<『後者 -THE LATTER-』を聴きながら> |
ボーズ |
この『後者』と、つぎの『ついてる男』は
ふたつでセットみたいな関係で。 |
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糸井 |
ああ、それはよくわかります。
まず、最初が『後者』ですけど‥‥
うーん‥‥これも、見事ですよねぇ。 |
ボーズ |
ははははは。 |
糸井 |
ようするに、アニくんとボーズくんが
1行ずつ、極端に違うキャラのことを
言っていくわけだけど、いいんだよなぁ。
「竹を割ったような性格」に対して
「竹を割るような生活」(笑)。 |
ボーズ |
ま、ダジャレっていうか、
ことば遊びではあるんですけど。
漫才とかってこういうの、多いじゃないですか。
「え、竹を割るような生活?」
「竹を割ったような性格だよ、バカ」みたいな。 |
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糸井 |
はいはいはい。 |
ボーズ |
そういうことを
ずらっと並べてみたくって。 |
糸井 |
いまのお笑いでいうと
ナイツみたいな感じですね。 |
ボーズ |
あ、そうですね。
そういう、漫才でいえば、
わりと基本的なパターンをやりつつ、
で、まぁ自分たちっていうか、
アニを中心としたスチャダラみたいなものは、
「後者」であるというか。 |
糸井 |
「後者」ね。「THE LATTER」。
あの、タイトルは二の線だよね。
言ってることはしょうもないのに(笑)。 |
ボーズ |
あ、そうですね(笑)。
そのバランスもやっぱり好きなんですよね。
この内容でタイトルまでバカバカしいと、
単なるおもしろ狙いになりすぎちゃうというか。 |
糸井 |
うん。スチャダラパーって、
そのへんの様式の守り方というか、
バランスをすごくうまくとってますよね。 |
ボーズ |
それは、意識してます。
たとえば、その、嘉門達夫さんって
ぼくら、好きなんですけど、
自分らがつくる曲は、
嘉門達夫さんみたいな曲には
しないようにしようと思っていて。 |
糸井 |
はーーー、なるほど。 |
ボーズ |
ああいうのが好きなんだけど‥‥。 |
糸井 |
ちがうんだよね。 |
ボーズ |
あれは、替え歌として、
おもしろみ追求をとことんやってるというか、
笑わせることが勝負、
みたいなことだと思うんですけど、
ぼくらはそこに挑んでいく性格でもないし。 |
糸井 |
うん(笑)。 |
ボーズ |
たぶん、つくってるときの気分は、
ぼくらと嘉門達夫さんって
あんまり変わんないと思うんですけど。 |
糸井 |
いや、よくわかる。
で、この『後者』から‥‥。 |
ボーズ |
『後者』からの『ついてる男』へ。 |
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<『ついてる男』を聴きながら> |
糸井 |
この2曲がセットっていうのは、
言われてあらためて聴いてみると
よくわかるね。 |
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ボーズ |
そういう、2曲でセット、
みたいなものをつくりたかったんですよね。 |
糸井 |
これも、極端なふたつを対比するように
アニくんとボーズくんがやるっていう。 |
ボーズ |
そうですね。
こっちは、漫才というよりは
落語っぽいっていうか。
あとは、展開に応じて曲調を変えていくというか、
流れを演出していくとおもしろいんじゃないか
っていうアイディアがあって。 |
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糸井 |
それも先に決めてた? |
ボーズ |
先ですね、完全に。
アニがなんでもプラスにとっちゃう
ちょっとおかしい人にするっていう
歌詞のアイディアと、
それを曲調で演出するっていう。
だから、曲はあとからつけたと思います。 |
糸井 |
やっぱ、ロジカルだねぇ、そのへんは。 |
ボーズ |
そうなんですかね。 |
糸井 |
構造としては、要するにこれ、
なんでもマイナスに取っちゃう人と、
なんでもプラスに取っちゃう人がいて。 |
ボーズ |
そうです、そうです。 |
糸井 |
で、おもしろいのは、
このふたりの真ん中の範囲に
ほとんどの人がいるってことだよね。 |
ボーズ |
そうですね(笑)。
だから、どっちかが常識人っていうよりは
どっちもちょっとおかしいっていう
状態にしたかったんです。 |
糸井 |
うん、うん。 |
ボーズ |
プラス思考すぎるアニは
あきらかにおかしいけど、
そんなになんでもマイナスに取るのも
ちょっとおかしいだろうっていう。 |
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糸井 |
そうだね(笑)。
「ネガポジ 逆転
ケンちゃんポーズで きめ!!!」
どうでもいいんだけど、オレね、
この「ケンちゃんポーズ」っていうのが、
ちょっと世代がちがうから、
よくわかんなくてさ。 |
ボーズ |
あ、この「ケンちゃんポーズ」っていうのは、
のちの「アイーーン」なんですけど。 |
糸井 |
え? |
ボーズ |
「アイーーン」って、
志村さんがやりはじめたとき、
「アイーーン」って
言わなかったんですよ、まだ。 |
糸井 |
へぇ、そうですか。 |
ボーズ |
志村さんは、ただ無言で歯をむいて、
(アゴの下に手を水平に構えながら)
こうやってたんですよ。 |
糸井 |
「アイーーン」は? |
ボーズ |
あとから「アイーーン」って
言い出したんです。
ぼくらは当時から志村さんの
あのポーズが好きだったから
「ケンちゃんポーズで、きめ!」
って言ってたんですけど、
いまだったら、「アイーーン」って
ふつうに使ったと思いますよ。 |
糸井 |
へーーー、あ、そういうことですか。
じゃあ知らなくっていいんですね。 |
ボーズ |
聴いてるだけじゃわからないと思います。
で、ぼくらのライブを観に来ると、
ぼくらが「アイーーン」ってやってるんで、
なるほどこれか、とわかるみたいな。 |
糸井 |
そっかぁ。 |
ボーズ |
そういう、ライブ観ないと意味わかんない、
みたいなことも、なんか好きなんですよね。 |
糸井 |
今日までぼくはわかんなかった。 |
ボーズ |
だいたい、
ぜんぶわかるはずないですから。 |
糸井 |
そうだよねぇ。 |
(つづきます) |