大橋歩さんと大貫妙子さんの対談より。

第6回 前向きに「飽きる」という方法。
── 「せーの!」で全員で録る方式は、
通常のレコーディングとは
どう異なるのでしょう。
大貫 ダビングといって、
楽器ごとに音を重ねて録っていきます。
たとえばギタリストは
ギタリストとして呼ばれて、
ジャカジャカって弾いて帰って行く。
そうなると、その曲、そのアルバムに
“参加した”気持ちが、
もう、ないじゃないですか。
アレンジャーの言うとおりに弾いて、
「OKですか」と訊いて、
「OKです」と言われて、
「あ、どうも、お疲れ様でした」と。
── 全体像が見えないままに、
職人芸を披露して帰って行く。
時給で雇われているみたいな感じなんですね。
大貫 私も、そういうふうに
ダビングしていくレコーディングを
やったこともあるけれど‥‥
やっぱり、つまらないな‥‥、と。
みんないちどに録るというのは、
70年代にはそういうレコーディングの
仕方だったんですよ。
── それが当たり前だった?
大貫 そうですね。
ただ、“初心に戻る”のではなくて、
そっちのほうが早いし、
いいというのも分かっているからなんです。
途中でいろいろな、玩具みたいなね、
テクノロジーがいっぱい出てきたので、
みんな、やって楽しんでたんです。
取り入れて‥‥
── それを使うことが楽しい時があった。
大貫 コンピュータとかね。
でも、それもちょっと
飽きちゃったんですよね、私。
坂本龍一さんのように使いこなせてない、
というのもあると思いますが、
ただ、ちょっと、もう、
そのレコーディングの仕方は飽きちゃった。
だって、いつもスタジオの中に、
アレンジャーと私とプログラマーだけがいて、
そこに誰かが来てレコーディングしても、
おたがい、つまらないし、
面白くないんですよね。
── ええ。
大貫 それで、みんなで録ったほうがいいや、
ということなんです。
── 「飽きちゃった」っていうのは
悪いことではないのですね。
さっき、大橋さんもおっしゃっていたように、
同じことをしていると飽きてしまうし、
仕事をしていくことが、つまらなく
なっていくわけですよね、多分。
大橋 そうですね。私の仕事は、
イラストレーションなのですけれど、
つまり「素材」なんですよね。
── 雑誌が1枚のレコードだとしたら、
さっき大貫さんがおっしゃっていた
ギタリストの役割みたいなことですね。
大橋 そうですね。で、さっき、
お話をうかがっていて思ったのは、
注文を受けて、そのものを描いて渡せば、
そこで私の仕事は終わるんですね。
それをどう使われるかというのは、
もう私の問題ではなくて。
ある日、仕上がったものをみると、
描いたはずの足が別の所にくっついている。
たしかにそんなようなことは
指示をすれば簡単にできますよね。
── ええ。
大橋 これはちょっと嫌だな、と思って、
「もう、広告の仕事は辞めよう」
と思ったことがあります‥‥。
だから、私、さっき、お話を聞いていて、
すごく、「あ、私の仕事でも
同じようなことがあるんだわ」
と思ったんですね。
── ええ。ええ。
大橋 「アルネ」でじかにいろんな方と
お話をするでしょ。
で、そのときの緊張感とか‥‥それって、
やっぱり、ものすごくだいじなことなんです。
ものを作って行くうえで。
大貫 そうですよね。だから、今回、
そうやってほぼ一発撮りで
レコーディングすると、
ほんとに緊張するんですよね。
大橋 ええ。
大貫 自分が間違えたらですよ‥‥
すごくいいノリで曲の後半にさしかかって
自分が間違えたら、
もう台無しじゃないですか。
だから、すごい集中力の元にみんながやって。
間違えても、1音ぐらいだったら
弾き直せるんだけど、
何かとんでもないことをやらかすと、
もう、台無しになっちゃうんですよね。
──そんな緊張感がある、いいものって、
なかなか最近ないんですよね。
大橋 そうですねぇ。
大貫 緊張感がないと駄目ですよね。
── 駄目なんでしょうね。
ふたり ええ!
  (次の更新は火曜日です!
 お楽しみに。)


 
illustration by 大橋歩   


●「アルネ」はこんな雑誌です。

「アルネ」は大橋歩さんが
企画から編集、写真撮影、取材まで、
ひとりでつくっている雑誌です。
2004年の秋と冬に出た、
第9号と第10号は、
こんな内容でした

アルネ 9
特集:
「小暮徹さん、
 台所の屋根の上に野菜をつくる」
大貫妙子さんの連載
「愛され続けた音楽」スタート。
2004年9月15日発行
税込525円
くわしくはこちらから。

アルネ 10
特集:
「赤木智子さんの家の仕事」
「村上春樹さんのおうちへ
 伺いました」などなど。
大貫さんの連載も!
2004年12月15日発行
税込525円
くわしくはこちらから。

おもとめは、全国の販売店
あるいは大橋さんのHPの
お申し込みページからどうぞ!
(このコラムでは、アルネのバックナンバーを
 順番に、ご紹介していきますね!)

大橋歩さんのHPはこちらです。


●「One Fine Day」はこんなアルバムです。

「One Fine Day」は大貫妙子さんの
3年ぶり、25枚目のアルバムです。

One Fine Day
2005.2.16発売
TOCT-25602
税込3,200円
1:船出
2:The Blank Paper
3:One Fine Day With You
4:Hiver<イヴェール>
5:Hello, Goodbye
6:Time To Go
7:De´ja` vu<デジャヴ
8:春の手紙 [2005 version]
9:Voyage<ヴォヤージュ>
10:A Kiss From The Sun

くわしくはこちらから。
おもとめは、全国のCDショップまたは
ネットショップなどでどうぞ!

大貫妙子さんのHPはこちらです。


●大貫さんが新ユニット
 「K'DO」を結成!
 この秋、Blue Note ツアーをしますよ!


写真は、左から、
森俊之さん(キーボード)、
沼澤尚さん(ドラム)、
大貫妙子さん(ボーカル)、
フェビアン・レザ・パネさん(ピアノ)、
沖山優司さん(ベース)。
この5人の音楽家があつまって
「K'DO」(カドォ)という
ユニットを結成しました。
この秋の、Blue Note、Motion Blueでの
セッションのためのスペシャルユニットです!
「K'DO」は「贈り物」を意味する
フランス語からヒントを得た造語だそうです。
さてこの5人で、どんな曲を‥‥?
フレンチからブラジリアンまで、
洗練されたポップスと、
インストゥルメンタルを予定しているそうですよ。
公演は‥‥
【モーション・ブルー・ヨコハマ】
  日時:9/14水,15木
  1st show: 6:30 pm 2nd show: 9:30 pm
  料金:¥ 5,775
  問い合わせ:045-226-1919
  http://www.motionblue.co.jp/
【名古屋ブルーノート】
  日時:9/27火, 28水
  1st show: 6:30 pm 2nd show: 9:30 pm
  料金:¥ 7,500
  問い合わせ:052-961-6311
  http://www.nagoya-bluenote.com/
【大阪ブルーノート】
  日時:10/ 4火, 5水
  1st show: 6:30 pm 2nd show: 9:30 pm
  料金:¥ 7,500
  問い合わせ:06-6342-7722
  http://osaka-bluenote.co.jp/


2005-07-29-FRI


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