ホームランを打ってから考えたこと。

第2回 目立ちたい気持ち?
- 糸井
- 「あなたには目立ちたいってことはないんですか?」
って聞かれたら、
「ものすごくありますよ」って言うんじゃないですかね。

- 糸井
- ただそれはどういう種類のものなんでしょうねと言うと、
「いや、いいかも、要らないかも」(笑)っていう。
- 古賀
- それは、それこそ30ぐらいの時に、
目立って痛い目に遭ったりした経験があるから…
- 糸井
- じゃないですね。
一番目立ちたがりだったのって
高校生じゃないですか。
- 古賀
- はいはい(笑)
- 糸井
- 高校生の時っていうのは、
何をしてでも目立ちたいわけで。
みんな俺をもっと見ないかなって、
言葉にすればそういうこと思ってるのを、
服装にしてみたり(笑)
それは自然ですよね。
でも、やっぱり嬉しいのは何かっていったら、
近くにいる人にモテちゃうことの方が嬉しいんですよね。

- 古賀
- はいはい。
- 糸井
- 目立ち方として、
僕みたいな加減で目立ちたがったり、
目立ちたがらなかったりしてるという例が、
古賀さんの世代の人に
見えるっていうことについて、
気づいてますよ。
そんなにガツガツ目立とうとしなくても、
1つの面白い世界はやれるんだなっていうのは、
若い人達が僕を見てた時に、
いいなって思うってくれる理由の1つですよね。
例えばアイドルグループの子達だって、
すごく人気があるとしても、
実際の個人としてモテてたわけじゃないでしょ。
- 古賀
- 遠くでモテて。
- 糸井
- そうなんです、距離なんですよ。
お客さんが
5万人の会場を埋め尽くしてるはずじゃないですか。
- 古賀
- でも遠くの5万人とか遠くの50万人に
モテてる俺っていうのを喜ぶ人も
確実にいますよね。
- 糸井
- それはものすごく面白いゲームだし、
僕なんかの中にそれはなくはないんだけど、
古賀さんの本を何人読んでくれてるって、
まさしく100万人。
それは「ええー?」っていう嬉しさがあるじゃないですか。

- 糸井
- 俺、仕事でそんなもの見たかというと、
実は仕事でそんなもの見てないんですよ。
100万部なんてもう絶対ないし。
だから何が大きい数字かなっていうのは
自分の中で宿題ですね。
エベレストの麓で、
「やあ登れないけど、これかあ」って思うみたいな。
- 古賀
- エベレスト?
- 糸井
- 古賀さんが、「お金なんかないですよ」って子に
「ちょっと今儲かったから連れて行ってあげます」って、
ヒマラヤが見えるとこに立って
「なあ」って言うと、
その子が「ほんとだあ」って言うじゃないですか。
その、ほんとだが、自分以上に嬉しいですよね。
この間あったじゃない、それ。
- 古賀
- はいはい(笑)はい。うちの子が、はい。
- 糸井
- ヒットしたんだよね。あれですよ。
- 古賀
- そうですね、あれは気持ちいいですね。
自分のこと以上に全然、
会社の子が10万部いって、それは嬉しかったですね。
- 糸井
- それは嬉しいと思いますよ。
人が喜んでくれることこそが自分の嬉しいことですっていうのを
綺麗事として言葉にしてしまうと、
すごく通じないんだけど。
でも実際にある。
そういう経験をすればするほど、
人の喜ぶことを考えつきやすくなりますよね。

- 古賀
- 僕、今回、ミリオンセラーというのを初めて
経験してわかったのは、
みんな全然知らないんですよ、
『嫌われる勇気』っていう本のこととか…

- 糸井
- とかね(笑)
- 古賀
- やってみる前はミリオンセラーって
あまねく人達の所に届くもので…
- 糸井
- 大騒ぎしてるから。
- 古賀
- って思ってたんですけど、
みんな全然知らないし、誰にも届いてないなって。

