糸井
Itoi |
ドキュメンタリーのDVDを2回見たんですが、
練習についてコーチと
意見が分かれる場面がありますよね。
「もっと練習さえしてくれれば、
上位が狙えるのに‥‥」
ってコーチは言うんだけど、
あなたは練習場を出て行ってしまう。
でも、我慢して、練習して得るものと、
我慢しないで、よくわかんないけれども、
ずっとさまよって、帰ってきたときに
得ているなにかを比べると、
我慢せずにさまよったことで
得ているもののほうが
大きかったっていうふうに見えたんですね。
|
I saw your documentary DVD twice. There was a scene where you and your
coach disagree. Your coach tells you that you can place higher if you practice more, but you leave the rink. You could have restrained yourself and continued practicing, but you let yourself go. I thought that you had gained much more by letting yourself go, and then coming back after you had struggled on your own outside the rink, than what you might have gained by staying and practicing more. |
ジョニー
Johnny |
あのドキュメンタリーを撮っていたころは
じつは選手として最悪の時期で、
自分には特別な才能があるって知りながら
練習をサボってしまう自分っていうのもいて、
撮影されたものを後で見返しながら、
あそこでもう一日練習してれば、
あそこでもう一回ジャンプをやってれば、
と思ったりもしました。
本当のアスリートであれば、
両足が折れても戦うのがベストなんです。
ただ、一方で、アーティストとしては、
やっぱり、そのときに
インスピレーションがなかったら、
練習を重ねても意味がない。
もちろん葛藤はありますけれど、
あのアスリートとしてつらい時期に、
自分はどちらかというと
よりインスピレーションの方を
重視してきたんだなと思っています。
|
During the filming of the documentary was a very difficult time for me. It was probably the worst period of my career as a figure skater. I know that I have a special talent, but I can also be lazy. When I watched the documentary I would think, "if I would've practiced one more day" or "if I would've done one more jump." For a real athlete, it's best to fight even if you have two broken legs. But for an artist, there's no point in practicing if you're not inspired. My emphasis was always more for the inspiration even during those athletic difficulties. |
糸井
Itoi |
すでに何度もそういうことを考えて
しゃべってらっしゃるように思えますね。
|
I can see that you've been thinking about this over and over again. Have you already discussed this many times? |
ジョニー
Johnny |
いや、そんなことないですよ。
ぼくはなるべく、ひとつの問題を
考えすぎないようにしているんです。
フィギュアスケートというスポーツでは
なにをどんなふうに言うか、
ということについては
けっこうお約束があるんですけど、
それには従わないようにしてます。
自分のことについてはよい面も悪い面も、
明確な考えがありますから、
それをストレートに
表現すればいいと思っています。
|
No. I never take myself too seriously. There are understandings in my sport as to what and how to speak, but I never follow those rules. I have a clear opinion of myself, both good and bad, and I am very comfortable of expressing them. |
|
糸井
Itoi |
つまり、氷の上で滑っているときのあなたと、
ふだんのあなたを、同じようにしたい。
|
So, you seem like you would want yourself to be the same, both on and off the ice. |
ジョニー
Johnny |
‥‥ある面では、そうですね。
|
...In some ways, yes. |
糸井
Itoi |
「ある面では」。
そうじゃない面っていうのは?
|
Where would you want to be different? |
ジョニー
Johnny |
たぶん、生まれつき、ぼくはほかの人と
ちょっと違ってる思うんです。
氷の上で、最高の演技をするときはもう、
すべての感覚と感情が
魂(ソウル)からあふれ出してくる。
フィギュアスケートはぼくの表現であり、
芸術であり、絵であり、ファッションであり、
ぼくのすべて、ぼくの言葉なんです。
ぼくはそこで魂から伝えます。
氷から離れたとき、どちらかというと
ぼくは心(ハート)によって行動します。
ぼくにとって、魂と心は、違うものです。
魂は、生まれてからずっと自分の奥にあって、
死ぬとき最後にそれを感じるようなもの。
ハートは、「その人らしさ」をつくっている。
顔だったり、個性だったり、生きる力だったり。
氷の上にいるときは魂。氷から離れたら心。
そのふたつがあるのはいいことだと思います。
もしも、どんな場所でも同じ自分だったら、
飽きちゃうんじゃないかと思う。
|
I think I was born different. When I skate my best performances, all of my feelings and emotions come from my soul. Figure skating is my outlet, my art, my painting, my fashion design. It's how I speak, and I speak from my soul. When I'm off the ice, I think I act more from my heart". "Soul" and
"heart" are two different things for me. The soul is something that is inside you when you are born, and the last thing you feel when you die. But your heart is what makes you "yourself". It's what gives you a face; it's what gives you color. It's what
gives you vibrancy. For me, on the ice, it's "soul." Off the ice, it's "heart."
