HABU
ハブの棒使い。
やればできるか、晴耕雨読。

その41 如月満月、長い夜(後編)

しし肉で温まった体をもてあましながら帰宅し、
ビールでも飲み直して読書でもするか
などとと考えていたところ、
今度は奄美野鳥の会の方から電話をいただきました。
今からいざりにでかけるというお誘いでした。
先月行きそびれて残念に思っていた、いざり!
一もニもなく参加することにしました。
海釣りをする人ならばご存知かもしれませんが、
冬の大潮の夜は、一年で最も潮が引くのです。
このとき逃げ遅れた魚介類が多数浅瀬に取り残されます。
それをライトで照らしながら捕まえる漁のことを、
地元ではいざりとよんでいるのです。
今晩は満月、大潮のピーク。
さらに風もやんで、波もおさまってきました。
絶好のいざり日和ではないですか。

夜の11時過ぎに名瀬市を出発し、
現地に着いたのは12時半くらい。
すでに所々海中にライトの光が見えます。
先に来た人たちはもう海に入っているようです。
わたしたちは一番奥まで車を進め、
誰もいないサンゴ礁のあたりから海に入ることにします。
2月の夜の海、これだけきくと凍えてしまいそうですが、
奄美の海は冬でも20℃を下回ることはありません。
したがって、思い切って足をつけてしまえば、
むしろ外よりも温かいのです。

夜の海は生き物たちの動きも緩慢なため、
昼間にはなかなか見れない生き物がライトに照らされて
じっとしています。
アバス発見!
アバスとはハリセンボンのこと。
奄美では好んで食べられる魚ですが、
わたしたちは見向きもせずに歩を進めます。
お目当てはスガリとトビンニャなのです。

アバス
驚いて体をふくらませたアバス

スガリとはタコの一種です。
日本産のタコは60種もいて、正式な和名はわかりません。
普通魚屋で売っているタコよりも小型で市場に出回らず、
その割においしいので漁師が自分たちで食べてしまうらしい。
とその時、同行者が目指すスガリを見つけました。
サンゴの間の砂地の部分をゆっくり移動中です。
砂の色に同化していて、意外と見分けにくい。
発見者が狙いを定めて、もりで突く!
一転、スガリの動きが敏捷になります。
体色が突然赤く染まったかと思うと、
八本の腕をもりの柄にからませて必死に抵抗しています。
へばりついたスガリはふたりがかりでようやく御用!
その後、わたしも一頭捕まえることができました。

スガリ

激しく抵抗するスガリ

全員スガリが捕れたところで、
気持ち悪い巨大イソギンチャクや
凶悪な面構えのウツボの脇をやりすごして場所を移動。
次はトビンニャ探しです。
こちらも正式名はわかりませんが5cmくらいの巻貝です。
貝の中で最高においしいということです。
それはぜひゲットせねばと探すのですが、
砂に半分隠れている上に、色や形が海底の石そっくりで
さっぱり見つけることができません。
みんな次々に見つけていくのですが、
結局わたしは最後まで見つけることができませんでした。

シラヒゲウニを割ってその場で海水で洗って食べたり、
満月の光がきらめく海を見ながら談笑したりするうちに
どんどん夜は更けていきます。
気がつくとわたしたち以外はみんな引き上げたようです。
わたしたちも十分満足し、帰路についたのでした。
帰宅したのは朝の6時。

如月満月、長い長い夜でした。

2001-02-27-TUE
HABU
戻る