山下 |
‥‥‥すごい。
これ、ひょうたんでできてるんですよね。 |
奥田 |
はい。
カオレレと呼んでいます。 |
山下 |
カオレレ。 |
奥田 |
顔があるウクレレなので、カオレレ。 |
山下 |
ご自分が栽培したひょうたんを使って
作られたんですよね。 |
奥田 |
ええ。 |
山下 |
‥‥確信が深まりました。
やっぱりひょうたんは、かわいいです。
|
印刷会社にお勤めの奥田さんと知りあったのは、
2年前の初夏のころでした。
そのちょっと前のことです。
僕のなかで、ひとつの目覚めがありました。
「ひょうたんを育ててみたい」
唐突に、そんなことを思いついたのです。
「もしかしたらすごくかわいいかも」
衝動的に思い込んだ僕は、
気がつけば、苗を購入していました‥‥。
しかし、勢いで買ったはいいものの、
どうやって育てたらいいのか
まったくわかりません。
園芸経験ゼロの僕は、途方に暮れておりました。
そんなとき、折よく知人に紹介されたのが
大阪のひょうたんマスター
・奥田亮さんだったのです。
メールなどのやりとりで奥田さんは、
ひょうたん栽培の基礎を教えてくださいました。
そしてその年の秋、
奥田さんの的確なアドバイスのおかげで、
僕は自分のひょうたんを
収穫することができました。
これです。
手塩にかけたひょうたんの、愛らしさよ!
おじさんくさい趣味かもしれないけれど‥‥
もうそんなことは気にしません!
理解してくれる人は周囲に少ないけれど‥‥
孤独だってかまいはしません!
とにかく、ひょうたんはカワイイ!!
僕は強く、確信いたしました。
そんな強い確信を胸に、
奥田さんへお礼を告げるべく
僕はこうして大阪を訪れております次第。
しかも、
奥田さんは栽培するだけにとどまらず、
なんですか、ひょうたんでカワイイ楽器を
つくっているというではありませんか。
お話、うかがってまいりましょう。 |
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山下 |
こちらのお店、
あちこちにひょうたんがありますね。
そこの大きなのとか、すごく立派です。 |
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奥田 |
それは僕が育てたやつです。 |
山下 |
あ、そうなんですか。
お店のかたも、ひょうたんがお好きで? |
奥田 |
そうですね。
ひょうたん仲間も集まる場所ですし。 |
山下 |
お仲間がいるんですね。 |
奥田 |
ええ、僕が流行らせました(笑)。
30〜40代の男性8人で、
「ひょうたんクラブ」みたいなことを
やってまして。 |
山下 |
いいですねえ‥‥。 |
奥田 |
メンバーが8人なのは、
8の数字がひょうたんの形だからです。 |
山下 |
あ、そうか! ははは、なるほどー。 |
奥田 |
ここで品評会をやったんですよ。
まあ、見せびらかしの会なんですけど、
なかなか盛り上がりました。
‥‥そうだ、品評会の画像があります。
ちいさいんですけどね、こんな‥‥。 |
|
山下 |
あ〜、携帯の待ち受けに。 |
奥田 |
メーリングリストをつかって、
ひょうたんの悩みを
みんなで相談したりもしています。 |
山下 |
うらやましいなあ‥‥そんな仲間がいて。 |
奥田 |
みんなハマってます(笑)。 |
山下 |
‥‥しかしそれにしても、
ひょうたんの魅力っていうのは、
これ、いったいなんなのでしょうね? |
奥田 |
ねえ、なんなんでしょう。 |
山下 |
奥田さんは、いつごろから
ひょうたんをはじめたんですか? |
奥田 |
ええと、あれはいつごろやろ‥‥?
たしか、1992年くらいですかね。 |
山下 |
ということは、15年のベテランですか。 |
奥田 |
そんなんなりますね。
‥‥最初はなんかこう、
食べもんじゃないもんを育てるのが
すごい不思議な気がしましたねえ。
「道具を栽培する」っていうのが面白くて。 |
山下 |
なるほど、
大昔はうつわに使われてましたからね。
道具をつくるという感覚で、
奥田さんはこれを楽器にしたわけですね。 |
奥田 |
まあ、ひょうたんで楽器をつくることは
昔からされてることですし、
自分にもできるかなあ、と。 |
山下 |
‥‥ちょっと、
カオレレの音色を聞かせてもらえますか。 |
奥田 |
あ、はい。
♪ポロロローン |
|
山下 |
‥‥ほお。
これはまた、予想以上にいい音です。 |
奥田 |
そうですか。 |
山下 |
考えてみたら、ひょうたんって
スピーカーになってるくらいですから
よく響く材質なんでしょうね。 |
奥田 |
ええ、つくってみたら
なかなか深みのある音になりました。 |
山下 |
‥‥これ、ぜんぶの部品がひょうたんで
できてるわけじゃないみたいですね。 |
奥田 |
ひょうたんをつかってるのは(裏返す)、
この胴の部分です。 |
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山下 |
はいはい、
大きなひょうたんをふたつに割って。 |
奥田 |
こっちの糸巻きのところとか、 |
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奥田 |
ネックの部分はふつうの木材です。 |
