HABU
ハブの棒使い。
やればできるか、晴耕雨読。

その35 カエルの島、島のカエル

大学時代、わたしはアメンボの生態を研究していました。
アメンボの行動を調べようと、
個体識別のために背中にマーカーで印をつけたアメンボを
構内の池にたくさん放しておいたのです。
それがすごい勢いでいなくなってしまうのです。
想像以上にアメンボは分散が早いんだと思ってよく見ると、
愛しのアメンボがなんとカエルに食べられている!
発生学教室の連中が池に逃がしたアフリカツメガエルの、
哀れ、格好のエサになっているのでした。
以来、カエルはわたしの敵でした。

そのわたしがカエルと和解したのは、
奄美大島が「カエルの島」と呼べるほどカエルが多いため。
どの季節にも夜の林道でカエルを見かけるのです。
毎日顔をあわせていると愛着が湧くのは人情ってもの。
しかも、種類が多いのです。
移入種のウシガエルを合わせて10種類、
そのうち8種類が南西諸島固有のカエルたちです。

いまの季節、夜の森の水辺ではクリリリ、クリリリという
アマミアオガエルの鳴き声が聞こえてきます。
その姿を見ようと懐中電灯を片手に近づくと、
ピタッと鳴きやんでしまう。
ライトを消してしばらく息を潜めていると、
またカエルたちの合唱が聞こえてきます。
声を頼りにそっとライトで照らすと、
いました、のどの袋を膨らませて鳴いています。
近くには抱接しているカップルもいます。
両生類は交尾をしません。
魚類と同じくメスが産んだ卵に、
オスがすばやく精子をかけて受精させます。
その優先権を得るために、
カエルのオスはメスの背中に上に陣取っているのです。
アマミアオガエルは一見アマガエルのようですが、
アオガエル科のカエルです。
モリアオガエル同様、樹上に泡状の卵塊を産みつけます。


黒い目がかわいい抱接中のアマミアオガエル

また現在はアマミハナサキガエルの産卵期でもあります。
アカガエル科のこのカエルは実にスマート。
鼻の先端が尖っているように見えるのでハナサキガエル。
手足も長く、とまった姿勢にもどこか気品を感じます。
写真に撮ろうと近づくと、目の前でいきなり大ジャンプ!
ひとっ跳びで、脇の茂みに隠れてしまいました。
長い後ろ足を存分に使って、なにしろ跳躍が得意なのです。
推定飛距離3m。
人間の身長に換算すると20mは軽く超えるでしょう。
身長無差別級の幅跳び競技でも、
アマミノクロウサギよりは遠くまで跳べそうです。


スマートで姿勢のよいアマミハナサキガエル

2001-01-17-WED
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