第5回 乱闘。
糸井 いやあ、順番に聞いてるだけで
おもしろくてしょうがないんですけど。
中日で、選手に復帰して、
翌年から、ずいぶん出ましたよね。
川相 そうですね。
50~60試合、出たんじゃないですか。
赤坂 中日1年目で80試合。
糸井 ああ、80試合ですか。
覚えてますもんね、やっぱり。
「あ、川相出た。うー、やりづれえ!」
っていう気持ちとして。
いまはもう、看板選手の移籍が
わりとふつうになっちゃった時代だから
よくわかんなくなってると思うんですけど、
あのころは、やっぱり違和感があったなぁ。
赤坂 時間がかかりましたよね、見慣れるのに。
糸井 選手としては、そのあたりはどうなんですか。
ユニフォームが変わると、
こう、スッと、こころっていうのは
変わるものなんですか。
川相 うーん、ま、
変わるようにするということですね。
比較的早く気持ちは切り替わりましたけど。
ゲームになったら、
もう、振り返ってられないんで。
糸井 そうですよね、
じゃなきゃ試合になんないですもんね。
川相 そうですね。
とくに移籍してすぐの年は、
絶対、ドラゴンズを優勝させてやるって
ぼくは思ってましたんで。
赤坂 事実、優勝しました。
川相 いや、べつにぼくが
優勝させたわけじゃないですけど(笑)。
糸井 そういう意志は強く持ってたんですね。
川相 持ってました。
負けてたまるもんか、って、
ずっと思ってたんで。
糸井 ジャイアンツ戦は、とくに意識しましたか。
川相 試合になればどのチームも同じですけど、
それ以外のところでは、意識しましたね。
たとえば、巨人とやるときは、
もちろん最低限のあいさつはしますけど、
それ以外は、極力自分からは
歩み寄って行かないように心がけてました。
糸井 ああー、そうなんですね。
そのあたりは、ファンからすると
ちょっと不思議なんですよ。
どういう気持ちなんだろうな、って。
なんだか、お互いが、過剰に意識して
厳しくしているようにも見えるし。
川相 まぁ、そうですね。
ただ、最近は、すごくチームを超えて
選手どうしの交流がはげしいっていうか、
いま、みんなけっこう仲いいんですよ、正直。
糸井 なるほど、なるほど。
川相 古いタイプの自分からすると、
そこまでしなくても、
っていうくらい仲がいいんで。
糸井 ひとつ大きいのは、
WBCの存在でしょうね。
あれで、チームジャパンとして、
1チームになっちゃったじゃないですか。
川相 そうですね、それもあります。
糸井 川崎とダルビッシュなんて、
完全に友だちですからね。
そんなふたりが、試合になると
抑えたり、打たれたりしてる。
川相さんの時代は
ああいうのはなかったですよね。
川相 ほとんどなかったですね。
とくにドラゴンズは
星野さんの時代なんかだと、
巨人の選手と口きくな、って
言われてたくらいですから。
糸井 あー、わかる、その感じ。
中日戦は雰囲気違うなぁっていうのは
ファンにも伝わるんですよね。
川相 それはもう、チームの方針ですけどね。
糸井 つまり、ケンカだぞっていうことですよね。
ケンカする相手としゃべると
やりにくくなるぞっていう。
川相 そうです、そうです。
ピッチャーと野手が
日頃から仲よくしゃべってて、
実際に対戦するときに、
「おまえ、インコースの
 きびしいボール投げられるか?」っていう、
そういうことだと思います。
糸井 それはそれで、わかりますよね。
川相 ええ、わかります。
糸井 というか、むしろ、
川相さんのなかにその成分は
かなりありますよね。
川相 あります、あります(笑)。
ぼくはどっちかというとそっちなんです。
糸井 そうですよね。
そういう意味ではジャイアンツには
めずらしいタイプの人だったから。
こう、選手がもみ合うシーンなんかで、
「また川相が飛び出してったぞ」みたいなのは
ファンからすると、ちょっとした名物だったり。
赤坂 じゃ、こちらの一面を出しましょう。
川相 また(笑)。
糸井 あなた、しゃべりの内容を
だいたい想像しながらきたね(笑)。
赤坂 こっちから乗っかってるのが川相さんで、
ジャンピングニーしてるのが仁志です。
糸井 真ん中でひどい目に遭ってるのは?
川相 これ、阪神の大熊さんでしょ。
赤坂 そうそう。
川相 この写真だと、仁志のほうがひどいでしょ。
ところが、当時掲載された写真のなかに、
ぼくの後ろから撮ってる写真があって、
それだと、仁志が写ってないんですよ。
ぼくだけが大熊さんに
乗っかってるように見えちゃう。
一同 (笑)
川相 仁志の、横から来た
見事なキックが写ってないんですよ。
で、当時、ぼくだけ非難されたりした。
糸井 でも、ま、川相って、
そういう人でしたよ(笑)。
赤坂 実際、川相選手単独の
見事なヒップアタックがあったでしょう。
ヤクルト戦かなんかで(笑)。
川相 はいはいはい、そうですね(笑)。
糸井 そういえば、最近は乱闘がないですね。
赤坂 そうなんですよ。
川相 少ないですね、いま。
赤坂 それはやっぱり、
選手どうしが仲よくなったことと
無縁ではないと思いますよ。
やっぱり、ふだん飲みに行ったりしてる相手に
「このやろう!」とはならないですよね。
だからって仲よくすることが
一概に悪いっていうわけじゃないですけど、
仲のいい選手の胸元にびゅっと放って
のけぞったほうが「この!」って
にらみつけるようなことは、
あんまりないんじゃないかな。
糸井 ああ、なるほどね。
赤坂 個人的には、そういう厳しいやり取りも、
あってしかるべきだと思うんですが。
糸井 だから、WBC以降は、
もっと本気でケンカごしになれるのが
国際試合になったんですよ。
みんながそっちのほうに
リアリティーを持ったということでしょう。
赤坂 そうですね。


(続きます)
2010-12-07-TUE
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