ハブの棒使い。 やればできるか、晴耕雨読。 |
その37 「自然の権利」知っていますか? 「自然の権利」訴訟については、 どうしてもふれておかねばなりません。 1月22日に鹿児島地裁で6年越しの訴訟に判決が出ました。 原告適格を認めず、却下ですと! 噴飯物の判決といわざるを得ません。 この程度の司法制度の国なんです、日本は。 しかも、全国ではほとんど話題にすらなっていない始末。 正月の名瀬の火事は死者が出たからニュースになっても、 クロウサギやルリカケスが大量虐殺の危機でも知らん顔。 良識を疑わざるを得ません。 この程度の感度の鈍さなんです、メディアは。 最初からけんか腰ですみません。 しかし、ちゃんと言っておかなくてはならないのです。 1995年の2月、奄美自然の権利訴訟が提訴されました。 その訴状の原告欄は以下のようになっていました。 大島郡住用村大字市字大浜1510番地外 原告 アマミノクロウサギ 大島郡住用村大字市字大浜1510番地外 原告 オオトラツグミ 大島郡龍郷町屋入918の1番地外 原告 アマミヤマシギ 大島郡龍郷町屋入918の1番地外 原告 ルリカケス 世界中で奄美の森でしか繁殖していない希少鳥獣たちが、 龍郷町と住用村の2箇所にゴルフ場開発の許可を出した、 鹿児島県知事に対して許可撤回の訴えを起こしたのです。 野生動物が原告に立った国内初の裁判ということで、 当時はそれなりに話題になったものです。 わたしも東京でこのニュースを聞き、身震えしました。 裁判所は原告に野生動物が立つことはありえないと、 きわめて「常識的」な判断を下し、それ以来、 奄美の自然を守る市民団体「環境ネットワーク奄美」が 原告の声を代弁する形で裁判が続けられてきたのです。 「自然の権利」とは元々アメリカで生まれた考え方。 野生生物や生態系にも保護されるべき法的権利があるとし、 人間を「自然を所有する者」と捕らえるのではなく、 人間も「自然という共同体の一員」とする考え方です。 この考え方がどう判断されるか、そこが焦点だったのです。 当初は原告に名を連ねたアマミヤマシギ 判決は「原告の市民グループはゴルフ場の開発によって 直接利害を有する者ではないので、原告適格を認めず」 という結論でした。 肝心の「自然の権利」について踏み込んだ判決には至らず。 いわば、6年もかかって門前払いです。 しかしながらこの訴訟には一定の成果はあったと言えます。 まず第一に、この訴訟を嚆矢として、 全国各地で「自然の権利」訴訟が起こってきたこと。 諫早湾干拓反対を訴えた有明海のムツゴロウや 自動車道路整備計画に対しる霞ヶ浦のオオヒシクイなど、 運動は広がりつつあります。 第二に、結果的にゴルフ場建設はストップしたこと。 龍郷町のほうは財政難から開発業者が断念しました。 住用村のほうは環境庁が求めるクロウサギの生息調査を 業者が退けているため、こう着状態が続いています。 世論の盛り上がりが後押しした結果と考えられます。 さらに今回の判決でも、鹿児島地裁は「原告らが奄美の 自然を代弁することを目指した意義は大きい」と理解し、 「現行法の枠組みを慎重に検討しなおすべき」と指摘。 環境倫理上の問題提起がなされたと評価してよいでしょう。 自然は人間のためにあると思い上がって、 このまま好き勝手に開発を続けたらどうなることか? 皮肉なことに有明海では諫早湾の干拓に伴う水門が原因で、 養殖ノリが壊滅的な損害を受け、政治責任にまで発展中。 もっと早く、ムツゴロウの主張に耳を傾けていれば…。 |
2001-01-30-TUE
戻る |