糸井 |
いやー、しかし、
1曲ずつ聴いていってもぜんぶ話せるなぁ。
すごいね、このアルバム。
込められてる量が、もう。 |
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ボーズ |
そうですね。
いま思っても、やっぱり。 |
糸井 |
この濃さは、すごいでしょ。 |
ボーズ |
このときは、でも、ほんとに、
ずーっと、こういうことを考えてましたね。
こんなことばっかり、何ヵ月も何ヵ月も。 |
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糸井 |
ああー。 |
ボーズ |
で、すごく売れてもないので、ヒマで。 |
糸井 |
あ、そうなんですか。 |
ボーズ |
ぜんぜんヒマで。
1ヵ月に取材が2本だけ、みたいな頃。
だから、ずーっと、3人で会って考えてる。 |
糸井 |
飯は食えてるんですか、それで。
バイトしてたりはしてないんですか。 |
ボーズ |
バイトはしてないんですけど、
そもそも、お金を使わないですよね。
会って、おやつ食って、
ジュース飲んでるだけなんで。 |
糸井 |
ははははは。 |
ボーズ |
で、酒も飲まないし。
お金は一切かかんなかったですね。 |
糸井 |
安上がりなんだ。 |
ボーズ |
夜中じゅう遊んでつっても、
千円ぐらいでみんなで遊んでるような。 |
糸井 |
ファミコンやり放題だしね。 |
ボーズ |
そうですね。
ずっと『マリオカート』やってる
ぐらいのことなんで。 |
糸井 |
そのヒマさと、考えの深さとが、
間違いなく、このアルバムをつくってるね。
ジャケットにもそれが表れてると思う。
このしりあがり寿さんのイラストは、
自分たちのアイディアで? |
ボーズ |
そうですね。
このアルバムからは、自分たちで
プロデュースもぜんぶしてたから。 |
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糸井 |
そういえば、このアルバムとの
最初の出会いって、
いわゆる「ジャケ買い」なんだよ。 |
ボーズ |
えっ、そうなんだ(笑)。 |
糸井 |
うん。いま、思い出した。
だってさ、考えてみたら、
オレとスチャダラパーって、
縁、ないじゃん。 |
ボーズ |
ははははは、そうッスね。 |
糸井 |
あのね、六本木にWAVEっていう
レコード屋があったんだよ。 |
ボーズ |
はいはいはいはい。 |
糸井 |
で、そのビルの上に、
のちに『MOTHER2』をつくるチームの
母体になる会社があった。
で、その行き帰りに、
いや、その時期じゃないか?
まぁ、ともかく、六本木のWAVEで
このアルバムを見かけたわけ。
で、ジャケットが妙に気になって買った。
スチャダラパーっていう
名前ぐらいは知ってたような気がするけど。 |
ボーズ |
そうなんですか。 |
── |
ボーズさんと糸井さんが
直接、最初に会ったのは? |
ボーズ |
え、どうだろう。 |
糸井 |
マガジンハウス系の雑誌じゃないかな。 |
ボーズ |
あー、雑誌でしたかね。
でも、糸井さんがほんとに
すごい気に入ってくれた、
みたいなことがきっかけだったのは
覚えてます。 |
糸井 |
これ(『WILD FANCY ALLIANCE』)ですよ、
これ。 |
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ボーズ |
これだったんですね(笑)。 |
糸井 |
ものすごく気に入ってましたから。
さっきも言いましたけど、
車のなかに入れてずっと聴いてたし、
その後も、何枚も買ってるんですよ。
で、これいいよって言って
人にあげたりしてた。
惚れてましたから。ほんとに。 |
ボーズ |
うわー(笑)、もう、
すっごい、ありがとうございます。 |
糸井 |
いや、こんなに惚れても
印税が変わったりしないですからね。 |
ボーズ |
ははははは。
しかも、まぁ、大して売れてないですから。 |
糸井 |
そうなんだってね! |
ボーズ |
はははは。 |
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糸井 |
不思議だなぁ、こんなにいいのに。
つぎの曲を聴きましょうか。 |
── |
つぎはこちらです。
『Trio The Caps』。 |
<『Trio The Caps』を再生し、聴きながら‥‥>
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ボーズ |
これはシングルにした曲ですね。
いかにもラップっぽくつくったやつで、
これもね、なんか、根っこには、
怒りみたいなものがありますね。 |
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糸井 |
ああー。
『クラッカーMC'S』の動機に
ちょっと近いような。 |
ボーズ |
そうです、そうです。
なんていうのかな、
「ラップって、こういうことでしょう?」
みたいなことを安易に言われるのが
イヤっていうか、すごい面倒で、
ここではそう言われるようなことを
わざと言いつつ、かつ、でも、
ちょっと違う感じも出すっていうことが
やりたかったんですよね。 |
糸井 |
そのへんの姿勢は徹底してるね。
つまり、勝手に決めつけられて、
がんじがらめになるのが、
とにかくイヤっていうか、
そこからは逃げたいっていうか。 |
ボーズ |
そうですね。
とくにラップって、なんか、
イメージのされ方がひどいから。
「ラップやってる人っていうのは、
みんなダンスとかやるんですか」みたいな。 |
糸井 |
ああー(笑)。 |
ボーズ |
「いや、ぼくら、
とくに踊らないです」っていうね。
そういうギャップって、
なかなか伝えにくいんですよ。
だから、そのへんのことを
ラップやってるふりして伝えようっていう、
ややこしい曲なんですけど。 |
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糸井 |
つまり、うその自己紹介ですね。 |
ボーズ |
そうですね。
ラップの基本的な形に乗りながら、
ぜんぜんちがうことを言ってる。 |
糸井 |
構造としては、手塚治虫のマンガに、
手塚治虫が顔出しちゃうようなもんで。 |
ボーズ |
あはははは。 |
糸井 |
そんな、ややこしい、
トリオ・ザ・キャップスの人たち。 |
ボーズ |
あの、今日、聴き返してて、
自分でわりと好きだったのが、
これも細かいところなんですけど、
ラップで3年やってるっていうことの例えで、
「目安で言うと、
高3だったシンコも大学1年生」
っていうところで、
高3だったシンコが3年経ったら、
ほんとは大学3年のはずなのに、
浪人してるとか。 |
糸井 |
ははははは、ほんとだ。 |
── |
ほんとだ(笑)。 |
ボーズ |
そういうことが、
こっそり入ってるのが好きですね。
そういう、ちょっとしたことが、
このアルバムは全体にありますね。 |
(つづきます) |