その64 クリスマスに思う
12月25日はいわずとしれたクリスマスですが、
奄美にとっては別の意味で感慨深い日でもあります。
1953年12月25日に奄美群島は日本に復帰したのです。
あまり知られていないかもしれませんが、
奄美も沖縄と同じく一時期米軍の占領下にあったのです。
振り返ってみれば奄美は被支配の歴史を背負った地域です。
古代から15世紀くらいまでの間、
奄美はヤマトと中国の間を結ぶ交通の要衝として
重要な役割を果たしたと考えられています。
遣唐使もこの地に立ち寄ったことでしょうし、
大和朝廷との交流もあったはずです。
平和で豊かな奄美が最初に血塗られた歴史に染まるのは、
15世紀の半ばのこと。
琉球王国によって討伐されたのです。
以後17世紀の初頭まで、
奄美は琉球王国の「辺境」として、
厳しい支配を受けたと伝えられています。
琉球王国の次に奄美を支配したのが薩摩藩です。
1609年に侵攻した薩摩は
搾取者としてこの地に君臨しました。
奄美で栽培していたサトウキビから作られる黒糖は
薩摩藩の大切な財源となりましたが、
労働者にはいかなる見返りもなかったようです。
厳しい年貢の取り立てばかりか、貨幣の使用禁止、
本土との往来の禁止などの暴政圧政がまかり通り、
「区別」のために姓も一字に限定されました。
元(はじめ)、恵(めぐみ)、里(さと)など、現在でも
多くの一字姓を見かけますが、それはこの頃の名残です。
奄美は薩摩の「辺境」として、
苛酷な試練を強いられました。
そして次なる支配者が米軍です。
敗戦後北緯30度以南の島は
日本から行政的に分離されました。
日本の「辺境」として、切り捨てられたのです。
米軍の支配下に入ったのはなにも沖縄だけではありません。
覚えておいてください。
奄美群島もトカラ列島も小笠原諸島も、
一度は日本から切り離された暗い歴史を持っているのです。
奄美が米軍統治下にあったのは約八年間ですが、
その間、奄美との往来にはパスポートが必要だったのです。
カトリックの信者の多い奄美大島では、
クリスマスは浮ついたところなどひとつもなく、
教会でおごそかなミサが行われ、受難劇が演じられます。
驚くほど簡素で、地に足が着いている。
来年のクリスマスの日、
奄美は復帰50年の節目を迎えます。
ところで少し宣伝をさせてください。
3月に新刊が2冊出ました。
1冊は角川書店から出た『非在』。
思わせぶりなタイトルですが、難しい本ではありません。
生き物がたくさん出てくる孤島物のミステリーです。
出版社名:角川書店
発売日:2002年03月08日
定価:本体1600円(税別)
ISBN:4-04-873367-2-C0093 |
もう1冊は世界文化社から刊行された『昆虫探偵』。
こちらはタイトルそのまんまの昆虫ミステリー。
昆虫界で起こる事件を昆虫の探偵が昆虫の論理で解決します。
出版社名:世界文化社
発行年月:2002年03月
定価:1,400円 (税抜)
ISBN:4-418-02503-0
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