HABU
ハブの棒使い。
やればできるか、晴耕雨読。

その60 不審船といわれても

奄美沖に北朝鮮の不審船が現れたのが昨年末のこと。
海上保安庁の巡視船と派手な銃撃戦を繰り広げたあげく、
東シナ海に沈没しました。
半年経ったいま、この船の引き上げが問題になっており、
「奄美」がニュースで取り上げられる機会も増えています。
友人知人たちも
 ぶっそうだね。大丈夫?
とメールをくれるのですが、
当の奄美の人々はさほど深刻に受け止めていないようす。


名瀬港に停泊する海保の巡視船「あまみ」。
この船が不審船から操舵室や船体に銃撃を受けた。


なぜでしょうか?
奄美沖といわれてもピンとこないのが実情だからでしょう。
不審船が最初に見つかったのは奄美大島沖北北西150キロ
といいますから、それはまあ沖合いかなと認めましょう。
しかし、沈んだのは奄美大島沖西北西390キロの地点。
390キロも行けば、沖縄はらくらく、
九州本土にも行けちゃう距離です。
東京からだったら名古屋や仙台よりも遠いのです。
もはや奄美大島沖という実感はありません。
そもそも沈んだのは中国の排他的経済水域内なのだから、
上海の東南東何キロと表現した方が多分適切なのです。
政治的配慮か何かよくわかりませんが、
事情があって奄美大島沖と表現されているのでしょうが、
 沖っていわれてもねえ……
というのが正直な感想。

今回の不審船騒ぎに奄美の人がさほど驚かないのには
それよりももっと大きな原因があります。
内地の人には「異例」な不審船も、
奄美では「よくある」ことなのです。
わたしがこの地に引っ越してきて間もなく、
地域の交番のお巡りさんが挨拶にお見えになりましたが、
そのとき配られたガリ版刷りのビラに、
「不審船や密航者を見つけたら通報しましょう」
と書いてあって、思わずのけぞりました。
元ちとせの出身地ということで一躍有名になった
瀬戸内町の嘉徳という小さな集落がありますが、
普段は地元のサーファーか海水浴客しか訪れないような
小さな浜の入り口に、
「不審な人、不審な船など、行動のおかしい人(船)
 を見たら聞いたらすぐ110番」
という看板が堂々と立っていて、妙な感じなのです。
こんな状態ですから、
 不審船のひとつやふたつでガタガタ言うんじゃねえ!
ってなものです。


嘉徳の浜に立つ看板。この手の看板は
いたるところの浜で見かける。


思うに、奄美の人みんなが目を光らせて
不審な人を通報し始めたら大変なことになりそうです。
なんてったって奄美は「不審な人」の宝庫だから。
夜な夜な山を出歩いたり、
昼間っから池をさらったりしているわたしなんか、
さしずめ「行動のおかしい人」の筆頭かもしれません。
信じてください。
ぼくはなんの破壊工作もしていませんので。



ところで少し宣伝をさせてください。
3月に新刊が2冊出ました。

1冊は角川書店から出た『非在』。
思わせぶりなタイトルですが、難しい本ではありません。
生き物がたくさん出てくる孤島物のミステリーです。

出版社名:角川書店
発売日:2002年03月08日
定価:本体1600円(税別)
ISBN:4-04-873367-2-C0093

もう1冊は世界文化社から刊行された『昆虫探偵』。
こちらはタイトルそのまんまの昆虫ミステリー。
昆虫界で起こる事件を昆虫の探偵が昆虫の論理で解決します。


出版社名:世界文化社
発行年月:2002年03月
定価:1,400円 (税抜)
ISBN:4-418-02503-0

   

2002-07-08-MON

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