It's good to have both. If I were the same everywhere I would probably be bored. |
糸井
Itoi |
氷のせいだけじゃなく、
普段の方が暖かい感じがしますね。
|
You seem a little warmer off the ice, and I'm guessing it's not just because of the ice itself. |
ジョニー
Johnny |
そうですね(笑)
|
Yes, that's true. (Laughs) |
糸井
Itoi |
(まわりの乗組員に向かって)
いまの、ちょっとシャレ‥‥みたいな。
|
(To the staff) That sounded like a pun, didn't it? |
一同
All |
(苦笑)
|
(Wry smiles) |
|
ジョニー
Johnny |
年を重ねるにつれて、
ふだんの生活を送っているときも、
ひとと少し距離をとるようにしてきていて。
人に対して臆病になる、というのは言い過ぎなんだけど、
とくにオリンピックの時期は、
自分のエネルギーについて
とっても慎重にならなきゃいけないから。
年を重ねてわかってきたんですけど、
自分が暖かい場所にいるという感覚があると、
リラックスして、人とふつうにやっていけるんです。
どうしてそうなっちゃうのかわからないけど、
もしも自分が不快に感じると、
ぼくは人に対してとっても冷たくなってしまう。
でも、いまはすごく快適で、ご覧のように、
すごくリラックスして話せているんですが。
|
As I grew older, I learned to feel like I'm in a bubble. It's not exactly being cautious with people, but I had to be very careful about my own energy especially during the Olympic season. I found that as I got older, I need to feel like I'm in a very warm place to really let myself be normal. I don't know where this personality trait comes from, but when I feel uncomfortable, I can be very cold. Right now I feel very comfortable, so I can relax and be expressive. |
糸井
Itoi |
ずっと、笑顔が絶えないじゃないですか。
それがすばらしいなと思って。
真面目なことを言うときにも、
なんかいい笑顔で語ってらっしゃる。
それって、誰にでもできることじゃない。
|
I'm also impressed with your smile. You have a very nice smile, even when you are discussing a serious topic. That's not something everyone can do. |
ジョニー
Johnny |
どうせ一度きりの人生なんだから、
笑って生きたいなと思ってます。
そりゃつらいこともありますけど、
笑顔でいれば、あとで強くなれると思う。
人生で起こるすべてのことは、
その人になにかをもたらすと思うんです。
だから、悲しいときも、泣いてるときも、
いろんなことが台無しになっても、
泣いてるときも、笑顔で。
いつも笑顔でいることが大事だと思う。
|
If you live one time, I think you need to have a smile on your face. Even if you face difficulties, it makes you stronger afterwards. I believe everything in life is beneficial to you as a person. So, even if you are sad and crying, or when everything is a mess, I think having a smile on your face is important. When you cry, you smile too. |
糸井
Itoi |
うん、うん。
|
I see, I see. |
ジョニー
Johnny |
泣いてるときも、笑顔。
糸井さんも、そうじゃないですか?
|
Even when you cry, you smile at the same time. Isn't it the same for you, too? |
糸井
Itoi |
そうですね。
|
True. |
ジョニー
Johnny |
泣いてるときも‥‥
ほら、笑顔で。
|
It's like this. (Pretends he's crying with a smile on his face) You see? |
糸井
Itoi |
うんうんうんうん、そうですね。
あああ、いいなぁ(笑)。
|
Yes, yes, I see. I love it! (Chuckles) |
一同
All |
(笑)
|
(Laughter) |
|
To Be Continued......
|