<『彼方からの手紙』を聴きながら>

糸井 ‥‥‥‥これねぇ。
これは‥‥逆にもう‥‥
言えなくなっちゃった。
ボーズ ははははは。
糸井 いやー、この曲はもう、
ほんとに、どんだけ、
おもしろがってるかなぁ‥‥。
ボーズ (笑)
糸井 あらゆる旅のときに、思いますね。
ボーズ そうですか。
糸井 うん。
いい景色を見たら、思いますね。
ボーズ あ、いいですねぇ。
糸井 もう、友だちを思うんじゃなくて、
歌を思う。
ボーズ ああー、へぇー。
糸井 水がちょろちょろしてると、思います。
ボーズ はははははは。
糸井 というくらいに(笑)。
ボーズ ありがとうございます。
これはほんとになんか、パッと、
「手紙」っていうアイディアを、
思いついたっていうか。
「お元気ですか いかがお過ごしでしょうか?」
と書き出して、
「それだけ書いて 筆を置く」って
終わる曲だとおもしろいなと思って。
糸井 そうか、手紙の形式っていうのが、
先にあったんだ。
ボーズ そうですね。
で、みんなでどっかに行ってる
っていう意味もそこから出てきて、
みんなでたのしいことやってるときに、
なんか、この空間にあいつがいないことが
ほんとにもどかしいみたいなことを歌詞にして。
糸井 ああ、ああ。
ボーズ なんで一緒にこういう状況になれないんだろう、
みたいなのっていつもあるじゃないですか。
「なんで来てないんだよ、あんとき」
みたいな(笑)。
糸井 うん、うん。
ボーズ そういうことを、
いい歌みたいにして伝えられたら
おもしろいなと思って。
糸井 うん。間違いなく、いい歌ですよ。
ボーズ (笑)
糸井 これは、あの、ぼくはこの歌について、
いろんなところで、いろんなふうに、
言ったり書いたりしてるんだけど。
ボーズ はい。
糸井 たとえば、そのうちのひとつはね、
やっぱり、いろんな表現って、
時代の制約の中で、もちろん変わってくるし、
その表現を本職としている人だって
時代とともに当たり前に変わるという話で。
たとえば、いまの時代にはもう、
石川啄木みたいな人はいないわけで、
その職業の人って、いることになってるけど、
いまは違う商売をしてるんだよ。
ボーズ うん、うん。
糸井 だから、たとえばいまは
ラッパーと呼ばれる人たちが、
石川啄木や中原中也の代わりに、
こういうことをやってるんだなぁって思う。
ボーズ うん、うん。
糸井 いろんなものを、長く見ていると、
枠組みが外れていったり、
ばらばらになったものがもう一回
集合したりっていうことが起こるんだけど、
この歌に出合ったときにね、
そういう意味で、ちょっとジーンとしたんですよ。
ボーズ おー。
糸井 そして、もうひとつは、
ほんとにくり返し言ってることなんだけど、
「能力とか機能で人を選ばない」
っていうことを言うときの例えとして、
しょっちゅうこの歌をイメージしてる。
要するに、「あいつがいたらなぁ」
って思われるやつが、
やっぱりチームとしてすごく大事で、
ほんとに、組織のなかの機能として
見たときにはなにもできてなくてもいいと
ぼくは本気で思ってるんです。
っていう話をするときにね、
ぼくは、この歌のイメージで考えるんです。
もう、そういうことを、
何回言ってるかわかんないですけどね(笑)。
「ほぼ日」のなかにも、何度も書いてると思う。
ボーズ それ、読みました。
書いてもらってすごくうれしかったです。
糸井 もう、ほんとに、この曲は、いいねぇ(笑)。
ボーズ ありがとうございます(笑)。
あの、なんかね、ぼくら、この曲を、
ライブであんまり
やらなかった時期もあるんです。
でも、最近はすごい好きで、よくやりますね。
なんか、自分たちに対する手紙のような気もして。
糸井 ああーーー。
ボーズ なんかそれを、すごい思うんですよね。
糸井 昔の自分が呼んでるともいえるよね。
ボーズ そうなんですよ。
だからなんか、けっこう、
いいっていうか、おもしろいっていうか、
好きですね、なんか。
糸井 なんていうか、聴くと、昔の自分たちが
確認できるのかもしれないですね。
ボーズ そうですね。
やっぱり、このアルバムを久々に聴いてみたら、
わぁー、おもしろいことばっか
必死で考えようとやってたんだな、
みたいなのが、すごい伝わってきて。
糸井 ああー、うん。
ボーズ なんていうか、
それを裏切っちゃいけないな、みたいな(笑)。
そういう気持ちはありますね。
糸井 だから、これ、自分たちの
憲法みたいなアルバムなんだね。
ボーズ そうなんですよ。
そう、ほんとにそうです。
糸井 ねぇ。
ボーズ また、いま歌うと違うよさもあって。
この「手紙」って、魅力的な誰か、
いろんな友だちに向けて書いてるんですけど、
当時、ぼくらが思い浮かべてた人たちって、
いまだに友だちだったりもするんですけど、
やっぱり、いまは、なかなか
いっしょに遊べなかったりするんです。
糸井 ああー。
ボーズ だから、いま歌うと、なんかグッとくる(笑)。
糸井 うん。なんていうか、この歌は、
いろんなことを考える
着火剤みたいなものになるんですよね。
ボーズ ああ、なるほど。
糸井 よくできたね、こんな歌が。
   
(つづきます)

 

2010-08-27-FRI



前へ   次へ




 
     
 
感想を送る ほぼ日ホームへ