ハブの棒使い。 やればできるか、晴耕雨読。 |
その40 如月満月、長い夜(前編) 満月の夜、名瀬の猟友会会長から電話をいただきました。 かねてからマングースを間近で見てみたいと思っており、 トラップにかかったら知らせてくれるよう頼んでいました。 てっきりその件だろうと思っていたら、大違いでした。 イノシシを仕留めたので振舞おうとの申し入れです。 そんなおいしい話、逃す手はない! 猪料理と言われて、思いつくのはやっぱり鍋でしょう。 味噌仕立てでぐつぐつ煮込んだしし鍋は、 冬の寒い夜を乗り切るのは絶好のご馳走です。 口の中がほくほくして、ビールがまたうまい。 てなことを頭でシミュレーションしながら、 黒糖焼酎とビールを持参して駆けつけたのです。 猟師の皆さんが庭で火を囲んでいます。 席に入れてもらうと、まず椀を渡されました。 ピンポーン、しし鍋です。 味噌味ではありませんでしたが、体の中から温まる。 それにしても骨っぽいなと問うと、 脊椎や頭骨も一緒に煮込んであるとのこと。 豪快というか、よくダシが出そうというか…。 うまいうまいと汁をすすっていると、 ししは焼肉が最高だと言うのです。 という訳で初挑戦、イノシシバーベキュー。 薄く切った猪肉を下味もつけずにコンロの網に乗せ、 焦げすぎない程度に焼いたら、塩胡椒でいただく。 実に素朴で飽きがこない味わいです。 特に皮の部分の食感がこりこりして美味、 ビールのつまみにもってこい。 一緒にあぶったフル(葉にんにく)も箸休めにぴったり。 わたしが初めての経験だったもので、 この部分を食ってみろ、いやこっちもうまいと勧められ、 否応なしに焼いてくれるのです。極楽極楽。 たらふく食ったなとペースを落としていたら、 奥から新たな肉が乗った皿が出てきました。 これはそのまま生で食えとのこと。 しし刺しの登場です。 牛刺し、馬刺しはもちろん食べますし、 鹿刺し、やぎ刺しも食べたことはあります。 しかし、しし刺しとは…。 新鮮な肉だからこそ味わえる珍味なんだと自分を納得させ、 びくびくしながら口に入れてみる。そっと噛んでみる。 臭みも癖もないただの肉という感じで、ちょっと拍子抜け。 ただしこの時点で味覚が相当麻痺していたかもしれません。 猟師に聞いた面白い話。 映画『もののけ姫』で乙事主に率いられたシシの一群が 人間と戦う前に、全身に泥でペインティングを施します。 覚えてますか? イノシシの刺青です。 アニメらしい演出と思っていたら、満更嘘でもないらしい。 イノシシはぬた場と呼ばれる泥んこの水溜りで 泥浴びをする習性があります。 歳とったオスのイノシシは、歴戦の証に体中に傷がある。 こんなオスが泥浴びをすると、傷の部分の泥だけが落ちず、 乾くと黒い刺青みたいに見えるのだそうです。 イノシシが泥浴びをするぬた場 猟師に聞いた面白い話パート2。 しし肉を食べると体が温まるのは本当の話で、 あるとき初めての人にしし肉を存分に食べさせたところ、 その人は途中から汗をかいて服を脱ぎだす始末。 そのまま二次会で屋仁川のスナックに乗り出したものの、 冬にもかかわらずクーラーを入れろと騒ぎ出し、 あげく店のママさんに追い出されたとのこと。 その人、一晩中体は熱いし目は冴えるしで大変だったとか。 だから兄ちゃんも今晩は体がびっくりして眠れなくなるよ! さんざんしし肉を食べた後にそんな話を持ち出されても。 嘆いてもあとの祭り。 そして、予想は的中したのです…別の意外な形で。 (次回に続く) |
2001-02-25-SUN
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