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山下 |
フレットには
テグスが巻いてあるだけなんですね。 |
奥田 |
はい、だからよく音がズレます(笑)。
で、
この天板はバルサ材でつくりました。 |
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山下 |
この顔(笑)、かわいいなあ。 |
奥田 |
ブリッジの位置が大切なんですよ。 |
山下 |
ブリッジというと、口の部分ですか? |
奥田 |
ええ。
あ、そうだ、これもちいさいですが
画像があります。
‥‥これだと、トボケすぎでしょ? |
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山下 |
ははははは。 |
奥田 |
これも、なんかちがう。 |
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山下 |
はい、ちがいますね(笑)。
で、結局口の位置はこうなったと。 |
|
奥田 |
音質よりもかわいさを重視して
この位置に決めました。 |
山下 |
すばらしいと思います。
‥‥これでコンサートなんかは
やらないんですか? |
奥田 |
やりますよ。
ひょうたんバンドとか、
ひょうたんオーケストラをつくったりして。 |
山下 |
オーケストラ! |
奥田 |
30人くらいいましたかね、
昔ですけど2、3回コンサートやりました。
オーケストラの練習は、
まずひょうたんの栽培からはじまるんです。 |
山下 |
栽培から(笑)。
気の長い練習ですね。 |
奥田 |
最初は栽培の指導からはじまって、
ひょうたんを収穫できたら
今度はみんなで楽器に加工して、
それからやっと演奏の練習です。 |
山下 |
栽培からはじまるオーケストラ‥‥
そっれはたのしいでしょうねー。 |
奥田 |
盛り上がります。 |
山下 |
オーケストラということは、
ほかにも楽器の種類が? |
奥田 |
ええ。もちろんウクレレだけじゃなくて
いろんな楽器をつくります。
簡単な楽器をつくるワークショップは
今もちょくちょく開いてるんですよ。 |
山下 |
簡単な楽器といいますと? |
奥田 |
ひょうたん笛ですね。
ここにありますよ、ほら。 |
|
山下 |
わ、かわいい‥‥。
これ、笛なんですか。 |
奥田 |
ええ、
このお店のひとがつくった笛です。
これも。 |
|
山下 |
へえええええ。 |
奥田 |
この大きな穴に息をふきこんで、
オカリナみたいに、こう‥‥。
ポーポー♪ |
山下 |
ほんとだあ。 |
奥田 |
ポポポ〜ポポ ポポポポポポ〜♪ |
山下 |
あ、チャルメラの音階。 |
奥田 |
‥‥ま、こんな具合です。 |
山下 |
これ‥‥簡単にできるんですか。 |
奥田 |
できますよ、
穴をあけるだけですから。 |
山下 |
‥‥じつは奥田さん、
僕、自分のひょうたんを持ってきたんです。 |
奥田 |
あ、僕も持ってきました。 |
山下 |
じゃ、じゃあ、もしかして、
いまここで一緒に笛をつくることが‥‥。 |
奥田 |
できますね。
やりましょう、ぜひやりましょう!
|
|
山下 |
ふおー! ふおー! |
奥田 |
‥‥‥‥‥がんばって。 |
山下 |
ふおー! ふおー! |
奥田 |
‥‥‥‥‥‥‥。 |
山下 |
ふおー! ふおー! ふおおおー!
ポー♪
‥‥な、鳴った!!
いま、ね!? |
奥田 |
はい、鳴りました。 |
山下 |
やあ、ははは、
うれしいものですねえ‥‥。 |
奥田 |
よかったです(笑)。 |
山下 |
‥‥奥田さん、
お時間は大丈夫ですか?
これからお仕事に戻られるんですよね。 |
奥田 |
はい、ぼちぼち。
でも、まだちょっと平気ですよ。 |
山下 |
そうですか‥‥
じゃあ、どうでしょう、最後に一曲、
カオレレで何かお願いできませんか? |
奥田 |
一曲ですか‥‥わかりました。
ポロロン ポロロン ポローン‥‥ |
|
奥田 |
ポロンポポポポンポ ポンポポポポン
ポポンポポポポポ ポロロンポ〜ン♪ |
山下 |
ん? これは聞いたことある曲ですね。 |
奥田 |
ポ〜ンポポポポ〜ン
ポロポポポ〜ン ポポポポポンポンポ〜ン♪ |
山下 |
ああ、わかった!
「僕らはみんな生きている」ですね。 |
奥田 |
ポロ〜ンポンポン ポポ〜ポポ〜
ポポポポロンポロンポロ〜ン♪ |
山下 |
ふおー! ‥‥あれ? |
奥田 |
ポロロポ〜ンポ ポロロポ〜ンポ
ポポポポポロ〜ンポロ〜ン♪ |
山下 |
ふおー! ‥‥鳴らない。 |
奥田 |
ポロロポンポ ポロロポポンポ♪ |
山下 |
ふおおおー! |
奥田 |
ポポポポポロ〜ンポロ〜ンポロ〜ン
ジャガジャガジャ〜ン!(演奏終了) |
山下 |
ポー♪
‥‥‥‥な、鳴った。 |
奥田 |
はい、鳴りました。 |
山下 |
奥田さん、
きょうはいろいろとほんとうに、
ありがとうございました。 |
奥田 |
いえいえこちらこそ、たのしかったです。 |
山下 |
カオレレくんも、ありがとうね! |
「あんた、もっと笛を練習せなあかんよ」
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