HABU
ハブの棒使い。
やればできるか、晴耕雨読。

その36 続・カエルの島、島のカエル

出し抜けに恐縮ですが、わたしの誕生日は啓蟄です。
ケイチツは二十四節気のひとつで、
冬ごもりをしていた「虫」が地上にはい出てくる日です。
ここでいう「虫」は「蟲」という漢字のほうがいい感じ。
つまり、昆虫よりもはるかに守備範囲が広い、
両生類や爬虫類を含めた小動物の総称です。
カエルやヘビは3月上旬のぼちぼち春めいてきた啓蟄の頃、
やおら土中から顔をのぞかせるという季節の解釈でしょう。
ところがどうして、奄美では冬でも「蟲」は元気です。
前回に続いて、島のカエルの話をします。

どの図鑑にも日本で一番きれいなカエルと紹介されるのが
イシカワガエルです。
金紫色のしずくを背負った緑色の体はなるほどbeautiful!
しかしなかなかその姿を見ることは難しく、
夜行性であるうえに、山の渓流部にしか棲んでいません。
ぼちぼち繁殖が始まりますが、
オスは流れの水音にもかき消されない甲高い声で
ヒョーと鳴き、メスを呼ぶのです。
カエル離れした声なので、最初は戸惑ってしまいます。
イシカワガエルは奄美大島と沖縄本島に分布しています。
そして沖縄県では天然記念物指定されているのに、
鹿児島県ではその指定を受けていません。
したがって、この美しいカエルをペットにしようと、
奄美に乱獲の手が伸びているという話も聞きます。
ああ、嘆かわしい。


写真では微妙な美しさが再現できないイシカワガエル

奄美大島固有種で忘れてはならないのがオットンガエル。
奄美産カエルの重量級の代表です。
体育会系男子のような野太い声で
オィと呼びかけるように鳴きます。
まだ慣れない頃、夜の森を恐る恐る歩いていたときに、
樹洞から初めてこの声が聞こえてきたときには、
おしっこをもらしそうになったものです。
嘘だと思っている人にはぜひ同じ体験をさせたい…。
ホント、身の毛がよだちますから!
ところで、両生類の前足の指は何本でしょうか?
意外と知らない人が多いようですが、4本なのです。
だから両生類のイモリやサンショウウオの前足は4本指、
爬虫類のヤモリやトカゲの前足は5本指。
知っていれば、簡単に見分けられます。
ちなみに両生類も後足は5本指です。
ややっこしいですがオットンガエルの前足は5本指です。
通常の4本の内側に、袋状の指を持っており、
仕込杖のように鋭い刃のような骨を隠し持っています。
だからうかつに手を伸ばすと危険なカエルです。
もっともイシカワガエルと違って、
あまり好んで捕まえたくなる容姿とは思えませんが。


迫力満点のオットンガエル

2001-01-23-TUE
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