- 古賀
- もちろん100万人という数はすごいんですけど。
聞きたかったのは、糸井さんの中で、
ヒットするとかっていうのは、何か自分の中で、
こういうものだというのあるんですかね。
- 糸井
- 『ほぼ日』始めてからは、もうヒット多様性になりましたね。
- 古賀
- ヒット多様性。
- 糸井
- 生物多様性みたいに。
これもヒット、あれもヒットになりました。
- 古賀
- それはコンテンツ毎に、これのヒットは
このぐらいの基準でというのが何となくあって。
- 糸井
- 全てがコンテンツですということを
言い始めて気付いたんですけど、
金銭的に言ったらマイナスでもヒットのことはある。
何がヒットかっていうのも説明できるわけですよね。
みんなが既に持ってる価値観じゃないところに
自分の価値観を増やしていくというのが、
たぶん僕は『ほぼ日』以後するようになったんでしょうね。

- 糸井
- 100万部に対して5万部はヒットじゃないかというと、
5万部もヒットですよという言い方あるんだけど、
やっぱり100万部があることでの
信用度とか発言権とか、
それを持つと次に出した時には、
そこと掛け算になって、打ちやすくなりますよね。
それはとっても大事なことなんだと思うんですね。
- 古賀
- はい。
- 糸井
- 古賀さんっていう、僕は黒子ですって言ってた人、
かける、100万部だから。
2冊目は、だからもう既に、100万部の古賀が。
面白いとこだよね。
- 古賀
- 面白いですね。
- 糸井
- 立て続け感が、すごく面白いんですよね。
- 古賀
- (笑)そうだなあ。糸井さんの中では、
一山当てたいみたいな気持ちはあるんですか。
- 糸井
- 小さく、だから、今のヒット論みたいに言えば、
いつも一山当てたいです。
楽になりたくて仕事してるわけだから。
- 古賀
- それ、おっしゃいますよね。
- 糸井
- 苦しくてしょうがないわけですよ、僕は。
めんどくさいし。
- 古賀
- 『ほぼ日』始められた頃に、
働くことが流行ってるというのを
書かれてたじゃないですか。
あの時期と今とは、
仕事に対する感覚って違うんですか。
- 糸井
- あの時期も、我慢してたんだと思います。
明らかに我慢してたし。
でもそれをやりたくて、
楽しくてやってるわけだから、
いいんですよ。
- 糸井
- それと同じで、『ほぼ日』始めた時に、
『ほぼ日』っていう、まだ名前もない頃から、
こういうことって面白いぞと思ってたんで。
その時の気持ちは、ちょっと形を変えてますけど、
実は似てますよね。
ずっと1つずつの仕事については、
ああ嫌だ嫌だ。
- 古賀
- (笑)まあそうですよね。
僕も本書くの嫌です(笑)

- 糸井
- 楽しくないですよね。
- 古賀
- うん、楽しくないです、本当は(笑)。辛いです。
- 糸井
- 辛いですよね。
- 古賀
- 辛いです、ほんとに辛いです。
- 糸井
- 敢えて言えば、仕事嫌いなのに、
こんなにいろいろ手出して、
ね、人から見たら、
よく頑張ってるなっていうぐらいはやってるって、
何でしょうね(笑)
- 古賀
- いや、ほんとにそれわかんないんですけど。
うーん。例えば僕、三連休とか、仮に休んだとしたら、
やっぱりもう1日半ぐらいで
仕事のことを考えちゃうんですよね。
それはワーカーホリックなのかと、
ちょっと違うんですよ。
目の前に何か課題があったら
解かずにはいられないみたいな感じが
近いのかな。

- 糸井
- まあ、古賀さんもここまで、
僕の年までの間がものすごい長いですから、
いっぱい面白いことありますよ。
- 古賀
- 楽しみです。
- 糸井
- 楽しみだと思うんですよ。
そう楽しみにされるようなおじさんで
いたいですよね。