HABU
ハブの棒使い。
やればできるか、晴耕雨読。

その27 目立つが勝ちという生存戦略

今回は毒について考えてみたいのです。
ハブやサソリは毒を持っています。
毒で餌になる動物を麻痺させたり、
外敵に襲われたときに身を守ったりするわけです。
いわば攻撃的な用途であり、
そのために毒を仕込んだ牙や針を持っています。
ここまではわかる。
問題は毒チョウなど体内に毒を持つ生き物です。
彼らは自ら攻撃するわけでもないのに
体内に毒を隠し持っています。
それにどんな意味があるのでしょうか。

具体的な例をあげて考えてみましょう。
奄美以南にはマダラチョウの仲間の
カバマダラというチョウが住んでいます。
オレンジ色の翅とその先端の黒白の模様が鮮やかです。


毒チョウのカバマダラはよく目立つ

このチョウの食草はトウワタなどのガガイモ科の植物。
ガガイモ科の植物は有毒成分を含んでいますが、
カバマダラの幼虫はこれを平気で食べます。
そればかりか毒素を自分の体に貯えていくのです。
そして貯えた毒は成虫になっても残っているのです。

さて、毒の意味の考察に戻りましょう。
チョウの天敵は鳥。
鳥はカバマダラを捕まえても、
食べたとたんにまずくて吐き出してしまいます。
さすがに食べられたチョウは死んでしまうのでしょうが、
食べたほうの鳥は二度とカバマダラを捕まえません。
これにより多くのカバマダラは鳥に食べられないですむ。
チョウの体内の毒は、1個体が犠牲になることによって、
種全体の安定的な繁栄をもたらしているといえる訳です。
ここまで考えてくれば、
カバマダラが派手な色をまとっている理由もわかります。
仲間の犠牲を無駄にしないためにも、
自分も仲間と同じく毒を持っていることを
積極的に天敵にアピールしたほうが得策なのです。
これを警戒色と呼びます。
南米の毒ガエルもそうだし、一部の毒キノコも同じです。
美しいものには毒があるといいますが、
満更でたらめではありません。

警戒色はわざと目立つことで天敵から身を守るという
舌を巻くほど巧みな生存戦略なのです。
しかし上には上がいるもの。
この警戒色を逆手に取って生活している生き物もいます。
その話は次回に。

2000-11-19-SUN

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