糸井 |
じゃあ、ここにいる人たちは
歳が10ずつちがうというわけですね。
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都築 |
そうですね。
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糸井 |
だけど田島くんだって40過ぎてるわけですから、
そのまた10歳下の奴に対して
酒場で「おまえなぁ」とか
言ってんでしょ?
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都築 |
「座れ」みたいな感じで。
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田島 |
そうですね、10違うと、そうかも。
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糸井 |
田島くんにとって
10違う子は何歳ですか。
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田島 |
34歳です。
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糸井 |
それは、説教しがいのある歳ですねぇ。
そういう人に対して、
みうらさんあたりはもう
高僧のように説教してるでしょ。
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みうら |
いや、ぼくは、
説教してるつもりはないんですよ。
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糸井 |
‥‥‥‥有名ですよ。
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みうら |
そんなこと、一回もなくて。
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一同 |
(笑)
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みうら |
ぼくはただ、酒場で
糸井さんから聞いた話をしてるだけなんですよ。
つまりここで大事なことは、
「糸井さんから聞いたときには
俺は説教だと思わなかったのに、
自分がおなじ話をすると、説教だと言われる」
ということです。
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都築 |
なぜなんだろう。
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糸井 |
それで、まったく
迷惑してるんですよ。
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都築 |
迷惑ですか。
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みうら |
なんで迷惑ですか。
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糸井 |
みうらが話をおもしろくするために、
俺のことをとんでもない奴として話すから、
下の世代がみんな
俺のことを怖がるんです。
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田島 |
なるほど。
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みうら |
いや、怖いのは怖いですよ、
糸井さんは。
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糸井 |
怖がってるのは、こいつだけなんです。
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みうら |
ぼくは怖がってた。すごい怖がってた。
いまでも怖がってる。
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一同 |
(笑)
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みうら |
糸井さんという人は、いつも
ひとつしかない
真理を言うわけですから。
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田島 |
たとえば、どんなことを?
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みうら |
「読者はなめるな」とか、
そういうことです。
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糸井 |
‥‥みうらは
いつもすごくでかいミットで
俺の球を待ってるんですよ。
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都築 |
受け止めるほうの態勢が
そうである、と。
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糸井 |
しかも、目を読まれないように
ミットで顔を隠してます。
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みうら |
糸井さんの前に出ると、つい‥‥。
この前も、銀杏ボーイズの峯田(和伸)くんに、
「みうらさん、
いつもとちがうじゃないですか、
どうしたんすか」
と言われる始末でした。
「なんであんなにおどおどしてるんすか」
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糸井 |
じゃあいったい、
峯田くんの前では、どうなわけ?
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みうら |
普通にしてますよ。
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糸井 |
えらそうに言ってるわけじゃない?
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みうら |
言ってないですよ。
酒飲んで、吐いて
峯田くんに背中さすってもらって、
「みうらさん、それでいいよ、その生き方で!」
と言ってもらいながら
家まで送っていただいたこともあります。
そんな夜があったくらい、
ぼくはえらそうにはしてないですよ。
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糸井 |
吐くと友達になるわけ?
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みうら |
吐き合うとなります。
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一同 |
(笑)
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都築 |
糸井さんはやっぱり
お酒は一杯も飲まれないんですね。
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糸井 |
飲まないです。
気持ち悪くなっちゃうんですよ。
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みうら |
だけど、最初の糸井さんの単行本は
『スナック芸大全』だったじゃないですか。
ですから、ものすごく
飲む人だと思ってました。
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都築 |
ぼくもそうです。
てっきりそう思ってました。
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糸井 |
それは、
いろんな誤解のうちのひとつですね。
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一同 |
(笑)
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みうら |
でも、糸井さんは
飲んでない分、怖いですよ。
飲んでる人は、怖くないです。 |
糸井
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ああ、そうだね。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
飲んでたら、
喧嘩しても痛くないもんね。
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みうら |
大島渚さんと野坂昭如さんが
テレビカメラの前で
マイクを頭にゴーンとぶつけられた、
あの騒動、
あの幻想が、
なぜか俺にはずっとあるんです。
あれが、自分にとって
「いい大人」を見たはじめての経験でした。
あのせいで、平和に終わる飲み会を
つまらなく感じてしまうんですよ。
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糸井 |
どうですか、客として、この人は。
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都築 |
ちょっとどうでしょうか‥‥
いまの若い子は、
ケンカなんかしないですから。
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田島 |
あんまり、しないです。
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糸井 |
みうら、
ケンカバーっての、作ればいいよ。
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みうら |
いやいや、そういうことになると、
強い人が来ちゃうじゃないですか。
ぼくは、
「弱いくせに口論の結果ケンカになった」
ということがしたいんですよ。
「しょうがなくやった」というのがいいんです。
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都築 |
はははは、
深いですねぇ。
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糸井 |
だけど、ケンカは
店にとっては困りますね。
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田島 |
ケンカと、吐くのはね。
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みうら |
だけど、俺は
峯田くんが背中をさすってくれた日を境に
ぜんぜん吐かなくなりました。
フケとゲロは出ないですよ、もう。
きっと歳とったんでしょうね。
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都築 |
フケも歳で出なくなりますか?
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みうら |
ええ。
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糸井 |
じゃあ、いつごろまで出てたんですか。
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みうら |
高校ぐらいまで。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
ずいぶん前でしょ、それは(笑)。
いや、つまり、フケというもの、
あれは時代が出してたんでしょう?
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都築 |
ええ?!
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糸井 |
みんなが出してましたから。
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みうら |
たしかに、出してましたね。
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糸井 |
大気汚染が原因かな?
それとも、シャンプーのある成分が
ぜんぶを止めたんじゃないでしょうか。
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都築 |
ほんとですか。
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糸井 |
中学とかで、
フケの飛ばしっことか
してましたでしょう?
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みうら |
してました。
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糸井 |
でも、そんなやつはいま、
ひとりもいませんよ。
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田島 |
いや、いるんじゃないですかね。
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糸井 |
そうですかね!
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都築 |
そうなんですか?
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田島 |
いると思います。
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みうら |
けど、学生服はあれは、
フケが目立つように
着てるんでしょ?
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都築 |
何ですか、それ。
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一同 |
(笑)
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田島 |
そうかもしれない(真顔)。
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都築 |
はじめて知った。
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糸井 |
ぼくもはじめて知りました。
いやぁ、ためになりますよね。
みうらさんとお話してると、
ためになる。
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みうら |
その「みうらさん」っていうの、
やめてくださいよ。
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一同 |
(笑)
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みうら |
糸井さん、前に
「ほかは全員“さん”をつけるけど、
みうらだけは、“みうら”だ」
と書いてくれたじゃないですか。
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糸井 |
そうだっけ。
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みうら |
そうですよ。
かんべんしてくださいよ。 |
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(この調子で、つづきます。
この4人、なかなか歌に行きませんね) |