年、95年のロケの際には 大勢のスタッフと取材陣、やじ馬で賑わったそうですが、 いまやわざわざこんな果てまでキャンプしに来る人もまれ。 その日も、浜はわれわれの貸しきり状態でした。 テントを張り、何を考えるでもなくただ海を見ていると、 視界の端に何か動くものがいます。 種類はわからないですが、2cmほどのヤドカリでした。 近づいて見ると、空の貝殻をハサミで抱え込んでいます。 しばし観察してみることにしましょう。 抱えているのは自分の背負った殻よりひと周り大きい貝殻。 ハサミを貝の穴に入れ、空っぽかどうか確かめている様子。 やおらハサミを抜き取ると、ゆっくりと貝殻を回し始めた。 1回転、2回転、3回転。 そして穴を自分のほうに向けると、スルッと尾を抜いて、 一瞬のうちに、新しい貝殻に入ってしまった! 背負った宿が小さくなって、新居を物色中だったのです。 どこで見ていたのか、今度は空いたばかりの貝殻を狙って、 別のひと周り小さいヤドカリがトコトコやって来ました。 そのとき、スルッ。 さっきのヤドカリが元の宿に戻ってしまったのです。 親しんだ宿を他人に明け渡すにはよほど未練があったのか、 引越しは次の機会にお預けで、当分狭いわが家で辛抱です。 駆けつけた小さなヤドカリは恨めしげに帰っていきました。 この旺盛な所有欲、なんか笑えます。 生涯フーテン生活だった寅さんとは大違い。 |
2000-08-13-SUN
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