ハブの棒使い。 やればできるか、晴耕雨読。 |
その20 アマミヤマシギ御難 人間だけではありません。 イヌやネコなら十分想像もつくでしょう。 カエルやヘビが巻き込まれているのもよく目にします。 ところが、意外なことに野鳥も犠牲になるのです。 交通事故! 自動車による轢死です。 根室在住の野鳥研究家の山本純郎さんに伺ったところ、 シマフクロウの最大の死因は交通事故だそうです。 アイヌの人々に神と崇められる日本最大のフクロウも、 車社会の悪しき影響を受けているわけです。 立ち姿が子供の背丈ほどもあり、 翼を広げると2m近くにもなる巨大な鳥なので、 ぶつけた人間のほうの罪悪感も相当大きなものでしょう。 なんてったって神を轢き殺しちゃったんですから…。 奄美大島およびその周辺の島の固有種で、 アマミヤマシギという鳥がいます。 ハトくらいの大きさのずんぐりした体に長い嘴が目立つ。 名前の通り茄子のシギ焼きを思い出させる体型の鳥です。 この夜行性の鳥、恐ろしいほどに鈍い。 この地上歩行の鳥、無様なまでに重い。 昼間は照葉樹林の林床でじっとしているのですが、 日が暮れる頃、よちよちと林道に出てきます。 外敵から見通しのきく林道の上で、 餌を採ったり異性を誘ったり。 生き物は通常、車のヘッドライトが当たると あたふた逃げ出すものですが、アマミヤマシギは違う。 5mほど前方の道の脇で体を縮めてじっとしています。 身を固めて災害が去るのをひたすら我慢の態。 台風が去るのを家の中でただやり過ごす人間と同じ。 しばらくそのまま観ていると、 なんとヤツが動き出すではないですか。 危険が去ったと勘違いしたのか、のろのろ餌探し再開。 試みに車を進めてみます。 3m手前。まだまだ逃げない。 2m手前。まだ逃げない。 1m手前。ようやく逃げた! 重い体を持ち上げて、翼をばたばた羽ばたかせます。 やっと逃げてくれたかとこちらのほうがひと安心。 と思うと、5m先の林道の真中に降りやがった! だめだこりゃ…。 誤解を承知で言えば、ヤツは轢かれても仕方ないや。 こんな具合ですから、交通事故以外にも マングースやノラネコの格好の餌食となり、 アマミヤマシギは近年随分数を減らしています。 不器用でもいい、たくましく生き延びて欲しい。 |
2000-09-27-WED
戻る |