子分になる才能がない

糸井 永ちゃんって、ずーっと、
上から命令されることのない場所にいるじゃないですか。
キャロルやる前の時代も含めて
上司みたいな人に「おまえこれやれよ」って
言われたことないですよね。
矢沢 うん。
糸井 その人生って自由に見えるけど、
じつは全部、自分で考えないといけないわけで。
矢沢 はっきり言ってね、
どっちがしあわせかわからんよ。
「人に命令されたことのない矢沢さんはいいねー」
って誰かが言ったとするよ?
‥‥何がいい?
どれだけ、それがきついか。
自分ですべてをチョイスすることのめんどくささ。
命令して欲しいよ、俺は。
命令してくれた方が、どれだけ楽だろうっていう
見方だってあるわけじゃない。
どっちがいいかは、わかんないよ。
糸井 絶えずつぎのこと考えなきゃいけないとかね。
それは、楽しいことかもしれないんだけど。
矢沢 いろいろだね。
苦しいし、楽しいし、みたいな。
糸井 いつそういう人になったんですか。
矢沢 いつ?
なんとなくじゃないの。
ただひたすらに。
糸井 知らないうちにそうなってた?
矢沢 知らないうちにこうなってたよ。
「オレは人の上に立ってやる」
と思ってやってたわけじゃないし。
自分がどこ転がってるのか、
よくわからないときってあるじゃない?
当然、こうしたいっていう欲求はある。
欲求があれば、
自分の欲求に反してるものがあったら、
直せと命令することもある。
気づいたら命令してるんだよね。
糸井 うんうん。
矢沢 命令するか、
自分が、相手のほうに寄るか。
いろいろだよ、それは。
だからいつの間にか、
こうなっちゃったんだろうな。
糸井 ちっちゃいころから、命令するタイプ?
矢沢 いやいやそんなことないけどね。
糸井 でも、子分じゃないでしょ。
矢沢 うん。
タイプ的に子分になれないんだね。
糸井 子分になる才能がない(笑)。
矢沢 ない。
子分の方が楽だと思うときもある。
とらえ方はいろいろあるだろうけど、
子分のほうが楽だとは思うよ。
糸井 でもやっぱり、「BOSS」なんだね。
あの、子分ってさ、BOSSからすると、
放っておくこともできるじゃない?
でも、「もっとこうしたほうがいいぞ」って‥‥。
矢沢 そうなのよ。
放っときゃいいのに、見えちゃうのよ。
糸井 「もっと、よくできるぞ」とか。
矢沢 そうそう。
気づいたら手取り足取り教えてるところあるよね。
あれ、よくないよね。
糸井 人の世話も焼くじゃん。
矢沢 あのね‥‥
キャメラに向かって言います。
糸井 笑うよ、これ(笑)。
矢沢 (自分の胸に手をあてながら)
すごくやさしいの、すごく面倒見いいし、
これ、冗談じゃないよ、本気本気。
糸井 ほんと(笑)。
矢沢 そうだよね。
糸井 ぼくが覚えてる話は、
ある日、永ちゃんとこの社員に、
朝、電話がかかってきて、
「はい」って出たら、永ちゃんからで
「おまえの家、探しといたぞ」って。
矢沢 (笑)
糸井 不動産の広告見て、
いまから電話番号言うから、電話してすぐ行けって。
ローン組めばおまえの給料でなんとかなるから、
いい物件だから行け、急がないとなくなるぞって(笑)。
矢沢 そんなことあったっけ(笑)?

(続きます!)




写真:富永よしえ [Mild inc.]

2007-06-07-THU