主婦と科学。
家庭科学総合研究所(カソウケン)ほぼ日出張所

研究レポート16
ドライアイス「もくもく」の科学。


ほぼにちわ、カソウケンの研究員Aです。
少し前になりますが、「ガキの頃はバカだったなあ」
で盛り上がっていた「ドライアイス友の会」。
皆さんのドライアイスネタを読んで
同志よ〜と心で喝采を上げていた研究員Aです。

我が家は生協の宅配を利用しています。
研究員Aが家にいるときは
生協のお兄さんがその場で手渡ししてくれます。
でも、その場で保冷剤としての
ドライアイスを持ち帰ってしまうのです。

あんな恍惚の品を取り上げられてしまうのは勿体ない!
ある時、勇気を出して
「あのー、ドライアイス遊びたいので
 頂けないでしょうか?」
お願いしてみました。

そしたら、そのお兄さん、びっくりした顔で
「えっ! で、でも気をつけてくださいよ」
と。しかも何度も念押ししてくれます。

なんでそんなに心配するかなー、
へんなのーと思ったのですが、
あとになって気がつきました。
生協のお兄さん、きっと隣にいた研究員Bが
「遊ぶ」と思ったんですよね。
だから、あんなに慌てていたと。

いやいや、違うんですってば。
遊ぶのは研究員B(2歳男児)ではなく、
この研究員A(もうすぐ29歳・2児の母)なんですー。

そんなお兄さんの勘違いに
ちょっと恥ずかしくなった研究員Aでした。
でも、ドライアイス友の会の存在を知り
「ガキ」に限らず「オトナ」でも夢中になっている方が
多いことを知って勇気をもらった次第です。

というわけで、ようやく夏らしくなってきた今日この頃
ドライアイスの科学で涼んでみましょう〜。

■ドライアイスおさらい■
ドライアイスの不思議さ、それは
「固体が直接気体になること」ですよね。
普段、身近な氷などで
「固体が溶けると液体になる」
ことが常識思っている私たち。
だからこそドライアイスの
「消えてなくなってしまう」ように見える
現象が楽しく思えるのでしょう。

ちなみに、二酸化炭素も圧力が高いところでは
液体の状態にもなります。

■煙の正体■
そして、ドライアイスの魅力はなんと言っても
あの「もくもくの白い煙」。
あの白い煙の正体はいったいなんでしょう?
「え〜、だから二酸化炭素じゃないの?」
と思われるアナタ、実はそれは違うんですよー。

気体の状態の二酸化炭素は無色なので目に見えません。
それでは、あの白いもやもやの正体はと言いますと。。。

ドライアイスはご存じの通り低温です。
−70℃以下ですから、
溶けて気体になったばかりのものも低温。
だから、空気中にある水蒸気を
一気に凍らせてしまうのです。

この氷の粒が白く見えるので
ドライアイスの周りは白く見えるのです。

ですから、もう少し正確には
「二酸化炭素の気体の中に
氷の粒が散らばったコロイド」
(コロイドについては
前々回のレポート「マヨネーズはコロイドだった!」参照)
と言うことができます。

さてさて、この「気体の中に氷の粒が散らばったもの」として
身近なものといえば「雲」!
あれは空気中に氷の粒が散らばったコロイドです。
ドライアイスを水の中に入れたときにできる白いもくもくは
空に浮かぶ雲と同じつくりをしているんですねー。

■二酸化炭素は重い■
そして、その白いもくもくが下は流れていきます。
それは二酸化炭素が空気に比べて重い気体だからです。
氷の粒のおかげで目に見えるから、
普通見ることができない「気体の重さ」を実感できて
面白いですよね。

というわけで、ドライアイスで遊んだときは床の方に
二酸化炭素が充満していることになります。
「白いもくもくがないから二酸化炭素はない」
というわけではありません。
カソウケンでは、ハイハイしている赤ちゃん研究員Cが
息苦しくなるかもしれないので要注意なんです。

■お湯の中に入れると■
「ドライアイス友の会」の投稿で意外と多かったのが
お湯の中にドライアイスを入れること。

水の中に入れるときに比べて
勢いよく「もくもく」が発生するから
「わあ〜」な実験になるんですよね。

これは簡単な理屈です。
水よりも温度の高いお湯に入れたので
ドライアイスが気体になる
スピードを速くさせたからです。

ただスピードを上げただけなのに
「ちょっとコワイ」って感じに
様変わりするのまた面白いところ。

■動くドライアイス■
あと、「友の会」で紹介されていた面白い実験が
「ドライアイスをスプーンで押しつけるとカタカタ鳴る」
というものです。

これは、常温のスプーンを押しつけたときに
スプーンと接触した部分のドライアイスが気化します。
その気体が発生したことでカタカタ動くのかな?
というのが研究員Aの予想なんですが、どうなんでしょ?

