僕も、本のライターとは
いったいどういう仕事なのかってことを
もっと声高に言った方がいいのか、
裏方の人間として、
このまんま、誰かの考えを広める
「拡声器」の役に徹しているのがいいのかは、
まだちょっとわからなくて。

極端な話ですけど、糸井さんは以前、
「たった１行で、そんなにお金もらえていいね」
みたいに言われることが、
あったと思うんです。

「業界のために」っていう言いかたを、
ものすごくするんですよ。

たとえば、サーカスの団長だったとします。
「これからもサーカスの火を絶やさずにいましょうね、
ほんとうにサーカスっておもしろいですから」
っていうのは、自然に言えますよね。

でも、それは、
「今後、サーカスを支えていくだれかのために」
っていう気持ちと、
サーカス業界全体がうまくいっていたほうが
じぶんもうまくいく、っていう気持ちが
混ざってるんですよね。

だから、業界のためって
声高に言っていると、じぶんでもじぶんの本音が
わかんなくなっちゃうと思うんですよね。

ぼくも、「コピーライターって仕事は、すごいもんだぞ」
ってだれかが言ってたら、
相乗りして言ってたんだけど……
あれは何だろうなぁ……、
ほんとかな？　と思ってますね。

でも、ライターとかコピーライターって、
もしかしたら、ほかの仕事でもいいかもしれない。
たとえば古賀さんが、すごく自転車を好きになって、
すごくすてきな自転車屋をつくって、
どんどんうまくいったとして、そしたら
「ライター？　うん、たまにやりたくなるんだよね」
って言うかもしれないでしょ。

例えば10年前、20年前くらいに
自分が新人だった頃は、
かっこいい先輩たちがいた。
はたしていま、自分たちは
そんなふうになれてるんだろうかと思うと……

やっぱり昔の思い出のほうが、
かっこよく見えるんですよ。

でも、今の糸井: さんの話を聞いて、
もしこれを三日三晩自分に問いかけたら（笑）

でも、それを「よくないこと」と片づけてしまうのは、
あまりにももったいないとも思うんです。
それは原動力だから。