なかなか可愛らしい音と動きの面白い実験です。
ぜひぜひお試しあれ〜。

■洗剤を入れると■
そして、「友の会」で何人もの方がやっていたのですが
研究員Aにとって未知の実験だったのがこれ。
「ドライアイスを水の中に入れるとき
一緒に台所用洗剤を入れる」
というものです。

研究員Aも試してみました。
そりゃーもう「お見事」な実験で!!
洗面器に水と洗剤を入れたのですが
みるみるうちに洗面器中があわあわに。

あわあわがいっぱいになると、
その泡が重みに耐えかねて
洗面器の外へと流れ出します。

そもそも「泡立てる」という作業は
液体の中に空気をいっぱい送り込んで
エマルジョンを作る作業です。
カソウケン本部「生クリームの科学」参照)

二酸化炭素の気体が大量に発生するので
効率よく泡を作ることができるんでしょうね。

予想していたよりもはるかに「あわあわ」になります。
研究員Aの場合は洗剤入れすぎたようで
流しの中が収集つかなくなってしまいました。

■ドライアイスを食す■
嬉しかったのが
「ドライアイスを溶かした水を飲んだことがある」
という方が多いこと。
ご多分に漏れず、研究員Aも経験済み。

1歳年下の妹の前で
「ドライアイスは二酸化炭素で
 炭酸水は二酸化炭素を溶かした水なんだよ。
 だからドライアイスを溶かした水は炭酸水になるのよー」
と偉そうに講釈して「ふふふん」と実験してみせた
研究員A(当時小学生だったはず)。

できあがったものを飲んでみたら、
拍子抜けの気の抜けた味。しかも美味しくない!
妹の「期待はずれ感」いっぱいの視線が痛かったです。

「ドライアイスを溶かした水の味」
を未経験の方にご説明しますと、
基本的にはただの炭酸水(酒屋さんに売っているような)
と同じ味です。

二酸化炭素は水に溶けると弱い酸性を示します。
あのぴりぴりする味は
「二酸化炭素特有の酸味」なのです〜。

酸の味、とひとくち言っても
酢酸の味、クエン酸の味、と個性がありますね〜。
サイダーなどが美味しいのは、砂糖などを入れて
味を調えているからなんですね。

「気の抜けた味」だったのは仕方ないです。
気体は圧力をかけるほど
液体の中に多く溶けます(ヘンリーの法則)。

というわけで、密閉した容器の中で
ドライアイスを水に溶かせば
イイ感じの炭酸水ができるはずなのですが。。。

二酸化炭素は気化する際に容積が
700倍から1000倍になると言われています。
ですから! ガラス瓶の中でそれをやると
爆発して大変なことになります。
(実際「友の会」会員にもいらっしゃいました!)

死亡事故もあるというコワイ実験ですから(参照
どうか、お気をつけてください。

余談になりますが、
炭酸水は他の方法でも作ることができます。
「重曹」と「クエン酸」を反応させると
しゅわーっと二酸化炭素が発生します。
水の中にそれらを溶かすと炭酸水のできあがり!
重曹が多すぎると苦い味になっちゃいます。

「ガキの頃はバカだったなあ」に
ドライアイス話が登場したのは
なかなか意味深いなあと思います。
ドライアイスって、オトナになっても
「ガキ心」をくすぐるんですよね。

スゴい科学者の方ほどガキっぽい、いや失礼!
「童心を忘れない」「少年の心を持った」人が多いです。

ガキ心って、科学心ととっても相性が良いわけで。。。
科学って結局のところ
子供のように「わあ」「へえ」と驚くことに
醍醐味があるのかなあと思ったりした研究員Aでした。




参考サイト
昭和炭酸株式会社
財団法人日本炭酸飲料検査協会


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2003-08-29-FRI


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